H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

奈良信貴山 宿坊合宿

2012-10-28 | 臨床研修

奈良・信貴山千手院での宿坊合宿が終了。

関西の学生さん達(TEAM関西)が中心に計画を立てて,忽那先生が仕掛け人で「お寺で勉強会」という何とも面白い企画。

80畳の大広間に100人もの参加者みんなが座布団にすわってレクチャーを聴く,グループディスカッションをするというのは壮観であった。

深夜にわたるちょっと尋常じゃないカンファレンスは「やっぱり関西のノリはおもろい!」という感じ。プレゼンのちょっとしたネタにもすかさずツッコミが入り,それを切り返して・・というinteractiveな雰囲気が楽しかった。あらためて自分のルーツを思い出した(って大げさか)。残念ながらこのところの睡眠不足のため午前3時半に撃沈。出てくる関西の中堅若手の先生達が繰り出す症例はみんな手ごわい。このようなカンファレンスをかなり以前から定期的にやっていたという彼らの実力恐るべしである。

自分は2日目の最後のセッション。総合診療を「外来診療の面からお話を」というリクエストで実は内容を決めるのには相当悩んだ。聴衆が学生さん主体をいうことを聞いていたのだが,それでもどのように話をすればよいのか直前までイメージできず。とにかくマテリアルは用意しておいて,行く途中の新幹線,現地で(直前の山中克郎先生のプレゼンの途中までかかって!)完成。皆さんのニーズは何だろうと悩んだが,最後は「そうか!皆さんに聞けばいいんだ」ということで,メモに疑問点を書いて貰ってそれを見ながら,お話するということになった。ご期待に添えたかどうか・・・

今回の合宿で,もう一つ嬉しかったこと。大学を卒業してからずっと関東にいるせいか中身はコテコテの大阪人であっても,関西の総合診療系の先生達とあまり接する機会がなかった。第1回JNCでご挨拶程度はした,今回あらためて,個性的で実力のある先生方と話をする機会がもてたのは本当によかった。素晴らしいプレゼンの数々に良い刺激を沢山受けた。まだまだ自分も頑張らんといかんいかん,
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若手医師セミナー1回目 Q&A

2012-10-26 | 臨床研修

先日の若手医師セミナー1回目でのフロアからの質問に対する回答。青木眞先生のブログにも載せていただきましたが,こちらにも掲載。あくまでも講義の内容に関してのお答えなので,個別の症例に関するコメントではありません。実際の症例については,それぞれ指導医の先生にも質問して下さい。


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●輸液速度の決定の際,経験が浅い私達は定期的な評価を行う必要があることは分かったのですが,例えば当直で9時から補液をしたとして4時間毎に採血してNa量などをみることは現実的ではないと思うのですが,どうすれば良いのでしょうか。(1年目研修医)

輸液を行っている時のモニターに,血液検査が数時間毎に必ず必要なわけではありません。例にあげた輸液は欠乏量が非常に大きな場合に,最初は多めに入れて徐々に(維持量程度まで)減らしてゆくことを例として説明したつもりです。この場合の定期的な評価は,たとえば血圧(低血圧が回復してくる),脈拍(頻脈→安定してくる),尿量が回復してくる・・といったベッドサイドでの患者さんの臨床的なパラメータが大切です。もちろん血液・尿検査も参考にすることにはなりますが,どれくらいの頻度で検査をするかは,患者さんの重症度によります。高度な慢性低Na血症の補正やDKAなど以外で,4時間毎の採血が必要なことは少ないと思います。


●血清Na濃度はICFとECFのどちらをより反映していると考えれば良いでしょうか

「反映している」の意味が何を意図されているのか,分かりかねますが
血清Na濃度=総溶質/総体液量(TBW)=(細胞内液の溶質総量+細胞外液の溶質総量)/TBW となるので,ICFとECFの両方に関係していることになります。


●浮腫に関してはNa過剰に加え重度の低Alb血症も原因になると思いますが。
「低アルブミン血症では浮腫があり,血管内は脱水のようなときは慎重にNa排泄を行うしかないのでしょうか?」 (研修医4年目)

おっしゃる通りです。とても治療しにくい状況です。血管内容量が低下した時に過度に利尿剤を使用するとご指摘のように腎前性腎不全を起こします。


●ブドウ糖液が,浸透圧は血清と同じなのに,free waterとなる理由を教えていただきたいです。(研修医1年目)

ブドウ糖のみでほぼ等張に作られたのが,5%ブドウ糖液ですが,体内に入ったときにはすみやかに代謝されて,血中ブドウ糖濃度は通常それほど変わらないはずです。血清浸透圧を求める式(2Na+Glu/18+BUN/2.8)の値に影響を与えないからfree waterを入れたのと同じことになります。


●細胞外液が不足しているときに,リンゲル液などが5%アルブミンの効果が同程度であるなら,5%アルブミンの使いどころはどういったときですか?また25%アルブミンというものがありますが,それはいつ使うのですか?(研修医1年目)

臨床の現場では,個別に考えざるを得ないですが,日赤などから使用指針が出ています。基本的には「膠質浸透圧の改善,循環血症量の是正」が主な目的です。前者に25%が使用されることが多く,後者には5%が使用されます。例えば,リンゲル液で血管内容量を増加させるためには,5%アルブミンのおよそ3-4倍程度の量を投与する必要があります。これは末梢の浮腫の原因になります。著明な低アルブミンがあり,これをできれば避けたい時などに限定的に使用します。(それが予後を改善するかどうかは別の話ですが)


●血管内脱水の治療 臨床上困ります。とくに腎不全と心不全を同時に合併していると悩みます。どのような治療戦略を用いればよいでしょうか。(研修医3年目)

私もとても悩みます。質問が広い意味を含むので一概には言えませんが,心不全の治療を優先せざるを得ないことも多いです。状況によっては何らかの透析や限外濾過を併用をして輸液を行うこともあり得ます。


●尿中Na,Kをすぐ測れないので困っています。血ガスの器械で測ってもよいのでしょうか?あるいは他にいい方法があったら教えて下さい。(勤務医10年目)

血液ガスの測定機器でも測れないことはないようですが,測定値の幅が違うため信頼性が少し落ちるようです。(あとは検査室の技師さんが許してくれるかどうか)
私の病院でも残念ながら至急で測定できません。1-2日遅れであっても,測定(提出)しておくことは意味があります。後から,その時点での病態を推定することが可能になるからです。


●初期輸液を選択する際に,高浸透圧+skin turgor低下+血管内容量低下があった場合は,生理食塩液のみで補正するよりも1号液の方が良いでしょうか?(緊急性にもよると思いますが) (研修医1年目)

おっしゃる通りで,循環動態を安定させることを優先すれば等張液から始めますが,そうでなければ1号液で開始することも可能だと思います。



●高浸透圧性非ケトン血症性昏睡で,よく高Na血症(高度の脱水)になりますが,これはご説明(高張性低Na血症)と矛盾しませんか。(勤務医30年目)

糖尿病性ケトアシドーシスでは,等張液喪失+細胞内から細胞外への水の移動で低Na血症になります。高浸透圧性非ケトン血症の場合には,等張液よりも水の方をはるかに多く喪失するため高Na血症になります。矛盾はないと思います。

実はDKAに伴う細胞内外での水の移動による高張性低Na血症は,あのマトリックスでは説明しにくい部分です。(このことは初学者にはあまり強調すると分かりにくいため,あえて詳しくは話していません)。あくまでも大枠を理解してもらうためにあの図を使うと理解して下さい。


●体液の分布について初めに間質:血管で11:3でしたが,あとは3:1(9:3)になっています。どちらが正しいですか。(勤務医30年目)

「およそ」ということで,その違いに深い意味はありません。


●低アルブミン血症のむくみとどういうメカニズムで起こっているのですか。同様でアルブミン補充により浮腫がとれるメカニズムは。(勤務医30年目)

膠質浸透圧の低下あるいは回復。アルブミンは分子量が大きいため,血管内に水を保持するという意味で,浸透圧活性を有しているといえます(これが膠質浸透圧の意味=例えれば血管内限定のtonicityといっても良いかもしれません)

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静岡赤十字病院

2012-10-24 | 臨床研修

今年2回目の静岡赤十字病院への訪問。前回は5月に伺って身体所見ネタをお話したが,今回は2回目。DVDともダブらないようになるべく新ネタでお話を,というこで内容の組立には若干悩みつつ,スライドセットができ上がったのは,新幹線で静岡駅に到着する直前だった。いつもながらの泥縄が情けない。

まあ何とか無事に終了。その後,総合内科部長の久保田英司先生と食事をご一緒させていただいたが,研修医教育に対する熱い気持ちにこちらも力づけられる思い。どこに伺っても必ずパッションにあふれた指導医がおられるのをみると,日本の未来は明るいぞ!と思うのであった。

久保田先生,お世話になりました!!

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若手医師セミナー1回目

2012-10-19 | 臨床研修

無事終了。今年は,後半の症例を1例増やして,最後の小ネタを省略。たぶんこのレクチャーは,今後これ以上大きく変えることはないだろうと思う。

何度も出しているが,一番のキモのスライドはこれ。水・Naバランスのほとんどはこの図で理解できるはず。


レクチャーの中で,腎臓における「水の出し入れ」と「Naの出し入れ」は「ほぼ」独立していると何度も強調しているが,実はこの「ほぼ」というところに大きな意味がある。完全に独立していると説明すると間違いになる。でも最初のうちは別々に動いていると理解した方がずっとわかりやすい。だから学生や研修医に説明するときには,細かいことをいわないであえて「別である」と説明することにしている。

少し理解が進むめば実は,水の出し入れ(Osmoreguraton)とNaの出し入れ(Volume regulation)の両方にADHが関連していることが分かるのだが,そこは最初あえて言わない。ここが大切。


さて2回目の酸塩基平衡の話も,あっという間にやってくるので準備しなければ。今年は,新しいスライドを入れる予定なので早めに準備しないと・・・
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若セミ第1回目・・前夜

2012-10-18 | 臨床研修


明日は恒例の若手医師セミナーの今年1回目・・・なんだけど,今日は朝からずっとひたすらSapiraの監訳仕事。予定外の追加仕事になったのだが,これが思ったより難しくて手こずっている。少しでも良いものに仕上げるために避けられない作業だがきついきつい。それでも協力して下さる方が何人もおられるので頑張らねば。
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