今年も,2年間の臨床研修を終了して4名の研修医達が巣立って行きます。研修修了式と祝賀会が職員食堂で行われました。研修修了証と恒例の記念品を一人ひとりに手渡しました。引き続きの祝賀会のときに,研修医達にお話した内容の覚書き。
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医師としての大切な最初の時期を,私達の病院を選んで無事2年間過ごしてくれたことにお疲れさま,そしてありがとうと言わせてもらいます。若い研修医の皆さんがいることで病院全体に活気が生まれます。そして我々も刺激を受けつつ学び続けることができます。教えることが同時に学び続ける原動力にもなっているのです。
Sir William Oslerがある講演の中で「40歳以上の医師は大学からいなくなるべきである。そうならないで済む唯一の方法は25歳以下の若者と常に交わり続けることである」というような主旨のこと(細かい表現は少し違いますが)をおっしゃっています(※)。100年前の言葉なので,現代に置き換えて40歳というのは言い過ぎかもしれませんが,それでも少し真実を言い当てていると思います。歳をとるにつれて,新鮮な気持ちは失われて新しいことを学ぼうという意欲はどうしても薄れてゆきます。オッサンである私達は,若者と過ごすことによって刺激をうけつつ新鮮な気持ちで,学び続けることができる。それは本当に実感として感じています。
巣立っていく君達に少しだけ伝えておきたいことが2,3あります。これまでは何かと,細かいことまで指導医から指摘を受けてきたと思います。ときにうるさく感じたかもしれません。しかし次第に他の人達から何かと言われることが少なくなります。そしてある時期からは,ほとんど言われなくなります。周囲が分かっていても言ってもらえなくなるということです。そうなったときに指摘されなくても自分で気づいて,自ら学び続ける姿勢が必要です。言われなくなったというのは,その実「見捨てられる」ことを意味することだってあります。そうなったらお終いです。そのことに自覚的でいて下さい。
今後,皆さんはそれぞれの専門分野に進みます。将来,迷うこともあるはずです。その時には好きなことをやること,やり続けることが大事だと思います。好きなことであれば続けられます。自分もなるべくそうやってきました。(もちろん,歳を重ねるごとにやりたくないもやらなければならなくなるのですが・・・)それでも,やはり好きなことをやり続けて下さい。そして,もう一つ逆説的ですが,自分が今やっていることを好きになることだと思います。
当院も,研修医の受け入れを始めてようやく10年ちょっとが過ぎました。卒業生の数も増えてきました。もしまた縁があれば,大きく育ってからまた戻ってきて欲しい。自分の教えた人たちとまた一緒に仕事ができること,そしてそれぞれの専門分野で手伝ってもらえること,それは指導医冥利につきるというものです。私自身も,研修医として最初に指導を受けた当時の恩師(指導医)と,20数年経ってから再び一緒に仕事をすることになった経緯があります。不思議なものですが,人の縁とはそういうものです。
これからの活躍に期待しています。2年間,お疲れさま,そしてありがとう。頑張って下さい。
※)定年の時期 四十歳以上の人間の評価,六十歳以上の人間の無用論 『平静の心』p.323-325