もう「靖国参拝」ネタは出尽くした、と言ったばかりなのに、またそれについて書く破目になりそうです。ただ今回は話題があちこちに飛びますので散漫になることを諒として頂ければ幸いです。
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まずは胡錦涛総書記の御用新聞たる『中国青年報』(2005/10/20)に出た署名論評。『人民日報』のウェブサイトである「人民網」にも即日転載されました。中国側による「靖国参拝」の位置付けと、「日中友好」についての本音が垣間見える興味深い記事です。
●小泉の「政治的知性」を観ずるに(『中国青年報』2005/10/20)
http://www.people.com.cn/GB/news/37454/37459/3785909.html
まず「靖国参拝」については、
「靖国神社問題は二国間関係の中にある様々な問題のひとつというような単純なものではなく、相互信頼確立のため、またその他の対立する問題を解決するための前提であり、礎石なのだ」
……と、つまり中国側にとって、「靖国」は日中関係を円滑にするための前提条件であり、譲れない原則だということです。「前提であり礎石」というほど重大な案件なら、「外相会談先送り」なんかでお茶を濁していないで、もっとガチな姿勢を示してほしいところですけどね(笑)。
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北京の「なんちゃってデモ」だって遠慮することはありません。中国国内で報道させればいいじゃないですか。あとはメディアにもっと騒がせて、反日サイトの連中にどんどんデモを組織させないと。沿道で暴徒の参加を募りつつ進んで、大使館なり総領事館にまたどんどん汚物やレンガを投げ込ませて。日本関係の店鋪は破壊して日本車も大破炎上させて。大学は日本人留学生の受け入れ停止とか。
……無理ですよねえ。日本人留学生を拒否した瞬間に大学は収入激減で経営の危機に陥りますし、それ以前にこの社会状況でどんどんデモをやらせたらベクトルが意外な方向に向かって中共政権が危ない危ない。オリンピック消滅覚悟で戦車でも出しますか。でもその騒ぎで外資が逃げたら中国経済は失血死。
だいたい今回は「反日」ではなくて「反小泉」なんですよね。孔泉・外交部報道局長も「日本政府が」じゃなくて、「小泉首相が一切の責任を負うことになるだろう」と言っています。『中国青年報』のこの署名論評も「小泉の……」です。
世論はどうあれ、それがオフィシャル。エネルギー浪費や環境破壊に代表されるような粗放きわまる発展モデルの中国にしてみれば、その点で何十年も先進的な日本は利用価値十分の大事な存在です。また日本企業にももっと中国に投資してほしい(※1)。
だから目下のところは「反小泉」に攻撃対象を局限しています。中共政権にとってここでの「反日」は困る訳です。付言するなら、中共の言いなりにならず靖国神社参拝を続ける小泉首相の毅然とした姿勢に中共が「憎しみ」に加えて「戸惑い」を感じているということもあるかと思います。
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抗日何たら60周年記念も関連式典を全て済ませた。だからこれからは日本に歩み寄るシフトにチェンジしてやった。それなのに靖国参拝とは何事だ。……随分勝手な言い分ですけど、中国指導部は本当にそう考えているんですから日本も舐められたものです。
まあ舐められているのは今に始まったことではないですからね。「日中友好」に対する中国側の本音が垣間見える部分を訳出してみましょう。
「中日関係正常化の立脚点は『歴史を鏡に』だ。国交成立前後、両国は現在よりも多くの、また深刻な問題に直面していた。だが当時の日本の指導者は『歴史を鏡に』を比較的よく尊重し、ときに『脱線』することがあっても迅速にそれを修正することができた。だからこそ中日友好という雰囲気が主流だったのだ」
……説明不要ですね(笑)。道理で熱烈な「反小泉」となる訳で、その熱烈ぶりには言いなりにならないことへの憎悪と戸惑いも含まれているとは上述した通りです。
ちなみにこの記事の冒頭に例の『朝日新聞』による世論調査が出てきますが、「回答者の65%が靖国参拝によって日中・日韓関係が損なわれるのではないかと考えている」と、それだけです。「参拝支持」が「参拝不支持」を上回ったことはスルー。相変わらずですねえ(笑)。
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さて、小泉首相の靖国神社参拝を契機にデモなどの「アウトドア・ライフ」に入りたくて反日サイトを根城とする「糞青」(自称愛国者の反日教徒)や「珍獣」(プロ化した糞青)がうずうずしている、とは前回までに書いた通りです。
それを当局は力づくで抑えています。上海や広州、深センなどで珍獣・糞青どもの企画したデモが治安当局の介入で潰されました。それ以前に北京で行われた珍獣・糞青十数名による「なんちゃってデモ」(参加者の少なさは当局による人数制限があったのだと思います)は中国国内では報道されていません。
……前回書いた通り、「なんちゃってデモ」をなぜ国民に知らせないのかは謎です。反日気運が高まるのを胡錦涛政権が懸念した、という説明もできますが、懸念して報道NGにできるくらいの統制力があるなら「江沢民情報」が新華社から流れるようなことは起きないでしょう。
だいたい糞青の「飼い主」である政治勢力(たぶんアンチ胡錦涛グループ)が納得しないと思うのです。中途半端でガス抜きにもならない。どうせ「なんちゃってデモ」をやるなら五十人程度まで参加者制限を緩めるか、上海や広州でも同じようなことをさせる、でも国内での露出はNG。……ぐらいにしないとガス抜き&政治的妥協にはならないと思うのです。
反日サイトの総本山格である「愛国者同盟網」には「この怒りのパワーを仕事や学業に振り向けよう」というスレが立って一定期間スレッド一覧のトップに固定されていましたが、「怒り」には「靖国参拝」だけでなく、自分達の行動を縛っている胡錦涛政権への批判も含まれているでしょう。上海でのデモ未遂事件で「愛国者同盟網」の中心的メンバーが警察に拘束された際には抗議スレも立っていました。
まあ、こういう煮え切らなさや中途半端ぶりが現時点における胡錦涛の力量を示しているのかも知れませんが、だとすればいずれは珍獣・糞青以外からも「反小泉」ひいては「反日」気運を高めんとする動きが出てきてしまうでしょう。
というかもう出てしまいました。昨日(10月20日)のことです。
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●中国人女子留学生、日本で故なく警官に殴打され身体中に負傷
http://news.xinhuanet.com/overseas/2005-10/20/content_3653263.htm
標題の通りの内容です。これはまた中国人の病的な自尊心の高さと赤剥けたコンプレックス、それに反日感情をピリピリと大いに刺激する、というか傷口に塩を塗り込めるようなベタなニュースですね(笑)。ということで以下に「事件」のあらましを。
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10月7日夜、東京の某大学に通う21歳の中国人女子留学生が電車で帰宅途中、電車が新大久保を出て高田馬場に到着するあたりで50代とおぼしきスーツを着たサラリーマン風の男が突然近寄ってきて頭などを殴られました。
これはまさに「電車男」的展開……かと思いきや、男は女子留学生の髪を強く引っ張りながら「俺と一緒に次で下りろ」「お前は外国人だろう。身分証を出して見せてみろ」とまくし立てて来ました。ざわめく他の乗客。それに気付いた男は「俺は警官だ」と身分証を示したそうです。
駅で男に下車させられた女子留学生に他の乗客も付き添い、派出所まで行って確認したところ男は確かに警官。ただし酩酊状態だったとのこと。負傷した女子留学生は帰宅後病院へ行き、頭部打撲、頚椎捻挫、右腕打撲で内出血……などと診断されました。いずれも重傷ではありませんでしたが、PTSDのような心理的影響が出て大学にもアルバイトにも出かけられない状態のようです。
東京中国人センターによると、男は近く刑事告訴される見通しとのこと。
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【※1】
●「民間」への影響、最小限に=靖国参拝、首脳と区別-中国方針(時事通信2005/10/19/19:10)
http://www.jiji.com/cgi-bin/content.cgi?content=051020050613X578&genre=int
【北京19日時事】中国政府は19日までに、17日の小泉純一郎首相による靖国神社参拝問題について、民間・経済交流への影響を最小限にとどめる方針を決めた。中国外交筋が明らかにした。中国は町村信孝外相の訪中を拒否したほか、一部市レベルの日中交流に影響が出ているが、中央が関与した民間訪中団などには指導者らも会談に応じる。日本外交筋によると、19日までに政府間の実務者協議もおおむね中止になっていない。
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(「下」に続く)
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