功夫電影専科

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メジャー大作を振り返る:香港編(3)『燃えよデブゴン』

2016-04-21 21:01:34 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「燃えよデブゴン」
原題:肥龍過江
英題:Enter the Fat Dragon
製作:1978年

●片田舎に住む洪金寶(サモ・ハン・キンポー)は李小龍(ブルース・リー)の大ファン。今日も豚を相手に自慢のカンフーを見せ付けていたが、香港にいる叔父の馮峰(フォン・フン)から「うちの店を手伝ってくれ」と頼まれる。
彼は渋々と大都会に向かうが、おっちょこちょいな性格が災いして失敗ばかり。そんな中、マフィアが馮峰の息子である陸柱石に目を付けてしまった。画家志望である彼の腕前を利用し、美術品の贋作製造をさせようというのである。
 マフィアのボスである喬宏(ロイ・チャオ)は、教授の楊群(ピーター・K・ヤン)と共に贋作を売りさばくつもりだったが、陸柱石はこれを拒否。その報復として嫌がらせが続き、洪金寶の務めていた店が潰されてしまう。
彼は家出した陸柱石と一緒に職を転々とするが、そこに知人である李海淑が誘拐されたとの一報が舞い込む。これは彼女をモノにしようと企む楊群と、それに協力する喬宏の仕業だった。
果たして洪金寶たちは、連中の悪事を止めることができるのだろうか!?

 今や香港映画界の重鎮となった洪金寶ですが、彼の代名詞といえば何と言っても“デブゴン”でしょう。本作はその語源となった作品で、彼にとっては初めてメガホンを取った現代アクションでもあります。
プロットや原題は『ドラゴンへの道』に倣っているのですが、洪金寶の演出はそれと感じさせないものとなっており、彼らしいスラップスティックな喜劇に仕上がっていました。
 作品のテイストに関しては『福星』シリーズに近く、本筋を無視したギャグの箇条書き(笑)が延々と繰り広げられます。しかし本作最大の見どころは、やはり主人公による李小龍のモノマネに尽きます。
そのなりきり度は凡百のバッタもんを遥かに凌駕しており、オープニングの演武では『ドラゴンへの道』の殺陣をカメラワークも含めて徹底的に再現。もちろん劇中でも李小龍アクションは炸裂していました。
 圧巻なのはラストの三連戦で、存在自体がギャグにしか見えない黒人役の李海生(リー・ハイサン)と白人ボクサー、そして功夫使いの梁家仁(リャン・カーヤン)と熾烈な戦いが展開されます。
ここでも立ち回りのベースは『ドラゴンへの道』ですが、最後のVS梁家仁ではコテコテの功夫バトルに切り替わり、棍や鉄輪を用いた巧みなアクションが堪能できました(ただ、最後まで李小龍のモノマネを楽しみたかった人には、ちょっと期待外れかも)。

 最初から最後まで李小龍に対するリスペクトに溢れ、それでいて自分の作風も貫き通した洪金寶。本作における彼の演技からは、偉大なるドラゴンに対する敬意の念、そして李小龍を演じるのが楽しくて仕方ないという楽しさが伝わってきます。
それだけにバッタもん映画の撮影現場で「俺の理想を壊してくれるな!」と吼える姿は強く印象に残りました(横行する粗悪なバッタもんに対する憤り、のちに彼自身も巻き込まれた映画界の闇を踏まえて見ると、何とも言えない生々しさを感じます)。
さて次回は、香港映画の潮流を変えた重要な作品が登場! 宮中から消えた秘伝書・葵花寶典を巡る剣士たちの戦いに迫ります!

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