H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

3月 どこへいっても○○が・・・

2021-03-30 | 内科医のカレンダー


<9年前からCRP高値を指摘されていた69歳の女性>

 69歳の女性が総合内科外来に院内依頼で紹介されてきた。依頼状には,担当医が月末に退職するに伴い「膠原病疾患は考えにくいのでfollow upをお願い」とのこと。「う〜む,何だかな〜・・」とちらっと思ったが気を取り直してカルテを見直す。

問診票に患者が書いた主訴には「元気がなくて病名が不明」とある。

「どこが具合悪いですか?」

「べつにどこが悪いわけではないです。でも,どこへ行ってもし〜あ〜るぴ〜が高いと言われます」

「ほほう・・」じっくり話を聴きはじめた。

 

 9年前(60歳頃)のこと,以前の居住地近くの病院を受診した時に初めてCRP高値を指摘された。入院して検査を受けたが原因は不明だった。自覚症状はほとんどなし。定期的には通院せず。その後,別の病院でもCRP高値を指摘されたが原因不明であった。「何となく調子が悪い」くらいの症状しかなかった。

 4年前に当院の近くに転居。その年に急性虫垂炎で他の病院に入院した。それ以後,その病院に通院するようになったが,やはりCRP高値を指摘されていた。

 2年前の夏から咳嗽のため近くのクリニックを受診。ここでもCRP上昇(20mg/dl台)と貧血があると言われた。また咳が出るため鎮咳剤が投与されていた。昨年9月同クリニックから当院のリウマチ内科に「SLEの疑い」で紹介となった。SLEを疑う症状なく,抗核抗体等も陰性。カルテをみる限り担当医は,リウマチ性多発筋痛症(PMR)を疑っていた様子が伺える。しかし症状は咳嗽のみで,筋痛を全く訴えないため経過観察のみとされていた。また外来で腹部エコー,胸腹部CT,ガリウムシンチ等が行われていたがすべて異常なし。3月末に外来担当医の退職に伴い「膠原病疾患」とは考えにくいとの理由から私に外来に紹介されてきたという次第。

既往歴では10年近く前に右膝関節痛があり関節鏡等の検査を総合病院整形外科に入院して検査した(詳細不明だが話の内容からはたぶん変形性膝関節症)。以後右膝痛は持続。自覚的には,食欲は普通にあり消化器症状なし。発熱や発汗なし。右膝関節痛以外に関節の痛みなし。筋肉痛・頭痛なし。1年前より軽い乾性咳嗽が持続しているが,症状に大きな変化はない。

初診時身体所見では150cm,31.5kgと小柄な痩せ型の女性。血圧 120/76mmHg,脈拍104/分,T 37.2℃。このときは微熱だが,その後の経過では発熱なし。

全身状態は痩せているが,sickな印象はまったくない。眼球結膜 軽度貧血。黄疸なし。咽頭発赤なし。甲状腺左葉に結節。頚部リンパ節腫脹なし。肺野 清。心音 純。過剰心音。心雑音なし。腹部 平坦,軟。肝脾腫なし。臍下部正中に手術痕。四肢 亀背を認める以外に関節の腫脹や発赤なし。四肢や体幹の筋肉に圧痛は認めず。皮疹なし。

検査所見では,WBC 6000, Hb 9.8g/dl,Ht31.9%,血小板34.0,MCV91.1,TP 9.2, Alb 3.4,総蛋白が高いが蛋白分画ではM蛋白認めず。CRP 20.04mg/dl,赤沈 139mm/hr。

 

確かに炎症反応が著明に亢進した状態がずっと続いている。しかしこれと言っためぼしい症状がなく,診断の見当がつかない。しかし,どう考えても緊急性はなさそうと判断して,まずは月1回の経過観察にしてみた。正直に白状すると,まずは「泳がせてみる」しかなかったのだ。未治療で経過をみていたが,気づくとあっという間に約3ヶ月が過ぎてしまった。この間,CRP18〜20mg/dl,赤沈130〜140mm/hr前後で続いている。自覚症状は患者に何度訊ねても

「まあ,何ともないです。強いて言えばちょっと元気が出ないかしら・・」

という程度ではっきりした訴えはない。もう一つの訴えは「軽い咳は続いている」というものであった。もちろんCXRなどに異常はない。

通院開始から4ヶ月目の外来でのこと。自分では相変わらず「元気が出ない」とのこと。体重は32kgでいつもと変わらず。ご主人も一緒に来院されているので,もう一度本当に無症状なのか確認してみた。そうすると「日中はそれほどではないが,起床時にベッドから降りる時には,ベッドの背もたれを起こしてから降りる。その時にご主人が手助けをしないとベッドから起きて降りることができない」ことが判明した。「それ以外は何ともない」という。どこにも痛みはない。

検査所見では,WBC 5600, Hb 8.6g/dl,Ht 28.9%,赤沈143mm/hr,CRP17.6mg/dlと相変わらず貧血と,著明な炎症反応亢進が続いている。

 

ここで,ふと思いつく。

ひょっとして,患者は「痛み」は訴えていないが,患者自身が「それと自覚していない」だけで,他覚的にはADLの低下があると考えるべきではないか? つまり「症状があるのではないか?」と思い至る。

 

ちょうど少し前に「本人の訴えは無症状の巨細胞性動脈炎」と診断できた症例があったのである。その患者でも,繰り返し聞いても否定していた顎跛行が,PSLの試験投与で「実は当初からあった」ということが判明したのだった。(内科医のカレンダー2019年2月)。まさにそのことを思い出したのである。

これまでのところPMR mimicとしての疾患はほぼ否定されたと判断した。そこでリウマチ性多発筋痛症(PMR)として(本当に良いのかどうか自信がないけれど),低容量ステロイドPSL10mg/dayを試験的に開始してみてはどうかと考えた。1週間だけ投与してみて,反応がなければさっさとやめればいいし。

「○○さん,実はちょっと可能性を考えている病気があるんですけど・・・。試しにあるお薬を試してみたらどうかと思うんですが,どうでしょうか? もし私が考えている病気なら,1週間ほど薬を飲んでもらったら劇的に症状がよくなるはずなんです。効かなかったらすぐに中止にしようと思いますが,どうですか?」

患者が同意してくれたので,PSL10mg/日を開始することにした。体格がかなり小さな方だったので,15mgにしないで10mgとした。

1週間後の再診。体重は33.4kgで以前31.5kgより明らかに体重が増えている。ご主人によれば明らかに元気になった気がするという。「元気が出てきた」というのは,具体的にはベッドから起き上がる時に,ベッドを上げた状態にしなくても起き上がることが出来るようになったらしい。トイレに行くのもご主人の手を借りなくても良くなった。とにかく起き上がる動作が良くなった。しかもずっと続いていた咳も少なくなった。食欲が出てきて何を食べてもおいしいという。検査では,Hb 9.2g/dl,Ht30.0%,CRP 2.26mg/dlと,貧血の改善傾向があり,何よりCRPは劇的に低下している。

さらにPSL開始3週間後。体重はさらに増えている。夫の話では以前より元気になっており食欲も非常に良く以前は全く体重が増えなかったののが増加している。貧血も改善,赤沈46mm/hrと著明に改善した。

PSL開始して5週間目。
自覚症状はよい。「前より元気になったと自覚あり」
赤沈19mm/hr,Hb 10.9 g/dl. Alb 3.7と炎症反応,低アルブミン,貧血など以前からあったほとんどの検査所見は著明に改善した。体重は36kgまで増えた。もうしばらくPSL10mgを継続することにした。


まあ何はともあれヨカッタ・・と思いつつ,患者さんに「随分よくなりましたね〜!」と話しかけた。ところが,帰ってきた返事にガクッ・・・。

「どこも,何とも変わりはありません」

 

<What is the key message from this patient ?>

この症例は,本当に印象に残っている。いまも診断「確定」だったか自信はない。

当時,いつも相談にのってもらっていた高名なリウマチ専門医の先生にこの経過を話したところ「筋痛症というくらいだからな〜。筋肉痛がなければ言いにくいのでは,ないかな・・・」という返事だった。しかし,別の専門医は「そりゃ,PMRに決まってますよ。」とのこと。

診断は,ともかく少量PSLが劇的に有効で「少なくとも貧血や炎症反応は」正常化している。その後の経過も漸減してきても,PSLの副作用もなく良好な経過をとっている。

実はこの方は後日談があり,経過中にちょっとCRPの再上昇と頭痛があったことや,口腔内の潰瘍(実は義歯が当たっているところだったが)などがあったので,浅側頭動脈生検まで行ったのである。結果は陰性で,臨床的にはPMRということにして治療を継続したのであった。

PMRの診断は,いつも頭を悩ませる。これで本当に診断確定として良いのだろうかと逡巡する。そして大抵は,ステロイドを開始して1−2ヶ月が経過して,他になにも起こらなければ「よかった〜,PMRの経過として矛盾しないようだ」と安堵する。

この方は,9年にも渡ってCRP,血沈の著明亢進が続くが「病名不明」だった。PMRという疾患名を当てはめたが,確信を持つことは最後までできなかった。三た論法の批判を受けるかもしれないが,この患者に関してはまさに劇的に有効と判断した。PMRと咳に関しては,文献検索をしてもまったく出てこなかった。巨細胞性動脈炎にまれな症状として空咳があることは知られている。実際,自験例も2例ある。しかしこの方ではその証拠は得られなかった。何より,PSL10mgで異常所見がほとんどなくなってしまったので巨細胞性動脈炎はまずは否定してよかっただろうと判断している。

高齢者の「どこもなんともありません。」はやっぱり疑ってかかること,そして想像力が必要である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナイアガラの奥の細道

2021-03-28 | 趣味趣味

40周年盤を聴いているうちに,久しぶりにナイアガラ関連をいろいろ聴いています。


以前入手したものの,時間がなくてほったらかしにしていた『ナイアガラの奥の細道 〜ルーツ・オブ・ナイアガラ・ポップス』というCD3枚組が目についたので,何気なく聴いてみました。

こりゃ凄いわ! 木村ユタカさんという音楽ライターが編集したオールディーズの曲を63曲集めてあるのですが,これすべて大滝詠一さんのナイアガラ・ポップスの元歌ばかりを集めたものです。

1曲めから「あ,これはあの曲の元歌かな」とナイアガラーならすぐに分かるのも結構あります。この曲も,あの曲も!知らなかったなぁ〜と,新たな感動です。今まで「そうだ」ということは耳にしていたのですが,実際に知ると壮観です。

私はオールディーズは普段聴かないので,どの曲もほとんど初めて聴く曲が多いはずなのに,かなりの曲がどこか聴いたことがあって口ずさめる(ただ微妙に違うんだけど)。

あるフレーズのある数秒間を聴いて「コレはある曲のある部分では?」とまでは思い浮かぶのですが,具体的な曲名がすぐには出てきません。考えていると次のフレーズに移ってしまうので,分からなくなります。ちょうど,目の前に何かが現れるがつかもうととすると,消えてしまう。そんな感じがなんとももどかしい。手が届きそうで届かない感じ。コレが堪りません。

ナイアガラの曲を通じて,こんなに多くのオールディーズの曲たちに知らずに触れていたことが分かってほんとに驚きました。通のナイアガラーの人たちはこの楽しみを,究極の知的なアソビとして楽しんでいたんですね。自分などまだまだ上っ面でした。

それで聴き比べが楽しめるように,元の曲と大滝さん作の曲を交互に並べたプレイリストを作っています。3枚組で63曲入ってますが,これだと分かったのはまだ12曲ほどです。だんだん難しくなりそうです。しばらく「楽しい夜更し」が続きます。

 

木村ユタカさんの『ナイアガラに愛を込めて 大滝詠一ルーツ探訪の旅』という本にはほぼ「答え」が載っているらしいですが,まずは自分でやってみようと思います。「全部揃える」のがナイアガラーの性なので,もちろん本も入手しますけどね・・・(笑)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「卒業」する君へ

2021-03-27 | 臨床研修


明日,郷里にもどるという先生から心のこもったお礼のメールをもらいました。

ちょうど「抽選で当たって実家から送ってもらったのでどうぞ」と,先日彼からいただいた焼酎を開けたところでした。「なんという旨い焼酎だ!」と感動していたところに,その彼からメールが届いたのでした。

 「明日,鹿児島に帰ります。2年間ありがとうございました。」

その後に続いた感謝の言葉は本当に嬉しいものでした。旨い焼酎が,さらに美味しく感じられました。この2年間が彼にとってよい経験だったこと,言葉として直接言ったことはなかったけれど伝えたかったこと「謙虚に学び続ける姿勢」を彼が身につけたことがよくわかりました。これぞ指導医冥利につきる思いがしました。今年はコロナのせいで,最後にゆっくり盃を交わしながら語り合うことは叶いませんでした。とても残念なことでしたが,それは将来への楽しみということにしました。

 

これまで何人もの研修医を送り出してきました。あまりに数が多くて,誰が誰の上の学年とか,もう分からなくなります。最近は立場上,研修医達と長い時間を過ごすことは減ってしまいました。でもたとえば病棟などで,研修医と一緒に過ごしたふとした出来事は,不思議によく覚えています。みんなそれぞれに思い出があります。今年巣立っていった4人の研修医達もみんな優秀で,それぞれ違った「持ち味」があって印象深いです。

 帰ろうかなと思った矢先に,DKAの患者を一緒に夜中まで診たT先生,上記のメールをくれた先生とはTorsade de Pointesで何度も目前でVTを起こす患者を一緒に診たこと,そして転院搬送の添乗を(君なら大丈夫!と肩を叩いて)彼に任せたこと,録音聴診器を発明したI先生とは,何度もフィジカルオタク談義に花が咲きました。そして一見派手さはないけれど,着実に患者さんの診療にあたってくれ信頼感抜群だったK先生。全員が私にとっては大切な教え子「大船の卒業生」です。きっとこれから各自の分野で成長して,自分のようなオジサンを超えていってくれることでしょう。いつの日にか再開する日が楽しみです。

そんなことをぼんやり考えて飲んでいたら,つい飲みすぎてしまいました。イカンイカン,こんな旨い焼酎,パカパカ飲んではもったいない,もうやめておこう・・・(笑)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

録音聴診のススメ 『石井弐号』の紹介

2021-03-24 | 身体診察


この春,当院を巣立っていく研修医(PGY2)の一人,石井大太先生が自作した録音聴診器です。これはほんとにスグレモノなので彼の許可を得て紹介させていただきます。簡単に自作できます。(といっても私は彼に作ってもらいましたけど・・)。

 

必要なものは,リットマン・クラシック聴診器,iPhone用外部マイク,Y字管,あとは作業用のカッターと固定のためのネジ程度です。

・マイク:「MicW コンデンサーマイク i437L Lightning端子」というiPhoneに直付けするマイク。石井先生はヨドバシで見つけたそうです。数千円単位のものもあったそうですが,音質を考えて売り場にあった中で高いやつを選択したそうです。(ネットでまだ買えますが,現時点でアマゾンでは品切れのようです)
・Y字管:  どんなものでもよさそうですが彼は水道用品売場で見つけたそうです。製品番号を写真でとって拡大して調べたところネットでも入手可能と判明しました。実はこれ,医療機器の会社が作っているものでした( https://www.monotaro.com/p/2053/0676/ )

 

作成方法は至って簡単。リットマン聴診器の途中をはさみでぶった切って,Y字管をかませてiPhone用外部マイクを刺すだけの至ってシンプルな構造です。音質はまあそれなりですが,自分の勉強用に記録を残すのには十分です。何よりも素晴らしいのは記録が「超簡単」なことです。これだけで,とりあえず心音や頸静脈の記録が取れるようになります。

もし外来で興味深い所見があったとき(もちろん患者さんの了解を頂いてからですが),チョ〜簡単に記録が取れてしまいます。

特に素晴らしいのは,iPhoneの「カメラ」アプリを使ってMovieで記録すれば,心音と頸静脈拍動が同時に記録できてしまうのです。教育的な利用もしやすくなります。私は例えばこんな使い方をしています。

・頸静脈拍動と心音を同時に記録すると「S1S2のタイミングで2回へこむとか,CV波がTRで見えるとか」説明できる
・心尖拍動を聴診器のヘッドの動きや舌圧子の動きと心音を同時に記録する(特に4音とか)
・頸静脈で静脈コマ音の記録
・S2の分裂を3Lで聴診するときに,胸壁の呼吸の動きと心音が同時に記録できる
・呼吸音だと聴診部位が一緒に記録されるのでどこで聴いたのかがわかる

 

さてこちらは,石井先生が最初に自作した『初号機』。彼がコレを自作したのは,肺炎の患者さんで「ヤギ音」の典型的な例があったときに「どうしてもこの音を記録しておきたい!!」という強烈な願いからでした。それで,その患者さんの音が消えてしまう前に必死で考えて作ったそうです。まさに「必要は発明の母!」ただ『初号機』の欠点は,録音する時にリアルタイムで耳で確認できないことでした。その欠点を補うために彼が知恵を絞って編み出したのが,上記の『弐号機』です。

 

さて再生した心音を聴く時の,最も大切なことは「よいヘッドホン・イヤホン」を使うことのようです。私も詳しくはなかったのですが,いくつか試してみると全然違いました。たまたま「BABYMETALを聴くために」買って使っていたイヤホン(JVC HA-FX-1100)を使ってみると,心音を聴くには圧倒的に優れていることが分かりました。ただ欠点は高いこと。ずいぶん前に型落ちになっていたのを,バーゲンの時に半額くらいで買いましたがが,それでも結構な値段です(音楽を聴くのにめちゃくちゃ素晴らしいので個人的には十分元はとったと思ってますが)。でも値段の違いは充分あると思います。

これで分かったのは「心音を聴く時のイヤホンやヘッドホンの性能はかなり高いものが要求される」ということです。特に3音や4音はある程度のヘッドホン,イヤホンでないとかなり厳しいみたいです。FX-1100が素晴らしいのは,耳に当てた感触が聴診器に近く(ヘッドホンよりもずっと自然な感触)音が抜群によく聴こえることです。
 低音に強いイヤホンならもう少し安いのでもいいのはあるかもしれません。例えば,以前ある方に教えてもらいましたが,これはいい感じでした。
・final E3000 カナル型イヤホン FI-E3DSS https://www.amazon.co.jp/dp/B071FB3PNM/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_ZppoEb02V61E8 

石井先生はこの録音聴診器で集めた音を題材に雑誌『総合診療』に連載中です。こちらも是非皆さんご覧下さい。石井先生はこの3月末で当院を巣立ち新天地でさらに研鑽を積まれます。いつでもバイタリティあふれる若者は見ていて気持ちが良いものです。石井先生,頑張って下さい!!期待しています!!!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

祝 『A LONG VACATION』 40周年 〜ナイアガラーへの道〜

2021-03-21 | 趣味趣味


今年もナイアガラの日。ロンバケ40周年です!! 大滝さんにならって「Load to ナイアガラー」を書いてみました。

 

超歴史的名盤『A LONG VACATION』(通称 ロンバケ)を初めて目にした時のことは,今も鮮明に覚えています。

大学5年の頃です。当時は「レンタル・レコード」というのが全盛でした。下宿の近くにある行きつけの店で,いつものように店長の兄ちゃんと話しながら面白いレコードはないか物色していたときです。「おっ!?」と目を引くジャケットのアルバムを見つけました。それが『ロンバケ』でした。完全に「ジャケ買い」(買ってないけど)でした。

早速借りて,聴いてみたところこれが最高にカッコいい。美しい声とメロディライン,そしてぶ厚い音のシャワー(のちにナイアガラ・ウォール・サウンド,さらに言えばフィル・スペクター・サウンドと知る)がとってもいい!『ロンバケ』をカセットに録音して返却するときに,別のアルバムも借りてみました。「大滝詠一」名義で面白そうなジャケットのアルバムが他にも沢山ありました。同じような感じを期待して,次に借りたのは,たしか『ゴーゴー・ナイアガラ』か『ナイアガラ・ムーン』だったと思います。これが私の長い長いナイアガラー人生の始まりでした。

   

聴いてみるとびっくり仰天,有頂天。ロンバケ路線とは全く逆の面白い変な曲ばかり。何じゃぁコリャ??と,最初は正直ズッコケました。ところが,聴きこむうちにその面白さにどんどんハマっていきました。そして次々とアルバムを聴くようになりました。

音作りやアレンジが面白く,複雑な言葉遊びの歌詞など,聴けば聴くほどスルメのように味わいがあります。その究極が『レッツ・オンド・アゲイン』です。初めて聴いたときには,ほんとにひっくり返りました。色々,資料を漁ると細かい仕掛けが随所に隠されていることも分かってきました。1曲めは「峠の早駕籠」という曲ですが,のっけからアルバムのテーマのひとつである「エッホ,エッホ・・」という駕籠の掛け声がでてきます。LPレコードは33回転でレコードの溝から針で音を拾っていますが,曲が終了して一番内側の部分になると「エッホ,エッホ・・」の掛け声が出るようにうなっていたそうです。つまりオート・リターンじゃなければ,レコードが周り続ける限り永遠に約2秒で1回転のリズムで「エッホ,エッホ・・」が続くという・・・。ただし,これは初回プレス盤だけの仕掛けだったそうで・・そんなコダワリを確認したくて初回盤を探して入手したりしました。(結局アナログプレーヤーが壊れて確認できていません)。

個人的に一番好きなアルバムは『ナイアガラ・カレンダー』です。1月から12月に渡ってメロディックな曲からノベルティ路線までバラエティに飛んだ曲が並んでいるのが秀逸です。何度聴いても聴き飽きません。本ブログの「内科医のカレンダー」はこのアルバムにちなんでいます。本当は単行本で出したいと目論んでいたのですが,頓挫しているのでブログで細々と続けている次第(いつかまとめて「アルバム」に仕上げたい)。

「面白ソング(ナイアガラでいうところのノベルティソング」の沼は深く,パロディやオマージュの元ネタ探しの沼にハマるとえらいことになります。私はそこまで音楽に博識ではないので,ナイアガラー関連の書物で紹介されている音源を入手して聴いてみる・・といった感じです。同じ曲をいろんな人がカバーしているので,比べてみるのも楽しいです。こうして徐々にナイアガラ(大滝)の深みにはまっていくことになります。

特に私の場合,大滝さんを入り口に「クレイジー・キャッツ」に世界が広がりました。子供の頃にかすかにテレビで見た覚えがありましたが,あらためて聴くと一流ミュージシャンが音楽で「真面目にふざける」面白さを知りました。

面白いものつながりで,当時デビューしたばかりのタモリのアルバム(『タモリ1』『タモリ2』)を入手したのも,この頃でした。1枚めを聴いて面白かったのですぐに2枚めも買いに行きました。続けて買いに行ったのでレコード屋のレジのおねーさんに「なんだか変な趣味・・」みたいな顔をされたのを覚えています。(これについては,またいずれ書こうと思います)

その後の安定のクオリティの『ナイアガラ・トライアングル Vol.2』そしてもう一つの超名盤『 Each Time』と続きます。ま,当然これらの40周年も来ることを期待しています。

ナイアガラーになると,次第に同じジャケのLPやCDを何枚も所有するようになり,それぞれを製品番号(35DH1とか・・)で区別するようになります。同じようなジャケを並べて眺めながらニンマリして家族に呆れられるようになるとナイアガラーの一丁上がりです。さらには周辺の分野に手を広げるともっと大変なことになります。

『ロンバケ』が発売された年にLPアルバム9枚組の『Niagara Vox』が発売されました。当時は学生時代でお金がなくて,欲しかったけれどとても買えませんでした。聴いていたアルバムはほとんどレンタルレコードからカセットに録音したもので済ませていました。ですから研修医になって初任給をもらったときは,真っ先に2万円を握りしめてレコード店(当時まだあったCHIYAMA 注)に『Niagara Vox』を買いに走りました。(注:サザンのファンには有名な店。「夕方CHIYAMAに集合」で検索のこと)

CDの時代になり,仕事が忙しかったり他の趣味に走ったりして,しばらくナイアガラから離れた時期があります。でも,ある時期からまたナイアガラーの血が騒ぐようになり関連ディスクをまたネットで漁るようになりました。あらかた集まったので,最近は毎年3月21日に「ペット・サウンズ・レコード」さんから「新譜」を購入するのが恒例になっています。

大滝さんを入り口に,いろんな世界が広がりました。アメリカンポップスの歴史,ノベルティソングから遡ると「クレイジー・キャッツ」さらには「小林旭」とか,こうしてナイアガラ関連でいろんな分野やアーティストの世界を知ることになりました。さらに後年は「映画カラオケ」でこれも驚きます。大滝さんの凄いところは,カバーする幅の広さと一旦極めるとその深さが尋常じゃないところでしょうか。

昨年の3月21日にリリースされた『DEBUE AGAIN』では,未発表音源によるニューアルバムに感激しました。これからも毎年3月21日に何が発掘されてでてくるのか,ナイアガラーの道は続きます。でも,師匠の言葉どおり「期待は失望の母」,期待せずに待ちます。

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする