日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 えー前回にジニ係数の話で盛り上がってしまいまして、私も混ぜてもらって発言したかったのですが第一に忙しかったのと、コメント欄が長くなると読み込みに時間がかかってしまうということもありますので、ここで勝手にやらせて頂きます。独りで迎え酒を飲んでいる奴がいるとでも思って下さい(笑)。

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 ジニ係数なんて言葉を素人の私が振り回すのも面映いのですが、まずいえることがひとつ。前回のコメント欄で「電波小僧」さんが示して下さったように、現在の中国のジニ係数は諸説あるということです。前回のエントリーで私が引用した記事でも、

 ●「0.45」を超えている
 ●「0.45」に迫る勢い
 ●「0.45」

 と3つの値が出てきます。本当はもっと深刻だろうということで「電波小僧」さんが諸例をひいて下さいましたし、様々な「前科」からみてまずは「0.45」を疑ってかかるべきだと思います。「前科」の一例を挙げますと、例えば昨年のGDP成長率、国家統計局が弾き出した数字は「9.5%」なんですけど、各地区の報告に基づいて計算したら3.9ポイントも高い「13.4%」だったそうです。政府は「9.5%」説を採ったようですけど。

 ●「新華網」(2005/03/07/17:19)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/07/content_2663385.htm

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 ただ実勢は遥かに深刻だとしても、とりあえず私は国営通信社である新華社をはじめ中国国内メディアが警戒水域を突破した「0.45」という深刻な状態を公認していることを重視します。その上で、

「努力することによって、わが国は2010年のジニ係数を「0.45」という現在の水準で維持することが望めるだろう」

 ●数字による「十一五」展望
 http://news.xinhuanet.com/stock/2005-10/12/content_3606994.htm

 とはっきり言ってしまっていることに非常なる驚きを覚えました。だってそれじゃ現在と同じく「不調和」なままじゃないですか。それって「調和社会の実現は無理」って言っているようなものでは?……と、驚くままに書いたのが前回のエントリーです。

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 ジニ係数も一つの指標ではあるけれど……という「katze」さんの御指摘はその通りだと思います。確かにジニ係数だけでは見えてこないものがあると思います。で、私にとってジニ係数は、中国社会の「可燃度」を測るための目安です。部屋にガソリンをまいた、そのまきっぷりの度合いを示すものではないかと。

 タネ火を落としたときの燃え上がり方が違ってくる訳です。ジニ係数が高くなるほど激しく炎上するし、小さなタネ火でも炎を噴き上げる可能性が高くなるということになります。

 そのタネ火が何なのか、いつくるのかはわかりません。現状で考えられるのは党幹部の汚職、失業問題、失業から発展した重慶のようなデモ、あるいは物価上昇というのもあります。今年6月末に発生した安徽省池州市の都市暴動の発端になった交通事故(金持ちの車が自転車に乗った中学生に接触)のような、一見現在の社会状況とは無関係なものかも知れません(この暴動については無関係ではありませんが)。

 とりあえず、すでに「物のはずみでどうなるかわからない」状況に達しているとは思います。ですから私は中共政権がいつ潰れるかは予測できません。ただあと20年続くのであれば、そのときの中共は清朝末期のような、あちこちから喰い物にされて統治者としての実質を失った政権になっているだろうと思います。

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 貧困とか格差の源泉は、「在中国2」さんの御指摘のように「都市vs農村」だと思います。ただ中国の改革開放政策は当初は農村を潤す内容のものが主流でした。「働けば働くほど豊かになる」として農民の生産意欲を刺激し、余剰労働力の受け入れ口として郷鎮企業の設立などもありました。それが外資導入などで都市中心の発展へと足場を移していき、今では「三農問題」(農村・農民・農業)として農村は取り残された存在になってしまったのです。

 改革・開放の重点が都市に移ったあたりから対立軸が増えていきます。「都市vs農村」の他にも「沿海部vs内陸部」といった地域間格差、これには「上海vs広州」のような「沿海部vs沿海部」というケースもあります。同じ都市の中でも業種間格差があり、これも軽視できません。1989年の民主化運動の一因には「知識人の待遇が個人経営者(個体戸)に比べ非常に劣っている」ということもありました。そして伝統的ともいえる「官vs民」です。端的には汚職問題が挙げられます。

 前回書いたように、いま不労所得の伸び率が勤労所得を大きく上回っているという状況も、やがては新たな対立軸に発展していくと思います。

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 そういう様々な対立軸を「強権政治・準戦時態勢」(+子分である共青団人脈をどんどん地方のトップへと送り込む)によって中央の統制力を高めつつ、荒療治で対立の改善・解消を目指す、というのが発足当初の胡錦涛政権に対する私の見方でしたが、先の五中全会における公報(コミュニケ)、「ふわふわ感満載」と私が評したあの文章からは危機感・緊張感がすっぽりと欠落しています。

 それゆえ「ピリピリ」ではなく「ふわふわ」なのですが、要するに胡錦涛は危機感・緊張感を公報に盛り込む力を失ったのかも知れません。

 あるいは昨年9月の四中全会のピリピリ感あふれる公報は、「試用期間中だからまあ好きにやらせてやろう」ということだったのでしょうか。

 それで試用期間を経て「やっぱり胡錦涛の好きにやらせておいたら駄目だ」ということになったのかも知れませんが、いずれにせよ今回の「ふわふわ」公報は、胡錦涛政権には「強権政治・準戦時態勢」で荒療治を行う力がないことを示しているように思います。

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 格差(ジニ係数)が現在のままでも貧困層の生活が改善されればいいじゃないか、という考えもあるでしょうが、中国の成長モデルではちょっと成立しないのではないかと思います。

 無尽蔵な廉価労働力と格安の地価(耕地を潰した更地)、そこに外資をどんどん導入して経済成長を実現するというやり方は、農村・農民を犠牲にして成り立っているものです。労働力が廉価でなくなれば旨味を失う労働集約型の外資企業も多いでしょうし、じゃあ産業のグレードアップで……といっても現状では労働力の民度がついていけないかと思います。愚民政策のツケと言ってもいいでしょう。

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 以下は余談です。

 ジニ係数がガソリンのまきっぷりを示す度合いだとすれば、個人的には、タネ火は党幹部の汚職か物価問題ということになるのではないかと思います。

 汚職は言わずもがなですが、つい数日前には山西省でタクシー運転手約3000名による暴動が発生しています(『蘋果日報』2005/10/15)。無許可営業のタクシーを当局が取り締まらない、また警察が何かと難癖をつけては罰金を徴収するという理由によるものですが、これも一種の汚職を根にした問題といえるでしょう。農村や都市で起きている土地絡みの係争もやはり汚職ないしは汚職疑惑によるものです。

 物価では昨年秋の食品価格急騰で年金生活者のデモなどが発生していますし、つい最近はガソリン代高騰で音を上げた深セン市のタクシー業者がストライキを決行しようとして鎮撫されたという事件も起きています。

 食糧価格については補助金を出していわば「逆ざや」の形で価格安定を図る方針のようですが、それならオカズ系や光熱費がどう推移していくのかは要注目です。貧困者が圧倒的に多いから……という主張ももっともですが、食べられなくなれば話は変わってくるでしょう。

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 ジョーカーとして正攻法をおマケしておきますか。重慶市であった破産国有企業の従業員による抗議行動、ああいったものが失業者・失地農民といった似たような境遇の集団と横の連携を成立させれば警察の手には負えなくなると思います。

 特に重慶は失業者も失地農民も多い場所ですから期待したいところなのですが、どうも当局は従業員個々に脅しをかけて切り崩しを狙っているようです。

 以上、無駄話でした。




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