第14回大船GIMカンファレンスが無事終了。参加者はカンファレンスに68名,懇親会は23名。今回も沢山の参加をいただき感謝!!
今回の内容を簡単に紹介しておくと・・・
症例1)69歳 男性 発熱 ~握らずして,握りつぶされた~
自治医大総合診療部 武田孝一先生提示
約3週間前からの発熱,その後吃逆,全身浮腫,胸腹水貯留,その後筋肉痛のような腹痛が出現。前医までに抗菌薬が投与されているも効果なし。入院後,血液などの培養検査は陰性。入院後に行われた腹部造影CTでは異常なし。次の検査をどうしようか・・・としていた時に,入院10日目(だっけ?)に強い腹痛があり,主に血管病変を見ようと考えて武田先生が出したdynamic腹部造影CTで,腹部に多数のmicroaneurysmが認められ,結節性多発動脈炎(PN)と診断された。
診断が判明する前に,研修医の先生から「右の睾丸痛」があったことを聞かされていたが,当初武田先生はあまり気にしていなかったそう。萩野先生が「睾丸炎を症状とするPNがある」ということから診断の可能性が言及されて,一同お~っとなった。血管炎の症状に睾丸痛があるのは,自分は知らなかった。とっても勉強になった。
ちなみにサブタイトルは,武田先生が黒木教授に「睾丸を詳しく調べないで,その情報を握りつぶした訳だ・・」と言われたコメントから。上手い!(笑)
小ネタは,今回は眼に関する所見をいくつかあつめた。つい最近経験したMarcus Gunn pupil(求心性瞳孔欠損:Relative afferent pupullary decet)の動画をみてもらうのが主な目的で作ったネタであった。
症例2)72歳男性 発熱と腰痛 ~人生,山あり谷あり~
自分が提示すると,ちゃちゃ入れがしにくいので,あまりディスカッションになりにくかったのが反省。
72歳の男性が,発熱・腰痛で入院となり,両肘関節・左膝関節の化膿性関節炎を認めた。膿・血液培養で肺炎球菌が検出され,その後L3/4の化膿性脊椎炎,さらに両側腸腰筋膿瘍が判明。この症例は,診断までの過程よりもその後が問題。ABPCで12週間治療するも,血沈高値が持続し,発熱,皮疹出現,腎機能が悪化。結局,間質性腎炎と診断してPSLで治療。PSL減量中に,さらに再燃が2回位あり,その度に治療をどうしようか・・・と本当に経過中に何度も天を仰いだ症例だった。退院までに4ヶ月以上を要し,外来治療中も何度も迷って苦しんだ2年3ヶ月の経過を,皆さんに一緒に体験してもらおうと思って提示したのである。たぶん普通のカンファレンスでは,まず出さないような症例提示を試みた。
一番のメッセージは「実際の臨床では,”診断がつくこと”は終わりではなく,始まりである」ということである。大船GIMでも,最近ちょっとその傾向があるのだが,どうしても疾患の診断を当てることに熱中してしまいがちになる。思考過程を重視して・・というのが基本的な考え方だが,実際の臨床経過では「診断してから」が大事なのだという自戒をこめて提示した。
アイデアはずっと温めていたのだが,実際に仕上げたのは2日間の突貫工事だったので,完成度がイマイチだったかも。皆さんにディスカッションしてもらうポイントの出し方もさらに工夫が必要だったと反省。それでもKey messageを感じてもらえればと思う。
次回以降の予定は・・・・
第15回は,11月19日(土)
第16回は,おそらく来年2月25日(土)を予定している。
今回も懇親会に,WineNaviさんから入手した津波被災ワイン(左)を持ち込んだ。好評でした。右は山本祐先生との二次会で飲んだ自然派ワイン。山本先生が詳しいのにはホント脱帽です。