何年かに一度お招きいただく三重大学に久しぶりに伺いました。今回お世話になった石川英二先生とのつながりは,私が茅ヶ崎徳洲会病院時代に先生が短期研修で来られたときからで,随分長いお付き合いになります。
今回は学生や研修医の皆さんを対象に「腎臓内科は面白い」という内容でというお題をいただきました。自分の内科医としての経歴を振り返ってお話させていただきました。
・内科レジデントを5年間やって,その間subspecialtyを決められなかったこと。
・卒後6年目に,何となくはずみで腎臓内科を勉強する気になって米国への短期臨床留学につながったこと。
・そこで素晴らしいメンターとであったこと。
・帰国してから,指導者がいない環境で来た球を打ち返すような勉強をひたすらしたこと。つねにstruggleという言葉が頭にあったこと。
・その後,縁あって大学病院で勤務,そして再び市中病院に戻ったこと。
・5-6年周期で,勤務する環境が変わり,一般内科と専門(腎臓内科)を振り子のように行きつ戻りつして来たこと。
・オスラー先生の「5年に一度の脳の塵払い」が実感として感じられること。
そして登山にたとえて「頂上に向かう道は一つではない,回り道したっていい。途中で気が変わって別の山に向かってもいい」と強調しました。変わりつつある専門医制度のことを見るにつけ「同調圧力に負けないで自分の好きなことをやった方がいいよ,そうやることの最大の(そして,大したことではない)デメリットは専門医(資格)を取るのが同期からちょっと遅れることだけだけだよ」というのがオッサンのメッセージでした。最後は「あなた方若い人たちには,”時間”という最大の才能を持っているのだ」というジャパンハートの吉岡秀人先生の言葉を結びの言葉にして終わりました。
オッサンの昔話になってしまったかもしれず,何となく聴衆の皆さんの反応がおとなしめで不安でした。でも講演終了後にわざわざ感想を伝えに来てくれた学生さんがいました。「自分は整形外科志望ですが,本当は内科も少し勉強したいと思って悩んでいました。先生の話がとても心に響きました」と。少しは私のメッセージが伝わった方がいたようで,とても嬉しかったです。