功夫電影専科

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『餓虎狂龍』

2007-08-03 23:17:58 | 倉田保昭
餓虎狂龍
英題:Tiger Vs Dragon/Kung Fu The Invincible Fist/The Good and the Bad
製作:1972年

▼以前絶賛した呉思遠(ン・シーユェン)監督の『雙辣』。その記事の中で少しだけ触れましたが、本作は氏の初期作品の中でも注目すべき作品です。
まず監督はブレイクしたての陳星(チェン・シン)と倉田保昭にタッグを組ませ、2人の実力を引き出すために新進気鋭の梁小龍(ブルース・リャン)を武術指導に任命しました。
 彼らの出会いは、前作『蕩寇灘』で培われたマラソン・バトル(延々と走っては戦うスタイル)を大きく発展させ、より躍動感に富んだファイトシーンへ進化させていく事になります。また、呉思遠は主役2人を引き立たせるドラマもちゃんと用意し、万全の体制で撮影に臨んでいったのです。
――ところでこれは全く関係のない話なんですが、当方は陳星の主演作を見るのはこれが初めてだったりします(笑

■物語は、日本軍の将校が“餓虎”と呼ばれる空手道師範・倉田を尋ねる場面から始まる。彼は将校から「中国の上海に潜入してくれ」と依頼された。将校はこれを足がかりに中国侵攻を企てているらしく、お国のためにと倉田はこれを承諾する。
一方、中国軍の高官である陳星は「上海で暗躍している組織を秘密裏に壊滅せよ」との命を受け、部下の黄元申とともに危険な潜入捜査に挑んでいく。実はその組織に倉田が潜り込んでおり、用心棒としてボスや幹部の陳元・陳惠敏(ムチャクチャ若い!)の信頼を得ていた。
 陳星たちはわざと騒ぎを起こし、まんまと組織への売り込みに成功。ひそかに捜査を進めていくのだが、抜け目のない倉田の視線までは誤魔化せなかった。一時はあわやという所まで追いつめられるものの、以前助けた韓國才(ハン・クォツァイ)たちの機転によって救われるのだった。
ところが韓國才の仲間であるスリが、たまたま倉田の仲間から日本軍の侵攻計画書を盗んだため、事態は急展開を見せる。陳星たちは仲間と協力し、本性を現した倉田と地図の争奪戦を展開していくが…!?

▲本作は抗日要素を含んだ作品ですが、呉思遠は2人の男によるシリアスな駆け引きを見事に描いており、単なる抗日功夫片で終わらせていません。当時は『ドラゴン怒りの鉄拳』の影響を受けた作品が多く、抗日に拘らないオリジナリティあふれる映画作りからは、監督の強い独創性が見て取れます。
さて、そうまでして描かれた陳星と倉田のバトルなんですが、これがまた凄い!最初は潜入捜査という事でアクションも小出しでしたが、いざ対決となる終盤からは一気にアクセルが踏み込まれ、延々と2人のドツキ合いが続いていくのです。
 倉田が自著で「もういい加減にしてくれ」と言っていたのも納得の内容で、殴っては走り蹴っては走り、陳元たちが参戦してまた走り、最後は波止場で闘って走るというムチャクチャな戦いが展開されます。やがてサイとトンファーのつばぜり合いとなるも、まだまだ戦いは終わりません!(爆
こちらにまで伝わってきそうな熱気と、果てしなく続くアクションに圧倒される功夫映画の傑作。ストーリーにも抜かりは無く、「やはり呉思遠は魅せてくれるなぁ」と改めて思いました。こうなると梁小龍を相手にしたマラソン・バトルも気になるところですが、それはまた別のレビューにて!

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