大洋・高木嘉の腰痛や西武・石毛の人生初の肉離れ、巨人に至っては定岡・中畑・角・篠塚、そして遂に原までもが腰痛に襲われた。これら選手に共通しているのは人工芝球場を本拠地にしている事。来季は神宮球場も人工芝を採用する事が決まっているが、本当に人工芝は選手をダメにする元凶なのだろうか?目下のところ腰痛患者がいないのは中日・近鉄・南海と天然芝の球場を使っている球団だが、逆に言えば甲子園や広島市民球場など天然芝を採用していても腰痛を持つ選手がいる球団もあると言う事だ。
後楽園球場が人工芝を採用したのは昭和50年のオフ。天然芝は維持・管理の負担が大きいと言うのが第一の理由だった。人工芝は塩化ビニリデンという化学繊維で、芝の長さが12㍉のものを1万㎡に渡って敷き詰めた総工費3億円の一大工事だった。問題は人工芝よりも、その下の構造にある。人工芝のすぐ下には1㌢のスポンジパッドがあるだけで、スポンジの下はコンクリートの床だ。このコンクリートが選手の足腰に不快感を与えている原因だと言われている。人工芝を平らに敷く為にはコンクリートが必要であり土の上に直に人工芝を乗せる訳にはいかない。人工芝上で底が平らな靴で足踏みすると不快な反発が跳ね返って来る。人工芝は土と違って衝撃を吸収しないと言われている事を実感できる。しかし体育館のフロアやアスファルトの道で同じ事をすれば逆に人工芝の方が反発が少ない事が分かる。つまり我々は日常的に人工芝より硬いモノの上で生活をしているのだ。
本誌でお馴染みの樺島病院整形外科医・詫摩博信医師によれば 「そりゃあ土に比べたら人工芝の方が反発は大きい。でも人間が二本足で歩く以上、腰痛は宿命的なもの。その上、野球選手は一般人よりも体重があり足腰への負担は大きくなる」「また野球選手のトレーニングは野球の技術ばかりに偏っていて体幹、特に腰を強化する運動はやっていない。手に持つモノといったらバットとグローブくらいだけだから腰を鍛えるという発想が無いのでしょう」柔らかいベッド、カーライフ、椅子に座ったきりで一日中過ごして運動不足になる現代生活スタイルが腰痛の原因で人工芝は枝葉の要因のひとつに過ぎないというのが詫摩医師の見解だ。麻雀好きが多い野球選手には耳の痛い話である。
とは言うものの、今年はじめて人工芝を体験する新人の石毛や原が天然芝との明らかな違いを感じている「とにかく太モモに堪える。試合後も疲労感が抜けずイヤな感触ですよ(原)」「これまで足の怪我とは縁は無く、アマチュア時代の猛練習をした後でも疲れを感じることすらなかったのに、今年は3ヶ月足らずで足はパンパン。練習の量や質の違いだけでは片付けられないですよ(石毛)」と口にしている。2人だけに限らず多くの現役選手が人工芝の違和感を指摘しているが「今のところ天然芝に戻す考えはありません。腰痛も人工芝だけが原因とも思えませんし(後楽園球場副支配人)」 と同様に横浜・西宮・西武・平和台球場も現状を変える意志は無いようだ。見た目の美しさとホコリが立たない球場はファンの為にとっても魅力的でこれからも増える傾向にある。となると選手側が人工芝に対応せざるを得ない時代になった。ともすれば野球選手に限らず腰痛は一般人も関心を抱く病。現代生活の中に様々な要因が潜んでいるだけに単純に人工芝=腰痛と結びつけるのは無理がある。
当時は現在みたいに人工芝をメンテナンスするという概念は無く数年間も放置していました。人工芝は手入れする必要が無いのが利点と考えられていた為に、最初の人工芝は数年で選手のスパイクの歯が見えるほど磨耗するまで酷使された後にようやく交換されました。当時の人工芝が御土産として販売されていましたが芝自体の長さや下にあるスポンジも1㌢程しかなく足腰への負担は今以上だったでしょうね。現在では火傷防止にゴムチップを散りばめたり芝の下のスポンジを厚くしたりと改良していますが所詮は付け焼刃です。