面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「GOEMON」

2009年05月18日 | 映画
時は安土桃山時代、豊臣政権下。
長年に渡って続いてきた戦乱も一息つき、一応の平和がもたらされていた。
発展した商業主義により、大きく富を得る者もあったが、才覚のない者、力の弱い者は貧困に喘ぎ、庶民の間には息苦しさも漂う。
そんな閉塞感に風穴を開け、民衆から熱狂的に支持される大泥棒・石川五右衛門(江口洋介)。
超人的な身体能力を武器に、金持ちから盗み、貧しい者に分け与える彼を民衆は義賊ともてはやされていたのだった。
ある夜、豪商・紀伊国屋の屋敷に盗みに入った五右衛門は、金銀財宝の中に南蛮製の箱を見つけ、一緒に持ち去る。
セコムもはるかに及ばない、私設軍隊のような警備を突破し、いつものように群集に向かって金銀小判をばら撒く五右衛門。
最後に残った南蛮製の箱を開けてみると中は空っぽ。
なんだ、空箱かと、五右衛門は投げ捨ててしまうが、その箱こそ、時の権力者として覇を称えていた豊臣秀吉(奥田瑛二)の足元を揺るがす秘密が隠された、禁断の箱「パンドラの箱」だった…。

マントにブーツ、立て襟のコートやドレス、バルカン砲のような最新式「種子島」(当時の鉄砲の呼び名の一つ)、巨大戦艦の主砲の如き大筒(大砲) etc.
舞台は戦国時代の日本…のはずだが、スクリーンに映し出されるのは、国も時代も超越し世界。
「どこやねん!?ここは!いつやねん!?時代は!」と、歴史好きの大阪人なら思わずツッコミを入れてしまう(自分だけ!?)。
史実に基づいているのは登場人物のみ。
…いや、オープニングで五右衛門が盗みに入った屋敷の主・紀伊国屋文左衛門は江戸時代の人物。
結局、天下統一を目指していた信長を明智光秀が倒し、その明智を秀吉が倒して覇権を握るという、歴史の大筋のみを踏まえ、石川五右衛門に新たな人物像を与えて主人公に据えて、“紀里谷版歴史絵巻”を作り上げている。

まるでシェイクスピアの舞台を思わせる煌びやかで豪華な衣装、斬新奇抜かつ豪壮な城の作り、不夜城の如く煌々と明かりが灯る不夜城の城下町上空に上がる花火など、奇想天外絢爛豪華な映像が度肝を抜く。
破壊と構築が繰り返され、また南蛮貿易も盛んになり、みるみる商業が発展していった安土桃山時代。
紀里谷監督が作り出した世界は、派手好きな秀吉の活動も相まって、「戦国バブル」と呼ばれるほど経済活動が著しく活性化したこの時代の空気を、デフォルメ化して見せていて実に面白い(福山雅治風)。

史実と伝承を脚本の大鍋に放り込み、かき回しながらグツグツと長時間かけて煮込んで作られた斬新な味わいの作品が、「歴史モノ」のメニューに新たに加わった。
“紀里谷ワールド”炸裂の歴史ロマン大作。


GOEMON
2009年/日本  監督:紀里谷和明
出演:江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ、中村橋之助、寺島進、平幹二朗、伊武雅刀、奥田瑛二、要潤、玉山鉄二、チェ・ホンマン