★この記事はジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」に、2008年12月掲載した記事です。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ①
画像は、エゾアジサイ 秋田県秋田駒ケ岳(笹森山)。
秋田県と岩手県の境にある秋田駒ケ岳1637mに、イワテシオガマ(関東地方山地産のハンカイシオガマともども、屋久島固有種ヤクシマシオガマの、隔離分布する姉妹種と目される)の探索に行った時の撮影です(2001.8.5)。
烏帽子岳1477mへの縦走の途上、朝から降っていた雨が本降りになったので、笹森山1544mから乳頭温泉郷に直接下ることにしました。雨に煙るチシマザサの中に、白いノリウツギと、鮮青のエゾアジサイが、交互に出現、いずれも、丈が低く、花序が大きくて、出会うたびにハッと驚いてしまいます。なかでも、エゾアジサイの深い青は、抜群のインパクトです。高緯度・高標高ほど、色が濃くて鮮やかなのです。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ②
画像は、エゾアジサイ 岩手県早池峰(小田越附近)
早池峰山1914mでの撮影目的は、もちろん名高き蛇紋岩固有植物たち。6月にヒメコザクラ、7月にハヤチネウスユキソウ、8月にナンブトウウチソウ、、、。蛇紋岩の岩が累積する山体の上半部での1日がかりの撮影が終わり、山を下ります。薬師岳との鞍部・小田越えに近づくと、それまでの見晴らしの良い景観とは一変して、深い樹林の中に分け入ります。固有植物たちに代わって、オサバグサやエゾアジサイなど、日本の冷温帯林の代表的メンバーたちが出現。魅力はひけをとりません。
実は、この写真、掲載しようかどうか、最後まで迷った、、、。というのは、あまりにきれいな花だから。実際の色は、吸い込まれてしまうような、深く鮮やかな青なのです。苦心してスキャンし、かなり近いところまで再現できたとは思うけれど、それでもまだまだ不満です。なんとも歯がゆい思いなのです。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ③
画像は、エゾアジサイ 山形県飯豊山(飯豊山荘附近)。
とにもかくにも、エゾアジサイの青色は、ポジフィルムのデジタルスキャンでは、正確な色の再現が極めて難しいのです。この写真も、実際より少し淡すぎる気もしますが、この地域の個体群のイメージは、概ね表現されていると思います。
やはり、2001年夏(7.19)の撮影。
飯豊山(北俣岳2025m)への登山口、飯豊温泉の国民宿舎の近くの路傍の、モミ・ツガ原生林の裾に、大きな花序のエゾアジサイが群生していました。着いた時は、すでに夕刻だったので、写真はほんの少ししか写せなかったのですけれど。
今回の目的は、飯豊山の稜線に生える、ヒメサユリとイイデリンドウです。尾根の登り口にテントを張り、翌朝まだ暗いうちから、アプローチが長いことで有名な、山上に至る尾根に取りつきます。
夜明けと共に、ヒグラシの合唱、やがて一時間ほどして、辺りがすっかり明るくなると、今度はエゾハルゼミの合唱です。出現期や棲息環境が微妙に異なることから、同時に鳴き声を聴くチャンスは滅多にないのですが、こうやって続けて聞いてみると、鳴き声の形式が、意外によく似ていることが分かります。両者は、思いのほか近縁な関係にあるのです。
山上での撮影に手間取り、下山時には日が暮れかけていました。途中からは、ヘッドランプで急坂の登山路を照らしながらの下降です。大きなガレ場に差し掛かったとき、斜面に咲くエゾアジサイに出会いました。茎が地を這い、大きく鮮やかな花の群れが、白い砂上一面を埋め尽くしています。それはもう、筆舌に尽くし難い素晴らしさなのだけれども、いかんせん、日はとっぷりと暮れています。写真撮影は無理。後ろ髪を引かれる思いで、後にしたのです。いつかまた、この究極のエゾアジサイを写しに、再訪したいと考えています。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ④
画像は、エゾアジサイ 長野県白馬鑓ヶ岳(白馬鑓温泉)。
エゾアジサイは、北海道南部・東北地方から、新潟県辺りにかけては、透明な青色の装飾花・正常花からなる花序と、薄く大きく幅広く、濃緑色の葉を備えた、典型的な個体群が見られます。
しかし、北陸地方や信州の内陸部に入ってくると、ヤマアジサイとの関係が微妙になってきます。北アルプス北部の白馬岳東面は、日本海へ直接流れ出る姫川の水系、この辺りまでは、典型的なエゾアジサイのようです。日本一標高の高い(2100m余、北八ヶ岳の本沢温泉と日本一の座を競っている)温泉として知られる、白馬鑓温泉(温泉といっても、山の中に簡素な露天風呂があるだけ)からの下山途中に出合った写真の個体も、典型的なエゾアジサイ。この辺りが、典型エゾアジサイの南限のように思われます。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ⑤
画像は、ヤマアジサイまたはエゾアジサイ 長野県北アルプス常念岳(一ノ沢)。
しかし、北アルプス周辺域でも、中部以南の梓川(信濃川)流域になると、少々様相が異なってきます。エゾアジサイとも、ヤマアジサイとも、判断がつかぬ個体が出現し始めるのです。
この写真(予告編の5に同じ)は、ある年の夏、常念一の沢を遡行して、常念乗越2450mに、高山蝶を撮影に行ったときの副産物です(1986.8.6)。この常念一ノ沢コースは、山麓から歩いて北アルプスの高山帯に至る登山路としては、最も楽なコースの一つだと思います。行程の前半は沢沿いの道、後半は急坂。常念小屋のすぐ手前で、高山帯に出ます。
登山口からしばらく進んだあたり、樹林の中の湿った岩肌沿いに、純白の花を満載した背の高いノリウツギと、濃い青色の正常花が鮮やかなヤマアジサイが、並んで咲いていました。装飾花は白(うっすら青味を帯びている?)。葉は、典型的エゾアジサイに比べて、やや明るく細長いような気がします。ヤマアジサイなのか、エゾアジサイなのか、意見が別れるところです。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ①
画像は、エゾアジサイ 秋田県秋田駒ケ岳(笹森山)。
秋田県と岩手県の境にある秋田駒ケ岳1637mに、イワテシオガマ(関東地方山地産のハンカイシオガマともども、屋久島固有種ヤクシマシオガマの、隔離分布する姉妹種と目される)の探索に行った時の撮影です(2001.8.5)。
烏帽子岳1477mへの縦走の途上、朝から降っていた雨が本降りになったので、笹森山1544mから乳頭温泉郷に直接下ることにしました。雨に煙るチシマザサの中に、白いノリウツギと、鮮青のエゾアジサイが、交互に出現、いずれも、丈が低く、花序が大きくて、出会うたびにハッと驚いてしまいます。なかでも、エゾアジサイの深い青は、抜群のインパクトです。高緯度・高標高ほど、色が濃くて鮮やかなのです。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ②
画像は、エゾアジサイ 岩手県早池峰(小田越附近)
早池峰山1914mでの撮影目的は、もちろん名高き蛇紋岩固有植物たち。6月にヒメコザクラ、7月にハヤチネウスユキソウ、8月にナンブトウウチソウ、、、。蛇紋岩の岩が累積する山体の上半部での1日がかりの撮影が終わり、山を下ります。薬師岳との鞍部・小田越えに近づくと、それまでの見晴らしの良い景観とは一変して、深い樹林の中に分け入ります。固有植物たちに代わって、オサバグサやエゾアジサイなど、日本の冷温帯林の代表的メンバーたちが出現。魅力はひけをとりません。
実は、この写真、掲載しようかどうか、最後まで迷った、、、。というのは、あまりにきれいな花だから。実際の色は、吸い込まれてしまうような、深く鮮やかな青なのです。苦心してスキャンし、かなり近いところまで再現できたとは思うけれど、それでもまだまだ不満です。なんとも歯がゆい思いなのです。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ③
画像は、エゾアジサイ 山形県飯豊山(飯豊山荘附近)。
とにもかくにも、エゾアジサイの青色は、ポジフィルムのデジタルスキャンでは、正確な色の再現が極めて難しいのです。この写真も、実際より少し淡すぎる気もしますが、この地域の個体群のイメージは、概ね表現されていると思います。
やはり、2001年夏(7.19)の撮影。
飯豊山(北俣岳2025m)への登山口、飯豊温泉の国民宿舎の近くの路傍の、モミ・ツガ原生林の裾に、大きな花序のエゾアジサイが群生していました。着いた時は、すでに夕刻だったので、写真はほんの少ししか写せなかったのですけれど。
今回の目的は、飯豊山の稜線に生える、ヒメサユリとイイデリンドウです。尾根の登り口にテントを張り、翌朝まだ暗いうちから、アプローチが長いことで有名な、山上に至る尾根に取りつきます。
夜明けと共に、ヒグラシの合唱、やがて一時間ほどして、辺りがすっかり明るくなると、今度はエゾハルゼミの合唱です。出現期や棲息環境が微妙に異なることから、同時に鳴き声を聴くチャンスは滅多にないのですが、こうやって続けて聞いてみると、鳴き声の形式が、意外によく似ていることが分かります。両者は、思いのほか近縁な関係にあるのです。
山上での撮影に手間取り、下山時には日が暮れかけていました。途中からは、ヘッドランプで急坂の登山路を照らしながらの下降です。大きなガレ場に差し掛かったとき、斜面に咲くエゾアジサイに出会いました。茎が地を這い、大きく鮮やかな花の群れが、白い砂上一面を埋め尽くしています。それはもう、筆舌に尽くし難い素晴らしさなのだけれども、いかんせん、日はとっぷりと暮れています。写真撮影は無理。後ろ髪を引かれる思いで、後にしたのです。いつかまた、この究極のエゾアジサイを写しに、再訪したいと考えています。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ④
画像は、エゾアジサイ 長野県白馬鑓ヶ岳(白馬鑓温泉)。
エゾアジサイは、北海道南部・東北地方から、新潟県辺りにかけては、透明な青色の装飾花・正常花からなる花序と、薄く大きく幅広く、濃緑色の葉を備えた、典型的な個体群が見られます。
しかし、北陸地方や信州の内陸部に入ってくると、ヤマアジサイとの関係が微妙になってきます。北アルプス北部の白馬岳東面は、日本海へ直接流れ出る姫川の水系、この辺りまでは、典型的なエゾアジサイのようです。日本一標高の高い(2100m余、北八ヶ岳の本沢温泉と日本一の座を競っている)温泉として知られる、白馬鑓温泉(温泉といっても、山の中に簡素な露天風呂があるだけ)からの下山途中に出合った写真の個体も、典型的なエゾアジサイ。この辺りが、典型エゾアジサイの南限のように思われます。
日本および近隣地域の野生アジサイ Ⅲ ⑤
画像は、ヤマアジサイまたはエゾアジサイ 長野県北アルプス常念岳(一ノ沢)。
しかし、北アルプス周辺域でも、中部以南の梓川(信濃川)流域になると、少々様相が異なってきます。エゾアジサイとも、ヤマアジサイとも、判断がつかぬ個体が出現し始めるのです。
この写真(予告編の5に同じ)は、ある年の夏、常念一の沢を遡行して、常念乗越2450mに、高山蝶を撮影に行ったときの副産物です(1986.8.6)。この常念一ノ沢コースは、山麓から歩いて北アルプスの高山帯に至る登山路としては、最も楽なコースの一つだと思います。行程の前半は沢沿いの道、後半は急坂。常念小屋のすぐ手前で、高山帯に出ます。
登山口からしばらく進んだあたり、樹林の中の湿った岩肌沿いに、純白の花を満載した背の高いノリウツギと、濃い青色の正常花が鮮やかなヤマアジサイが、並んで咲いていました。装飾花は白(うっすら青味を帯びている?)。葉は、典型的エゾアジサイに比べて、やや明るく細長いような気がします。ヤマアジサイなのか、エゾアジサイなのか、意見が別れるところです。