H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

翻訳の楽しみ(苦しみ)

2011-05-12 | 日記

この1月ばかり,Sapiraの翻訳にかかりきり(って今頃?)。自分の担当部分すらなかなか終われずに(締切りは何万光年の彼方,医学書院さんごめんなさい),GWも受験生並みに空いた時間を文字通り,すべてつぎ込んだ。こんなに机に向かったのは久しぶりである。(4月はほとんどブログ更新できなかったのは,このせいもある・・・あ,言い訳か)

それにしても翻訳は難しい。身体診察シークレット(第1章のみ)を終えた時には翻訳なんて二度と引き受けるもんかと思っていたが,今回あらためて格闘してみて(まだ過去形にはならないが)すこし面白いと思えるようになった。

翻訳はただ英語を日本語に置き換えるだけでは終わらない。まず直訳でも良いから日本語に置き換えるが,そこから今度はいかに自然な日本語の文章にするかの作業が始まる。多分,この作業が半分以上を占める。もう別の文章を作る位の気持ちが必要だ。

担当となった総論の部分の文章は本当に泣きそうになるくらい難しいところが多かった。自分はまったく疎い哲学の話とか出てくるし。さらに自然な文章に置き換えるためには,なぜ著者がこの単語を選んだのかを考えて,それに見合った日本語を探す作業が大変だ。どうやっても上手い表現が思い浮かばず,何週間も止っていた部分もある。でも,あるとき突然ひらめいてぴったりの表現を思いついたときは「Bingo!!」である。何度かその瞬間があった。これが翻訳の醍醐味なのかなあ(ちょっと自虐的)と感じた。日本語の文章にしてからも,語順をほんの少し変えるだけで,理解しやすさや印象が激変する。他の人がどうやっているのか知らないが,少なくとも自分はPCの画面だけでは絶対に作業が終わらない。一度紙にプリントアウトして,それを何度も読み直し赤をいれ,それを入力しなおして,またプリントアウト。それをまた読み直して赤を入れ・・この作業を繰り返す。自分は岩田健太郎先生みたいに仕事が早くないので本当に時間がかかる。翻訳に限らず,大抵の依頼原稿は10回位この作業をしてやっと完成する。自然な文章にするのは本当に難しい。声に出して読んでリズム感があって違和感がない文章が良い文章だが,なかなかそうはいかない。

今回翻訳という作業に取り組んで,もう一つわかったこと。今までこの本を少しは読んだつもりでいても,実は書いてあることの半分も理解できていなかったんだということを思い知らされた。ここまで本気で取り組んだのは初めてかもしれない。良い経験ではある(まだ終わった訳ではない・・・とほほ)。

さてさて,残った監訳分との格闘がまだまだ続く・・・・。元の本はいいけど,この翻訳はヒドイと言われない出来にしなければ,Sapira先生に申し訳が立たないし,翻訳を出す意味がない。
コメント
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