功夫電影専科

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『被迫/精武指』

2012-04-25 22:17:36 | バッタもん李小龍
被迫/精武指
英題:Last Strike/Soul Brothers of Kung Fu
製作:1977年

▼香港や台湾には李小龍(ブルース・リー)のバッタもん俳優が数多く存在しますが、彼らはバッタもんに徹し続けたわけではありません。巨龍(ドラゴン・リー)は90年代からヤクザ映画へ出演するようになり、悪名高い石天龍(ドラゴン・セキ)も現在はノーマルな俳優に転向したと聞きます。
一部を除けば、この手の俳優は全員が偽物としての人生に終止符を打っています。バッタもんはブームが過ぎれば消えゆくだけの、脆くて儚い存在です。全てが過ぎ去っても生き残れるのは、呂小龍(ブルース・リ)みたいなバイタリティを持った者か、新たな道を切り開いた李修賢(ダニー・リー)のような者しかいないのです。
 ところが、偽物として活動中だった最中に脱却を試みた男がいます。何宗道(ホー・チョンドー)は李小龍のバッタもんであることを良しとせず、様々な作品に出演しました。ですが、彼はバッタもん俳優から完全には足を洗えず、功夫スターにもなりきれないまま映画界を去ってしまいます。
しかし彼の孤独な奮闘は、結果的に隠れた秀作を生み出すに至りました。本作で何宗道は莊泉利(ビリー・チョン)の主演作を始め、数々の傑作を作り出した恒生電影有限公司とタッグを結成。バッタもんとしてではなく、あくまで功夫スターとしての力量をアピールしたのです。

■何宗道・歐陽佩珊羅莽(ロー・マン)の3人は大陸から来た密入国者。成功を夢見て香港に渡り、3人そろって貧しくも楽しい共同生活を送り始めた。ある日、何宗道たちは職場で苛められていたカール・スコットを助けたが、苛めた連中の仲間である谷峰(クー・フェン)との間に遺恨が生まれてしまう。
この遺恨、その後も運悪く悪化の一途を辿っていくこととなる。羅奔が悶着を起こした賭場が谷峰の経営する店だったり、何宗道が出場した格闘大会で倒した相手が谷峰の愛弟子だったり…。これに激怒した谷峰は、自陣のアレクサンダー・李海生(リー・ハイサン)・陳龍の3人を差し向けた。
敵の報復によって歐陽佩珊は殺害され、何宗道も手傷を負った。彼は復讐を決意して修行を開始するが、羅奔が谷峰の仕掛けた罠に引っかかり、2人の友情に亀裂が生じていく。戦いは激化し、何宗道が李海生ら3人を撃破するも、リベンジとばかりに谷峰一味が彼の自宅を襲撃。幾多の死闘を経て、対に何宗道VS谷峰の直接対決が始まる!

▲ストーリーは陰惨ですが、何宗道の持ち味である伸びやかな動きが生かされている作品です。本作では徐蝦と袁祥仁が武術指導を担当し、絡み役には袁信義・袁日初・元奎・徐忠信なども参加。何宗道のアクションは武術指導によって出来が左右されやすいのですが、本作では流れるような激しいファイトを演じています。
また、作中ではところどころに李小龍的な要素を含んでいるものの、それらは物語やアクションのアクセント程度に抑えられています(李小龍っぽい戦いもVS陳龍だけ)。あくまで本作は何宗道自身のポテンシャルを重視しており、ラストの何宗道VS谷峰もなかなかの激闘に仕上がっていました。
 ただ、復讐だらけの陰惨なストーリーだけはどうにかしてほしかったと思います。何宗道の本気・豪華共演陣・充実した武術指導スタッフなどのお膳立てが揃っているのに、復讐されたら復讐しかえすだけの粗末な物語では、盛り上がるものも盛り上がれません(涙
ここは同じ恒生電影の何宗道主演作である『打出頭』と『不擇手段』に期待…かな?

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