日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 早くも化けの皮が剥がれてしまった、というところですか。

 いや、標題の通りです。でも、いくら何でもこんなに早くバラさなくたっていいのに。

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 中国は「中流階層」なんていうまとまったものが形成されるまでに富裕層と貧困層への両極分化を遂げてしまいそうな状況です。で、御存知の通りその貧富の差、これも拡大しつつあります。

 内陸部と沿海部、都市部と農村部といった地域間格差があり、同じ都市でも業種間格差がある。失業者の増大(公式には「登記失業率が改善されていない」)も格差拡大に拍車をかけているように思います。職に就いていても一時帰休状態の人もたくさんいるみたいですし。

 で、その貧富の差を改善するのが胡錦涛政権の重要課題であり、貧富の差が改善されなければ
「十一五」(第11次五カ年規画、2006-2010年)が目標としている「調和社会」なんて実現できようがありません。

 ともあれ、「調和」を目指すと大見得を切っている以上、少なくとも現状は「不調和」だ、という認識が指導部にあることは確かです。

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 で、貧富の差がどのくらいあるのかという目安として「ジニ係数」というものがあります。

 格好つけても仕方ありませんから正直に白状しますけど、この辺が素人+無知な御家人の悲しいところで、私はそんなものがあることも知らずに、以前当ブログで貧富の格差についてふれた際、コメント欄で「1読者」さんにその存在を教えてもらった次第です。ヤフー辞書によると、

「所得・資産分配の不平等度などを示す指標の一。係数は0と1の間の値をとり、値が1に近づくほど不平等度が高くなる。イタリアの統計学者ジニC.Giniが提示。」

 とのことです。中国の記事を漁っていると貧富の差に言及している記事の多くがこのジニ係数を引き合いに出していて、例えば中共中央党校が出している『学習時報』によると、

「中国国民の収入格差は2003年以降急激に拡大しており、現在すでに2番目に深刻な『黄信号』の警戒水準に達しており、今後5年以内に有効な措置を採らなければ、最も深刻な危険水準『赤信号』まで悪化するだろう」

 と警告しています。

 ●貧富の格差はすでに警戒水準、指導部は高度に重視すべし(「新華網」2005/09/19)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-09/19/content_3512402.htm

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 この文章によると、現在の中国国民を収入や消費で5段階に分けた場合、最貧困層である総人口の20%が収入や消費で全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も金持ちな20%の収入・消費シェアは全体の50%に及びます。

 そして現在の中国をジニ係数で表現すると
「0.45」であり、国際的に公認されているジニ係数の警戒線「0.40」をすでに突破しているとのこと。

 現状はもはやフツーでない訳です。しかも格差は拡大傾向にある、として指導部はこの問題をよくよく重視しなければならない、とこの記事は警告を発しています。この点に手をつけないと「調和社会」の実現など画餅だ、というところでしょう。

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 全国経済紙『第一財経日報』は国家統計局の明らかにしたデータとして、都市部のジニ係数は2002年末時点で「0.32」だったのが2003年末には「0.34」へと拡大し、今年末には「0.35」を超えるだろうと予測しています。

 もっともこれは都市部に限った数字です。農村を加えて全国統計としてみると、2000年には早くも警戒線の「0.40」を突破し、現在すでに「0.45」を超えているとしています。

 国家発展改革委員会(発改委)経済研究所の楊宜勇・研究員はこの数字を踏まえた上で、

「改革開放をもう26年もやっているのだから、広範な国民が社会や経済の発展の成果を遍く享受できるよう配慮すべきだ」

 と指摘し、それをやらない限り、「十一五」期間内に社会・経済の全面的な協調発展は実現できないだろうとしています。

 楊研究員は業種間格差にも言及しています。寡占的な業界と一般的な業界との間の従業員の収入格差が拡大傾向にあるそうです。同時に、不労所得の増加率が勤労所得の3倍に達しているという状況もあり、これらは適切な措置によって是正されるべき歪みだとしています。

 ●世帯収入による格差は9倍以上――発改委の専門家(「新華網」2005/10/11)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/11/content_3603697.htm

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 言うまでもないことですが、記事の発表された時期をみればわかるように、これらは「十一五」に向けた警告や提言という色彩を持つものです。

 その「十一五」は10月11日に閉幕した「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)で概要が審議されて採択され、それに基づいた具体的な中身を来春の全人代(全国人民代表大会=立法機関)に向けて詰めていくことになります。

 実はその五中全会で採択されたという「十一五」の概要自体はまだ公開されていません。五中全会の「公報」(コミュニケ)で大まかな目標が提示されただけで、

 ●効率を高め消耗率を抑制することを前提に、2010年までに1人当たりGDPを2000年の2倍にする。
 ●資源の利用効率を高め、GDP1単位あたりの資源の消費率を現在より20%前後低くする。

 ……の2点以外については具体的な数字は示されていないのです。例えば五中全会閉幕を1面トップで大きく報じた『人民日報』(2005/10/12)が、同じ1面でわざわざ「十一五」の骨子を示しています。

 ●「十一五」期間における経済・社会発展の主要目標(「新華網」2005/10/12)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-10/12/content_3606832.htm

 ……が、やはり具体的数字が出ているのは上記2点のみです。

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 すると、国営通信社である新華社の傘下にある金融紙『上海証券報』がそのフォローをやってくれていました。

 ●数字による「十一五」展望
 http://news.xinhuanet.com/stock/2005-10/12/content_3606994.htm

 これによると、「十一五」期間の年平均GDP成長率は7.4%、人口増加率は0.7%以下、国民1人当たりGDPは2000年の850米ドル前後から1600-1700米ドルに増加する、となっています。他にも、

「都市化は2000年の36.2%から2010年には47%に達する」
「エンゲル係数は2010年には30-40%にまで低下する」

 など色々な目安を示してくれているのですが、その中に問題の「ジニ係数」も出てくるのです。以下に訳出します。



 ●ジニ係数は現在のレベルを維持

 ジニ係数でわが国の収入格差をみてみると、1990年には「0.34」前後だったが、現在はすでに「0.45」に迫っており、総人口のうち最も貧しい20%が収入あるいは消費において全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も豊かな20%が収入または消費に占める比率は50%にも達する。収入格差が過大になるのを抑制するのが「調和社会」を建設する上での重要な条件である。
努力することによって、わが国は2010年のジニ係数を「0.45」という現在の水準で維持することが望めるだろう。



 はい、そういうことです。貧富の格差は一生懸命努力しても現状維持が精一杯。「是正」とか「改善」は到底見込めないようです。つまりは「不調和」のまんま。

 国営通信社系の専門紙ですから的外れなことは書かないと思いますが、鳴り物入りの「十一五」、その中でも胡錦涛政権が全力を挙げて取り組むという「調和社会」の実現が、この一段だけで空中楼閣であることが明らかになってしまいます。

 「新華網」に転載されたのでもはや全国ニュース(国営通信社の配信記事)ですね。この部分、注意している人は必ず食い付くところでしょう。いつも提灯記事ばかり書いているんだから記者ももう少し御祝儀をはずんでやればいいのに。「嘘は書けない」という良心的なスタンスの人なら、確かに精一杯控え目な書き方であるとは思いますけど。

 『上海証券報』って……江沢民のイジワルじゃないですよね?

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 ジニ係数「0.45」という話題は税制改革、特に個人所得税の改革に関しても引き合いに出されます。でも朱鎔基ならともかく、胡錦涛や温家宝じゃ人間としての「格」が違います。「金持ち」と「金持ちと結託した地方勢力」を敵に回すだけの度胸も力量もないでしょうねえ。




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