功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ブルース・リの復讐』

2010-04-26 22:29:37 | バッタもん李小龍
「ブルース・リの復讐」
原題:凶終/猛龍反撃
英題:Bruce Strikes Back/The Ninja Strikes Back/Eye of the Dragon
製作:1982年

●単刀直入に言おう、この作品は傑作である。映画作品としては三流レベルだが、あくまで呂小龍(ブルース・リ)の主演作として見るならトップクラスの物と断言しても良い。いつもならナルシズムしか無い呂小龍作品だが、それほどまでにバラエティに富んだ作品なのである。
かつてマフィアの一員だった呂小龍は、ムショから出所したのを契機に足を洗ったが、当のマフィアはそれを許そうとはしなかった。彼らは非情にも呂小龍の父親を殺し、その妹をも連れ去ってしまう。これに激怒した呂小龍は、組織の用心棒たちを相手に世界を駆け巡る!というのが本作のあらましである。いつもの呂小龍作品らしく、実に荒唐無稽かつ一人よがりなストーリーだが、映画そのものはそれほど悪くはない。
 まず驚かされるのが、作中でたびたび登場するローマの風景だ。粗製濫造がまかり通っているバッタもん作品にしては珍しく、実際にローマでロケーションが行われており、ラストでは本物のコロセウムまで登場する。しかも、無謀にもラストではコロセウムで実際にアクションシーンを撮影しており(もちろん無断撮影!)、まさにこれは香港映画史に残る暴挙と言っても過言ではないだろう(笑
この場面は、単なる偽物でしかなかった呂小龍が一瞬だけ本物を越えたシーンとして評価すべき所だが、思ったよりロケーションの効果は発揮されていない。なぜなら、照明などが完備されているセットで撮ったのと、薄暗い石組みの路地で撮ったのでは、どちらが視覚的に映えるものとなるかは一目瞭然。ちょっと惜しい気もするが、まぁ所詮バッタもんはバッタもんですからねぇ…(苦笑
 また、一方でキャスティングにも力が入ってるのが本作の特徴で、製作元のフィルマークも随分と奮発していた様子が伺える。組織の用心棒に黄正利(ウォン・チェン・リー)&楊斯(ボロ・ヤン)といったバッタもん映画の常連を配したかと思えば、『007』のハロルド坂田を起用して国際色を強調。香港パートでは呂小龍の協力者として[上下]薩伐(カサノヴァ・ウォン)と趙志凌(すぐ死ぬ)が顔を見せ、作品の底上げに貢献している。
フィルマークらしくニンジャやおっぱいがポコポコ登場するものの、功夫アクションも(呂小龍作品にしては)上出来だ。特にラストの呂小龍VS黄正利は出色モノで、過去に何度か戦ってきた両者としては今回のバトルがベストだったのではないだろうか?しかもこのシーンはゲリラ撮影だったので、スタッフ一同はコロセウムに長時間留まることは出来なかったはず。となれば、このバトルは文字通り一発撮りの大勝負だったことが考えられる(このへんのエピソードがマジで気になります)。
 豪華ゲストあり・ローマロケあり・ニンジャあり・オッパイありと、極めてサービス精神旺盛な呂小龍の最高傑作。バッタもん作品が気になる方は、是非とも本作から視聴してみる事をオススメ致します。…ただし、あくまで本作は「呂小龍作品として傑作」だという事を念頭に置いとかないと、後で泣きを見るかも知れません(爆

最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アニメ制作協力 タツノコプロ(嘘)  (白扇仔)
2010-04-28 23:05:31
龍争こ門様こんばんわ

呂小龍主演作品として最高傑作ですかぁ・・・
自分は、彼の主演作はコレと「クローン人間ブルース・リー」しか見てないんですが、彼の主演作を沢山見た龍争こ門様がそう仰るとなると、他の作品はもぉどーしよーもないシロモノなんですかねぇ・・・ 
しかも黄正利とのバトルも今回のがベストと来た日にゃあ、黄正利目当てでこいつの他の主演作を見る価値も無さそーですね。
まぁ元々こいつのナルっぷりにはムカついてたし、今後こいつの作品を見る時間や金の無駄も省けてイイことかも知れませんねw

それにしてもボロやんの背中毛が気になって仕方ありませんでした。
普通体毛があそこまで髪の毛ばりに密集して生えるとゆーことはまず考えられず、あれは物語的に意図があってのことと思われるのですが、あの毛に関する言及のよーなシーンは無かった気がします。自分が見たのは日本版Vですが、龍争こ門様が見たやつではどうでしたか?

この作品を語る際にやっぱり外せないのが“X-Rayバイオレンス”のシーンですw
黄正利や傘NOVAやボロやんの活躍で、レンタル代は損しなかったとは思ったこの作品ですが、このシーンを見たとたん「見てよかったぁー!」を感じましたw
心臓が止まる描写のアニメなんか ラブリーとすら思いました(マジで)よ。


あと、この作品の話ではないんですが『必殺!バトルロード 妖剣女刺客』のレビューで岸本さんに言及されてましたね。自分はこの作品未見なんですが、龍争こ門様があんなに褒めてるうえ、役柄的にも良さそうなので、いずれチェックせなあかんなぁを感じました!


あと(PART 2)、塚原さんが教えてくれた動画サイトに、ゲイリー・ダニエルズ主演で、角材先生(山下タダシ)、マーク・ルッソ(龍争こ門様未見の「ブラッド・ブラザース」で大活躍するヒゲ男)が出演している「Capital Punishment」があったので早速見ました。
角材先生は、受け方捌き方の動作がカックイイなぁ~を感じました。
詳しい感想については、龍争こ門様がレビュー(?)された時に、とゆーことで。
返信!(2) (龍争こ門)
2010-05-01 01:16:18
白扇仔さんこんばんは&お待たせしました!

>他の作品はもぉどーしよーもないシロモノなんですかねぇ・・・
モノによっては映画の体裁すら整っていない作品もありますからね。『忠烈精武門』『Bruce's Fist of Vengeance』『死亡魔塔』なんかは恐ろしい怪作でした(一応擁護しておくと、『大報復』や『ミッション・ターミネート』のように幾分かマシな作品にも出てはいます)。

>自分が見たのは日本版Vですが、龍争こ門様が見たやつではどうでしたか?
私が視聴したのも日本版のビデオだったんですが、いかんせん随分と前の話になるなので(今回のレビューは過去に書いたものを再構成したものです)、楊斯の毛までは覚えていません。
ただ、悪乗りしまくったパッケージには笑ってしまいましたし、ラストバトルのアレにも度肝を抜かれました。ここまで楽しめる呂小龍作品もそうそうありません(笑

>『必殺!バトルロード 妖剣女刺客』
欲を言えば、悪人たちの悪事をねっとりと描きすぎな気もしますし、最後にタイマンを張るような強敵が出てくる訳でもないのですが、オードソックスな佳作といった感じの作品でした。
アクション的には続編の『2』が面白いのですが、両方合わせて前後編みたいな構成になってますので、まとめて見た方が良いかもしれません(岸本のアクションも続編の方が良かったかも)。

>「Capital Punishment」
おお、こんな魅力的なキャストの作品があったんですね。私は「ネットで映画を見るのは頂けない」主義でしたが、以前白扇仔さんに動画サイトでの視聴を勧めたり、過去にはネットで映画を視聴したこともありますので(『龍虎八拳』はGyaoで見ました)、もうこうなったら……いっそのこと行っちゃおうかな?(爆
「季小籠(非不“李”)的復讐」 (白扇仔)
2010-05-10 22:55:13
龍争こ門様カンバンワ

>『ミッション・ターミネート』のように幾分かマシな作品

それは見ましたが主演ではないと考えたんで外してました。「リの復讐」よりそっちのVS黄正利戦の方が良かったと思います。

>楊斯の毛までは覚えていません。

そーでしたか。腰の上あたりの背骨沿いに、亀の子タワシを縦に2個つなげたようにビッシリ生えてたんですよ。

>悪乗りしまくったパッケージには笑ってしまいましたし、

これほどあからさまにバッタもんダァ-! と謳ったジャケだと かえって好感が持てましたw
チック・ノリスって日本で勝手に付けた名前みたいですね。それに該当しそーな白人は全然似てなかったし。


あと、横レスですが
「ブラッドチェイス」の江島ですが、出番は(2シーンくらいで)短いですが、一応格闘あります。
カレン・シェパードの格闘シーンは、絡みの人とタイミングを計りかねている場面が多々見られて苦笑でした。
格闘シーンはたくさんあったんだけど、全般的に絡みの相手たちのレベルが低過ぎたせいで、彼女の持てる実力をあまり発揮出来てなかったみたい。


それと、全然関係ない話ですが、サントリーの「黒烏龍茶」のCMに出てくるヘンな髪型のデブのおっさんはサモハンだったんですね。
サモに襲い掛かる二人の内、黒い服は盧惠光のようでした。
返信!(2) (龍争こ門)
2010-05-11 22:42:05
白扇仔さんこんばんは!

>「リの復讐」よりそっちのVS黄正利戦の方が良かったと思います。
『ミッション・ターミネート』は狄威と闘っていましたね。黄正利とは同じ監督が撮った『ザ・フューチャー・ハンター』で対戦していますが、こちらはなかなかの好勝負でした。一瞬ですが、ロバート・パトリックVS黄正利が実現している点も興味深いです。

>「ブラッドチェイス」の江島ですが、出番は(2シーンくらいで)短いですが、一応格闘あります。
 情報ありがとうございます。こういうマーシャルアーツ映画に、香港の俳優が出ていると(例え俳優がビッグネームでなくとも)ますます興味が湧いちゃいます。
それにしても、カレン姐さんはあまり作品に恵まれていないイメージがありますね。もうちょっと香港に長居していたら違っていたかも知れませんが、『アンダーカバー炎の復讐』くらいしか良作と呼べる作品が無いというのも寂しい気がします。

>サントリーの「黒烏龍茶」のCM
これは私も「おおっ!?」と思いましたね。どことなく『プロジェクトA』のフェイを思わせる格好をしていたので、なんとなく嬉しくなってしまいました。
襲いかかってくる2人組のうち、1人は仰る通り盧惠光なのですが、もう1人は聞いた話によると李志傑(洪家班の古参メンバー)だそうです。
やってもぉたぁ~   (白扇仔)
2010-05-12 22:43:17
龍争こ門さまカンバンワ

>黄正利とは同じ監督が撮った『ザ・フューチャー・ハンター』で対戦していますが、こちらはなかなかの好勝負でした。

そーーーーーでした!(腋汗ビッショリw
自分はコレと『ミッション・ターミネイト』を取り違えて書いていました。よって、あの文は『ザ・フューチャー・ハンター』の感想とゆーことで、読み直して下さい。
で『ミッション・ターミネイト』の方も見てまして、呂が李小龍のマネをやってなかったんで不快感はありませんでしたね。狄威の動きはこれといって良くも無く悪くもなく、といった感じでした。

>もう1人は聞いた話によると李志傑(洪家班の古参メンバー)だそうです。

やっぱ僕の知らない人ですw

と、訂正の書き込みのついでに。
こないだ、なじみの古本屋でジャケ無しの『ロードハウス 誓いのカクテル』を見つけ、タダでもらいました(
まだ見てません)。
あとCSで『新宿インシデント』見ました。見終わったあと、どよ~んとなる作品でした。
返信!(1) (龍争こ門)
2010-05-14 23:19:48
白扇仔さんこんばんは!

>呂が李小龍のマネをやってなかったんで不快感はありませんでしたね。
 私はこれが呂小龍初接触となったのですが、当初は「あんまり華のない人だなぁ…」などと思っていましたが、後々になってそれどころではない奴だと思い知りました(苦笑

>『ロードハウス 誓いのカクテル』
>『新宿インシデント』
 前者は私もレンタル落ちのビデオを所有していますが、後者はまだ未見です。『ロードハウス』はなかなかの格闘アクションが見られるそうなので、いつかは目を通そうと思っています。
一方、『新宿事件』は敬遠しているので見ていません。香港ノワールの食わず嫌いが最大の原因なのですが…(未だにノワール作品は呉宇森の諸作をチラ見した程度の経験値しかありません・恥)。
衝撃のラスト! (亜州影帝)
2010-06-02 16:58:18
こんにちは。

かなりお久しぶりです。
最近、また功夫映画(未公開作品)をちょっとずつ観始めたんで、今月の特集楽しみにしてますね。


ソックリさん李小龍作品はほとんど観ないジャンルなんですけど、この作品はマシだったような気がしました。
いつ観ても李小龍には似ていないなぁと思ってしまうのと(苦笑)、掛け声(英語吹き替え版)がショボイなぁと。。


功夫アクションについてはまあまあですかね。
特に凄いシーンは見当たらなかったですけど、最後のVSウォン・チェンリーは笑ってしまいました。
あれって「ロミオ・マスト・ダイ」よりも先取りですよね(笑)
肋骨抜き取りは「北斗の拳(修羅の国編)」のカイゼルの技かよっ!ってツッコミながら、見終わってもニヤニヤしてしまいました。まさかアニメになるとは思いもしませんでしたね。。。
ゴールドフィンガーとかも面白く、ある意味傑作でした(笑)


カサノバ先生の蹴り技がほとんどなかったのが残念でした。
返信! (龍争こ門)
2010-06-04 22:50:18
亜州影帝さんこんばんは&お久しぶりです!
今回のアレは特集ではなく、ブログ全体の方針転換みたいなものであります。なので、しばらく香港映画オンリーの更新になります。

>この作品はマシだったような気がしました。
 バッタもん作品は酷いものが大半を占めていますからねぇ…。全体的に、日本でリリースされているバッタもん作品は良質なものが多かったと思います。

>最後のVSウォン・チェンリーは笑ってしまいました。
>あれって「ロミオ・マスト・ダイ」よりも先取りですよね(笑)
 一応『必殺仕置人』よりは遅かったと思いますが、あれは本当に爆笑モノでしたね。ちゃちなアニメーションもさることながら、心臓が「ハート形」だったのも見逃せません(笑
ハロルド坂田の飛んでいく爪もそうですが、本作にはこういった「笑って許せる稚拙さ」があるので、ショボくても愛嬌が感じられます。そういった点から考えても、間違いなく本作は呂小龍の傑作と呼べるでしょう。

>カサノバ先生の蹴り技がほとんどなかったのが残念でした。
 単なる顔見せのゲスト出演程度だったのが惜しいですね。せっかく黄正利と共演しているのだから、両者の蹴り合戦なんかが実現していたら最高だったと思います。

コメントを投稿