H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

クリニカル・リーズニング・ラーニング

2011-09-12 | 臨床研修

 この本の原書初版は,自分の臨床スタイルを根底から変えたといってもよいほどインパクトを受けた本である。初めて手にしたのが,1993年8月だった。NEJMのある号のCPSの引用文献に取り上げられていて,取り寄せてみたのであった。入手してからは,本当にむさぼるように,文字通りcover-to-coverで読んだ。そんな教科書は初めてだった。(アマゾンの5つ★のレビューは実は私です・・)

 大船GIMカンファレンスで行っているスタイルも,この本を読んだことがヒントになっている。「CPCで使える思考過程は,CPCでしか役に立たない」ことをこの本で再認識し,自分がそれまでやっていたスタイルが間違っていないことを確信した。今でも大船GIMのイントロでは,この本に書かれている思考過程の5ステップを簡単に説明している。

 18年ぶりに第2版がでたのが一昨年。直ちに入手したもののなかなか読めないでいた。岩田健太郎先生が翻訳に取り組んでいることは伺っていて,楽しみにしていた。今回ついに上梓されたのを,メディカル・サイエンス・インターナショナルから献本いただいた。感謝!!

 岩田先生いわく「本書に通底するリズムとビートを損ないたくない」ために1人で翻訳をやり通したと前書きにあったが,それは見事に成功していると思う。とても読みやすい日本語に置き換えられており,相当神経を使ってことばを選んだのだろうなあということが伺われる(自分も現在,未だ苦しんでいるからわかる・・)。まだ読み始めたばかりだが,文章の所々に,いつもの岩田節がちらりと顔を出していて,にやりとさせられる。翻訳本だけども,ちゃーんと岩田先生の本になっているところが凄いなあと思う。

 以前に,ティアニー先生のお弟子さんのダリウォール先生に一度だけお会いしてお話ししたことがあった。Clinical reasoningに関するちゃんとした本は,この黄色い表紙の本が唯一無二であるということで,当時彼とも意見が一致した。今回その最新版の内容が,読みやすい日本語ですらすらと(もちろん内容は難しいところはあるが)読めるようになったのは,本当に若い先生達にとっても幸せなことである。少なくとも診断への思考過程にコダワリたい学生・研修医には,必読の本だ。自分もこれを機会にもう一度きっちりと読み直すようにしよう。

 
コメント
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