H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

Marcus Gunn pupil

2011-09-15 | 身体診察





先日,ついに観察する機会を得た。

患者さんは70代の男性。当初下肢の痛みを訴えて来院し,その後上肢帯の痛みもありリウマチ性多発筋痛症を疑って経過を見ていたところ,”食事の時に食べるのがいやになってしまう”という間欠性顎跛行の症状と,その直後に左視野の一部欠損と複視が出現した。頭痛はなかったが血沈の著明亢進などから,臨床像は側頭動脈炎として直ちにPSLで治療を開始。側頭動脈生検では血管壁に細胞浸潤はあるが典型像は見られず,MPO-ANCAも陽性であったため,巨細胞性動脈炎の典型像とは診断できなかったが,臨床像は合致していると考えPSLで治療を継続中である。

入院後に確認したところ見られた所見がこれである。健側と患側に交互に素早く光を当てる(swinging flashlight test)と,患側(左側)では共感性には縮瞳(間接対光反射)するが,直接対光反射では縮瞳しない。求心性視神経回路の異常によっておこる求心性瞳孔欠損である。Relative afferent pupillary defect (RAPD)とも呼ばれる。原因は,片側の視神経や網膜の病変で,視神経症(視神経炎,虚血性視神経症,腫瘍による視神経圧迫)や広範な片側網膜病変(網膜剥離など)でおこるそうである。また白内障ではおこらない。

この所見は,以前読んだ松村理司先生が舞鶴市民病院時代のことをかかれた本の中で,不明熱の患者をある大リーガー医が,このMarcus Gunn Pupilを指摘して側頭動脈炎と直ちに診断したエピソードで印象に残っていたのである。この数年で側頭動脈炎を数例経験しているが,この所見をみることはなかった。機会があれば,絶対に見逃さないぞと思っていたが,ついに確認できた。

眼科の先生に伺うと,眼科的にはそれほど稀な所見でもないそうで,ちょっと意外だった。

YouTubeに,非常に分かりやすい解説の動画がアップされている。

http://www.youtube.com/watch?v=HSYo7LhfV3A
コメント
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