面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「小さな命が呼ぶとき」

2010年08月19日 | 映画
ジョン・クラウリー(ブレンダン・フレイザー)は、オレゴン州ポートランドに暮らすエリート・ビジネスマン。
彼には3人の子供がいたが、そのうちの2人がポンペ病と言う難病に冒されていた。

ポンペ病患者の平均寿命は9年。
長女のメーガンが8歳を迎えたそのとき、急に容態が悪化し、病院へと担ぎ込まれる。
彼女は驚異的な生命力で一命を取り留めたものの、予断は許さない状況となっていることを思い知ったジョンは、ネブラスカ大学にロバート・ストーンヒル博士(ハリソン・フォード)を訪ねた。
博士はポンペ病研究の第一人者で、治療に有効な最新の薬を開発していたのである。

莫大な研究開発費がかかると博士から告げられたジョンだったが、その資金を援助することを約束して基金を設立、同じ境遇にある親達とも連携して資金を募ったものの、研究に必要な金額には遠く及ばない。
それでもジョンは博士に資金を渡そうとするが、そんな彼の真摯な姿に打たれた博士は、共同で製薬会社を立ち上げることを提案した。
何としても子供達を救いたいジョンは賛同し、ポンペ病治療薬を開発するためのベンチャー企業を起こす…

4万人に1人が発症するという極めてまれな難病であるポンペ病。
そんな難病にかかった子どもたちを救うために奮闘する父親と、彼に協力する型破りな研究者の姿を描く本作は、実話をもとにしている。
子供を救おうと奔走するジョン・クラウリーは実在の人物で、今も難病の子供達を救う活動に取り組んでいるという。
我が子を助けるためには親はあらゆる手を尽くすものとはいえ、子供の病気を治療するために製薬会社を起こすなど、並大抵のことではない。
その凄まじいまでの実行力は、我が子に対する溢れんばかりの愛情に根ざしたもの。
家族の崩壊に起因する痛ましい事件が相次ぐ昨今、彼の強烈な父性愛は感動的である。

また本作では、製薬会社の設立から身売りまでのビジネスモデルの進め方のほか、全てに採算を優先する投資家とのせめぎ合いを演じるジョンの姿や、大手製薬会社の内幕が描かれていて、新薬開発のプロセスがリアルに描かれているところも、「プロジェクトX」的に楽しめる。
そして、ビジネスパートナーであるジョンと博士の間に育まれる“大人の男の友情”も、我々野郎どもの胸を打つ。
幾重にも興味を引かれるテーマが内包されていて、最後まで観る者を飽きさせない。
ストーンヒル博士を演じたハリソン・フォードが、本作の元となった実話に心を打たれ、企画段階から参加し、製作総指揮も務めたのもうなずける佳作。


小さな命が呼ぶとき
2010年/アメリカ  監督:トム・ヴォーン
製作総指揮:ハリソン・フォード
出演:ハリソン・フォード、ブレンダン・フレイザー、ケリー・ラッセル