功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『蕩寇灘』

2008-02-23 20:23:33 | カンフー映画:佳作
蕩寇灘/死亡灘
The Bloody Fists/Death Beach/Deadly Buddhist Raiders
1972

●傑作の『餓虎狂龍』でも素晴らしいワークを見せていた、呉思遠&陳星(チン・セイ)による功夫片である。『ドラゴン怒りの鉄拳』によって抗日功夫片が多く作られ、『餓虎狂龍』でも同様に抗日的な要素を含んだ作品を作った呉思遠だが、他の作品のように「右へ倣え」というような作品は作ってはいない。やはり呉思遠、このへんは流石だ。
悪党の陳星は警察の手から逃れながら、とある寂れた町へとやって来た。ここではちょうど日本人たちが進出してきているところで、于洋(ユー・ヤン)ら町の若者は突然現れた異邦人に動揺を隠せない。手始めに町の功夫道場が日本人たちの嫌がらせを受けたが、ワッキーっぽい顔の山怪や赤い胴着の方野には敵わなかった。
さて、ここで首領を演じているのは、あの陳觀泰(チェン・カンタイ)だ。当時はショウブラにいたはずだが、同じくショウブラにいた呉思遠の繋がりで無理を押して出演したのだろう。その証拠に、一部の場面で別人がスタンドインを演じている(劇中、陳觀泰は顔半分をマスクで隠しているが、目鼻立ちが違うので別人だとすぐ解る)。
陳星は町で聾唖の韓國才とその祖父(『燃えよドラゴン』の李小龍の父親役だった人)に出会い、暖かく迎え入れられるが、町が一大事になっていることを知り、人知れず立ち去ろうとする。しかし、こっそり于洋の加勢をしていたことを陳觀泰に見抜かれ、陳星は陳觀泰たちの挑戦を受けた。陳星は方野たちを圧倒して立ち去るが、道中で病に倒れ、再び韓國才に助けられた。人の温かさに触れ、その目に涙を浮かべる陳星だが…。
一方、町では于洋の仲間が殺され、人々が虐げられていた。于洋が捕まりその妹も乱暴され、韓國才とその祖父は日本人たちの毒牙によって命を落としてしまう。今まで逃亡者の身ということもあり、韓國才たちにも迷惑をかけまいとしていた陳星も、ここに及んで怒りを爆発!陳觀泰らとの死闘に望む!
話としては非常にシンプルで、要は「流れ者が日本人を倒す」だけの話であり、陳星と于洋ら町の人間らとの関わりもほとんど無い。他と違う事をしようとして工夫を凝らしたのは察することができるものの、作品自体はあまり評価に値するものではないと言える。だが、こと功夫アクションについてはやたらめったら激しく、野性味溢れる陳星の立ち回りは迫力満点。共にパワーファイター系である陳星VS陳觀泰というバトルも、製作年度を抜きにしてもかなりのものだ。
武術指導は当時新鋭だった袁和平が担当しており、彼にとっても初期の武術指導としてはベストなのではなかろうか?これの発展系が『餓虎狂龍』と考えると、なんとも感慨深いものを感じずにはいられません。無法者として生き、英雄として最後を飾る陳星の姿に心打たれる快作。必見です。

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