H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

第13回大船GIMから

2011-05-31 | 臨床研修

第13回大船GIMカンファレンスの内容の紹介

1例目は,当院の加藤幹朗先生が提示。

私が外来でfollow upしていた89歳の男性が,動けないという主訴で来院。
前日から急に起った左下肢の痛みであることが判明。
他動的に動かした時に,強い痛みがあり,単純X線写真では,頸部骨折は
はっきりしないが頚部骨折??が否定できないのでは・・・
さらに骨折を疑ってMRIを撮ると左股関節の周囲の軟部組織に炎症を疑う
high intensityがみられ,細菌感染?・・・・
最終的には,股関節の関節穿刺にて関節液を採取。鏡検にてCPPD結晶を
確認。培養陰性で,左股関節に起った偽痛風と確定診断。

ベテランの先生は,「急性単関節炎」の鑑別診断であると素早く認識されて
いましたが,股関節の偽痛風というのはかなり稀で,鑑別診断にはなかなか
出にくいという症例でした。


2例目は,千葉西総合病院の松本直久先生が提示。

これは本当に難しかったですね!!

肺癌で手術歴のあれう60代の男性が,意識障害とショック,左上下肢の麻痺で
来院。ショック+神経所見,意識障害の鑑別診断となりました。

フロアからの意見では,ショック+神経学的異常の組合せは大動脈解離の可能性
という意見がでました。それ以外には,敗血症性ショック,頚髄障害?などが
鑑別に上がりました。しかし,どうも臨床症状をうまく説明がつけられず一同
う~ん・・・・となりました。
一時的に症状の改善があるものの,再び悪化,頭部CTにて一見分かりにくいのですが
小さなLDAが散在し,これがなんとair density
胸部造影CTにて,大動脈解離は否定され,食道から左房への腫瘍浸潤があり
何と腫瘍の左房への浸潤による空気が左心系に入ったことによる空気塞栓である
ことが判明しました。患者さんはその後亡くなられて,剖検で確認されました。

これは一同びっくり!!でした。左房から食道側に出血がなく,空気が逆に
左房内に入ったという稀な症例でした。
誰も鑑別診断に想起することができませんでした。

松本先生が,Take Home Messageとして出して下さったのは,
 ・細かい所見を無視しない
 ・認識しない問題は解決できない (triggering error)
というものでした。

2例の中間には,恒例の私の「小ネタ」を提示しました。
今回のお題は,意外に皆さん使っていないかもしれない「打診 percussion について」
でした。失われてしまったskillである打診を,見直してみませんか?という内容でした。



都立多摩総合医療センターの綿貫先生が送って下さったまともも参考にした今回の「O'Pearl」 は,

1症例目:
 ・semantic qualifier=上位語への置き換え=キーフレーズ
 ・誰から聴いた病歴か?=病歴の信頼性を確認するのは大切
 ・誰から聴いたかをカルテに記載するのも大切
 ・安静時痛か、労作時痛かで鑑別が変わる

2症例目:
 ・救急隊は必ずバイタルを測っているので大事である
 ・現着時バイタルは大切 呼吸数も必ず含まれている
 ・血圧測定不能=血圧低いとは限らない 高いこともある
 ・肺癌+ショック=神経原性? 副腎?
 ・見た感じで冷や汗をかいていて、血圧が低いならまず大動脈解離を疑う
 ・ショック+神経学的所見=大動脈解離を示唆する
 ・”うめき声がした瞬間(意識消失の瞬間)\のことを、本人が覚えているかどうかが大切”
 ・患者のバックグラウンドは今回のpresentationに関連することが多い
   (今回の症例では,肺癌の既往→再発を忘れない)

今回も沢山の学びがありました。参加者の皆さんの熱心な討論に感謝します。


さて,第14回は8月27日(土)を予定しています。随時,症例提示の連絡はお待ちしております。




K-5, SMC Pentax D FA 100mm Macro, F2.8 [ISO 400, F4.5, 1/500, EV 1.0]


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碧の滴

2011-05-29 | 写真
























K-5, SMC Pentax F DA 100mm Macro, F2.8


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MORGAN and ENGEL

2011-05-28 | 身体診察

 


以前,週間医学界新聞2009年12月7日号の対談(http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02858_01)でも紹介した「On bedside teaching」という有名なエッセイ(LaCombe MA. Ann Intern Med. 1997.126:217-20.)がある。Bedside teachingがすたれている現状を憂い,指導医に対してBedside teachingを行う際の心構えや戒めを記した名文である。自分が身体診察に深くこだわるようになったきっかけの文章でもあり,今でも時々読み返す。

この中に次のような一節がある。

Teach observation. Osler did. Albright did. Morgan and Engel did. You do it.
(観察することを教えなさい。Oslerはそうした。Albrightもそうした。MorganとEngelもそうした。だからあなたもやるのだ。)

この一節はずっと覚えていたのだが,サパイラの第29章にある参考図書のリストとコメントをみていて,この ”Morgan and Engel”というのが,実は有名な教科書の著者であることに気づいた。"The Clincial Approach fot the Patient”という1969年に出版された教科書で,この本についてサパイラはこのようにコメントしている。

Although this book is not much of a physical diagnosis book -- nor does it claim to be -- for explication and emphasis of those clinical and interpersonal skills needed by the junior clerk, this book sill has no peer.

とあり,未だに他に同等のものがないという。

ネットで検索してみて驚いた。何と40年前に出版された教科書だが,古本としては入手可能であることが判明した。(良い時代である) 早速注文してみて,つい先日届いた。ぱらぱらと見てみると,患者と初めて向き合う学生向けに書かれた本の体裁になっているが,たしかに同じような内容の本は見たことがない。

患者と向き合うときに必要な注意,心構えが非常に細かなことまで書かれており,身体診察を順にとっていく際には,患者に対してどのような位置関係で,どんな姿勢で診察すべきかまで書かれている。

最後の付録の部分では,一人の患者を学生がインタビューした内容を,患者とDrの会話すべてを逐一記録してあり,それに対するコメントが横に書かれている。さらにそのインタビューを元に完成されたNoteがぎっしりとかかれており,両方あわせて48ページにもなる。文字通り"complete history & physical"のやり方の例を示したもので圧倒される。

40年前の教科書だが,内容は現在にも十分通用する,むしろ今では失われてしまった多くのスキルについて書かれているかもしれない。じっくりと取り組むのは難しいかもしれないが,読む価値はありそうだ。(こんなのばかりで,困ったもんだ)
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静岡赤十字病院

2011-05-25 | 臨床研修

3年ぶりに静岡に伺った。前回と同様に輸液の基本的な理解の仕方についてのレクチャー。初期研修医の先生達を中心に50名以上の参加があり,質疑応答の時間もとても熱心な質問をいただいた。「輸液」と「水・Na」の両方を90分でというのは,ちょっと盛り沢山すぎたかもしれないが,勉強のとっかかりにしていただければと思う。

第二内科部長の久保田英司先生にはお世話になりました。ありがとうございました。




K-5, Carl Zeiss Planar T* 50mm, F1.4 ZK [ISO80, F5.6, 1/400, EV 0]
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第13回大船GIM無事終了

2011-05-21 | 臨床研修

何とか今回も無事終了。ついに4年目に突入。今回も60数名と沢山の参加をいただいた。ありがたいことである。いつも通りに活発なディスカッションで盛り上がった。

次回は8月27日(土)を予定している。
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