この本は本当に素晴らしい。
いくつか書評でも絶賛されてましたが,救急の広範な分野について珠玉のパールが数多く散りばめられています。でも私がとくに感銘をうけたのはちょっと違うポイントです。
パール#1 ERで笑うな。
適切なタイミングでの笑顔は癒しになるが,時機を誤るとトラブルの原因となる。
笑い声は,どんな場合でも患者を不快にさせる。絶対に笑い声を立てないこと。
これを最初に挙げてあることが本当に素晴らしいと思います。
救急外来でのあるあるだと思いますが,患者さんとは無関係のことであっても,救急外来でスタッフ同士の会話で何かのきっかけで笑いが起こることがあります。それが壁の向こう側にいる家族の耳に入ったら・・・どんな風に受け止められるか。患者さんを心配してじっと待たされている時に,何やら笑い声が聞こえてくる。良い感情を持つわけがない。ちょっと考えればわかることです。現場に少し慣れてきた若手ほど不用意にそんなふるまいをすることがあります。その都度,私もヒヤヒヤして注意していました。
患者さんや家族に無用の誤解や不愉快な思いを与えないこと,医療従事者として最低限肝に命じておくべきことを,他のどんなパールに優先させて#1にもってきた岩田先生の慧眼に敬服します。
パール#4 日々の言動を意識せよ!
リーダーがどんなに賢明な助言をしても,人として受容されていなければ誰も従わないであろう。
これも,いつも私が自分への戒めとして痛感していることです。いくら知識や経験が豊富でも,それだけでは研修医は指導医として認めてくれません。実際のところ,なかなか難しいんですけどね,これが。
そしてこれもあらためて反省させられた一言。
パール#5 すべての患者に治癒をもたらすことはできないが,すべての患者に親切にすることは可能である!
そのあとにこう続きます。疲弊している時に接遇を考えるのは難しいが「演技力を磨く」と考えればよい。私も30年以上前に,最初の指導医の一人に教わったことは「医師のように振る舞え」でした。
この小冊子には,岩田先生のこれまでの長い救急医療の経験がぎゅっと詰まった素晴らしい本です。どの章を見ても,本当に臨床をやってきた先生でなければ気づけない,すぐに現場で役に立つパールばかりです。それは間違いがありません。
それを踏まえても「白眉は第1章」ではないかと私は思います。
追記)忘備録として 『Be there.』