功夫電影専科

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中国産功夫片を追え!(1)『武當』

2017-08-15 23:50:46 | カンフー映画:佳作
武當
英題:The Undaunted Wudang/The Wu Tang
製作:1983年

▼今や世界の映画市場を席巻し、ハリウッドをも脅かしかねない存在となった中国映画界。その勢いは止まるところを知らず、CGを駆使した大作映画がひっきりなしに公開され続けています。
アクション映画においても数多くの話題作が存在しますが、当方は香港映画にばかり執着していたため、中国アクションの過去や旧作功夫片についての知識はサッパリでした(苦笑
 そんな私の一助となったのが、今年の5月に発売された「激闘!アジアン・アクション映画 大進撃」(洋泉社刊)です。この書籍は香港映画のみならず、中国・韓国・タイといったアジア圏全体のアクション映画が網羅されています。
無論、私の知りたかった中国アクション史についても触れられていて、武侠片の源流や何度となく政府の検閲が入った事など、詳細な情報が掲載されていました。
 そこで今月は、にわかに興味が湧いた中国産の功夫・武侠片…それも『少林寺』以降に作られた未公開作に限定し、何本か紹介していきたいと思います。
この時期の作品は日本でも幾つか公開されており、『武林志』『三峡必殺拳』などがソフト化されました。しかし、日本上陸を果たさなかった作品の中にも隠れた名作・佳作があるはず! という訳で、今回の特集ではそうした作品に着目していく予定です。

■(字幕ナシで観賞したのでストーリーは多少推測が入ってます)
 19世紀末の中国では日本人が幅を利かせており、主宰する武術大会で子飼いの空手家たちを暴れさせていた。
そんな中、高名な武當派の拳士・王曉忠が日本人の毒牙にかかり、弟子の林泉(広東省出身の女性武術家)・趙長軍(詳細は後述)・李宇文(広東省武術隊所属)・唐亞麗(陝西省武術隊所属)たちは雪辱を誓った。
 程なくして趙長軍たちはリベンジマッチに挑み、勝負を有利に進めていく。が、敵が隠し持っていた暗器によって李宇文が死亡。故郷で帰りを待ちわびていた唐亞麗は落涙し、もともと体の弱かった林泉は体調を崩してしまう。
仲間たちの間に不穏な空気が漂う中、今度は林泉の後見人?だった臧治國が不穏な動きを見せ始める。政府の役人たちと接触した彼は、密かに日本人と結託。時を同じくして林泉たちを襲撃する謎の一団が現れ、趙長軍は真相を探るべく1人で出立する。
 どうにか後を追おうとする林泉だが、刺客の1人・鞏鐵鏈から衝撃的な事実を知らされる。刺客を指揮していたのは臧治國であり、王曉忠を殺した張本人こそが彼なのだ…と。彼女は臧治國の元から脱出し、どうにか武当山へと辿り着いた。
自らを鍛え、全ての決着を付けたいと懇願する林泉の願いを聞き入れた道長・馬振邦(韓明男と共に武術指導も兼任…陝西省武術隊にて趙長軍を育て上げた中国武術界の重鎮)は、厳しい修行を施していく。
やがて修行を終えた林泉は、兄弟子を死に至らしめた日本人たちとの再戦に臨んだ。敵は臧治國一派を介入させるが、そこに趙長軍や唐亞麗たちが駆けつけ、今ここに最終決戦の幕が上がる! 果たして勝つのは正義か、悪か!?

▲本作は先述した「激闘!~」にも名前が挙がっていた作品で、恐らく『少林寺』のヒットに触発された製作サイドが「向こうが少林ならこっちは武當だ!」みたいな感じで作ったものだと思われます(爆
しかしキャスティングに抜かりはなく、李連杰(リー・チンチェイ)に対抗する主演格(正確には実際の主演は林泉なんですが・汗)として抜擢されたのは、彼と同時期に活躍した本物の武術家・趙長軍でした。
 彼は10年に渡って中国武術界の王者として君臨し、獲得した金メダルの量は54枚を数えるという凄まじい経歴の持ち主。洪金寶(サモ・ハン)や甄子丹(ドニー・イェン)とも交流があり、現在は多数の武術団体や関係組織で要職に就いているそうです。
彼以外にも高名な武術家が多数動員され、本物の武当山などでロケーションを敢行。フォロワー作品としてはかなり頑張っている本作ですが、世界的な知名度では『少林寺』に随分と差を付けられています。

 その原因はストーリーとアクションのそれぞれにあります。まずストーリーですが、本作は功夫片にありがちな復讐と特訓の物語を実直に描いており、一定の質は保たれていました。
ただし、あくまでエンタメに徹していた『少林寺』に対し、本作は作りがやや真面目すぎた感があります。臧治國へのトドメも地味だし、仇の1人である日本人もラストで死なずに逃げ出してしまうため、あまり爽快感が得られないのも難点といえるでしょう。
 アクションシーンについては、趙長軍を筆頭とした武術家たちの動きは本当に素晴らしく、ラストの林泉VS趙秋榮(オランダ精武會という団体でMMAの指導をしている同名の人物がいるが本人かどうかは不明)などで、丁々発止の攻防戦が楽しめます。
一方でカット割りが粗雑で、戦っている人物の位置関係がおかしくなっていたりと、演出面においての不備がいくつか見受けられました。また、『少林寺』でも表演をそのまま持って来たような殺陣がありましたが、本作でもその傾向が強く出ています。
 単独の功夫片としては良作の部類に入るものの、娯楽作としての魅力に乏しく、これで『少林寺』に対抗するのは無理があると言わざるを得ない本作。ギャグやお色気描写もまったく無いので、香港映画を見慣れている方ほど味気なく感じてしまうかもしれません。
さて次回は、趣向を変えてスポーツアクション映画が登場! 元彪(ユン・ピョウ)や周星馳(チャウ・シンチー)もビックリなその作品とは…!?

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