功夫電影専科

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【Gメン75in香港カラテ④】『香港カラテ殺人旅行』

2009-12-15 22:30:06 | Gメン75&82・香港カラテシリーズ
「香港カラテ殺人旅行」
製作:1980年

▼今回特集で取り上げる作品の中では、最も小規模なエピソードである。これは「香港カラテシリーズ」全体を見渡しても稀なことで、単発エピソードの回は極端に少ないのだ。ちなみにこの回は何宗道(ブルース・ライ)の再登場だけではなく、準レギュラーとして出演していた遠藤真理子・鳥居恵子ら水上姉妹の降板回なのだが、特にこれといって降板を匂わせる話ではない。
もっとも、『Gメン』という作品自体が降板などのエピソードをドライな捉え方をしているので、感傷的な要素は含もうとしなかったのだろう。だが、単発エピソードのためにわざわざ香港ロケを敢行したのは、彼女ら2人に対する別れの餞別のような意味合いも含まれていたのではないだろうか。

■遠藤真理子と鳥居恵子の2人は、3泊4日の香港旅行を楽しくエンジョイしていた。日本人の観光客らしくパシャパシャと写真を取っていたが、この行動が2人を事件に巻き込んでしまう。
難民街の付近で撮影をしていた遠藤は、知らぬ間に1人の男をファインダーに写していた。男は自分をカメラに撮った遠藤らを手下に襲わせるが、そこへ颯爽と"情報屋のドラゴン"こと何宗道が助けに入った。その後、写真を現像していて眺めていた2人は、数日前に千葉裕たちGメンが追っていた銀行強盗がカメラに収められていた事に気付く。
 この強盗・佐藤仁哉は、かつて千葉が交通機動隊に所属していた頃の同僚であり、千葉にとっても因縁深き男であった。2人の連絡で香港に飛んだ千葉と中島はるみだったが、既に何者かの手によって写真とネガは破棄されていた。とりあえず調査に乗り出した千葉は、難民街で佐藤の姿を見つけ出した。
しかしこの男、決して外道に堕ちたわけではなかった。佐藤は自身が退職するきっかけとなった交通事故で、顔に傷を負った吉岡ひとみを整形手術で元通りにすべく、資金繰りに奔走していたのだ。佐藤は現在、石橋雅史率いる香港シンジケートの傘下に入っており、あっという間に千葉は捕らえられてしまう。良心の呵責に苛まれる佐藤だが…。
 一方、千葉が行方不明になったことでGメンが本格的に動き出し、中島は遠藤・鳥居の2人と共に難民街へと潜入する。千葉は吉岡の手によって敵地から抜け出し、中島や駆けつけた何宗道と共に敵を蹴散らした。吉岡はこれ以上罪を重ねて欲しくないと、必死に佐藤へ懇願する。
石橋の元から去ろうとした佐藤だが、石橋は自分の組織をかき回した佐藤を放っておくはずが無かった。そのころ、遠藤と鳥居は残された時間を観光に活用していたが、佐藤が石橋によって撃ち殺される現場を目撃し、遠藤が捕まってしまう。
 敵のアジトに向かった千葉は冷たくなった吉岡と遭遇、銀行で強奪された金も発見された。香港シンジケートは遠藤を人質に佐藤が強盗で奪った金を引き渡せと言ってきた。Gメンの仲間や何宗道と合流した千葉は、旧友の命を奪った石橋らに対決を挑む!

▲人質と身代金の受け渡しというネタは、既に『Gメン対世界最強の香港カラテ』でやっているので二番煎じの感が強く、何宗道もアクションシーンのみの出演(『大福星』のジャッキーのような役柄が近いか)で、殺陣も技と技の繋ぎが荒々しく、精彩に欠けている。
しかしそれでも見ていられるのは、やはり個々の功夫アクションが決まっている点が大きいと思われる。本作の唯一にして最大の山場は、ラストにおける何宗道VS石橋雅史という異色のビッグマッチだろう。
 何宗道は様々な相手と戦ってきたが、一方の石橋は対戦相手に幅の無い男であった。彼が本格的にアクションスターとして歩み出したのは、『激突!殺人拳』における琉球空手の使い手・志堅原が最初であった。鋭い眼光と切り裂くような拳は、石橋を一気に空手映画の名悪役としてのし上げたが、これが彼自身の首を絞めてしまうことになる。
幾多の空手映画で猛威を振るい続けた石橋だったが、その素質の割りに対戦相手はいつもJACの関係者ばかり。千葉真一や志穂美悦子と飽きるほど戦った石橋だが、対戦した人数はそう多くなかったのだ。
 石橋がこうもJACの悪役としてもてはやされたのには理由がある。第1に、凄味のある悪役で空手のできる役者が彼以外にいなかった事。第2に、石橋の後進を成す悪役を輩出すべき立場のJACから、これといって大物の悪役が出てこなかった事が挙げられる(これらの理由によって、他のJACスターも同じ顔ぶれと闘わざるを得ない状況を生んでおり、JAC作品のマンネリ化を押し進める一因ともなった)。
そして、やっと石橋が部外の相手と拳を交わすようになったのは、Vシネ時代の到来した90年代に入ってからであり、ようやく阿部寛や清水宏次朗といった真新しい顔と出会えるようになっていった。が、既に石橋の全盛期はとうに過ぎ去っていた。
 そんな石橋に「香港カラテシリーズ」参戦の話が舞い込むが、最初の参加作品である『Gメン対香港の人喰い虎』では『女必殺拳』で共演済みの宮内洋の相手をしただけで、これといって印象に残る役ではなかった。そして遂に、今回やっと石橋は念願の対戦相手と邂逅を果たしたのだ、これが興奮せずにはいられるものだろうか(感涙)!結局、出来自体はそれほどでも無かった何宗道VS石橋雅史というこの対戦。しかし、この一戦に込められた思いは、決して軽いものではないのだ。
と、そんなこんなで何宗道の出番はこれまで。続いてはいよいよ"香港映画界最強の男"が、Gメンの世界へヌンチャクを携えて登場するのだが、続きは次回の講釈で…!

ハードボイルド『Gメン75』次の活躍は、『香港の女カラテ対Gメン』三部作をお送りします。

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