日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)


 香港紙が「反日」で足並みを揃えたものの、市民は無反応。それなら全然燃えてないじゃん、というところですが、市民は別なことでヒートアップしていたのです。

 ●香港:ビクトリア公園で阿波踊りなど日本の夏祭りイベント(毎日新聞 2005/10/22/20:03)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051023k0000m030052000c.html

 【香港・成沢健一】香港島のビクトリア公園で22日、日本の夏祭りを紹介するイベントが開かれ、「日本の祭」と題してステージで沖縄のエイサーや徳島の阿波踊りが披露されたほか、やぐらを中心にして盆踊りも行われた。縁日が再現された会場は地元の人や在留邦人でにぎわった。

 日本と香港の相互理解を目指して行われている「日港交流年2005」の主要行事。小泉純一郎首相の靖国神社参拝で中国本土では日本関連イベントの延期や規模縮小が相次いでいるが、日本の味をそろえた露店や浴衣の試着・記念撮影コーナーに長い列ができ、香港での日本人気の根強さを示した。

 国土交通省から「ようこそ!ジャパン応援団」に任命された女性アイドルグループ「美勇伝」がステージに登場すると、メンバーの名前を書いたプラカードを掲げた地元の若者たちが盛んに声援を寄せた。

 これですよ。これ(笑)。

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 ●「美勇伝」が日本文化宣伝に香港訪問、岡田唯の胸の谷間に会場騒然(『太陽報』2005/10/23)
 http://hk.news.yahoo.com/051022/197/1hxn9.html

 えーと真面目な話、香港紙の水準は『東スポ』ないしはタブロイド紙程度だと思えば間違いありません(笑)。

 『明報』(2005/10/22)の事前告知記事によると、

 上半期は韓流台風が吹き荒れた香港だが、下半期はついに日本ブームへと風向きが変わった。オバサンたちを騒がせたドラマ『大奥』に始まり、「御宅族」(そのまんまですね)の人生に希望の光をともした『電車男』、それに話題の映画『NANA』などが続々と香港上陸。そして今日と明日の2日間はビクトリア公園で「日本の祭」が開催される。日本の味覚に遊びに逸品(たぶん露店のこと)。哈日族なら絶対に足を運ばずにはおれない聖地だ。

 http://hk.news.yahoo.com/051021/12/1hwt8.html

 ……だ、そうです。「モーニング娘。」(美勇伝のこと)が来るとか、最新のアニメやマンガが観られるぞ、といったこともこの記事の後段には書いてあります。熱かった証拠に、コンサートの場所取りで徹夜組まで出たという記事もどこかで見かけました。まあ香港全土が湧いた、という程ではないでしょうけど、なかなかの盛況だったようです。

 ちなみに台湾でも報じられています。

 ●亀裂修復完了~ 靖国問題あれど中日の民間交流は盛ん(東森新聞網 2005/10/24)
 http://tw.news.yahoo.com/051024/195/2g4ak.html

「香港人で日本文化を好きな人はたくさんいるし、香港の文化を好きな日本人もたくさんいる。政治の問題なんて、実際には何も影響しないんだ」

 という香港人のものと思われるコメントを拾っています。市民レベルでの「反日」は社会に閉塞感が充満すると中共への不満を転化するような形で一気に表面化しますが、ふだんの香港人は確かにこんなものですね。胸の谷間に会場騒然ですか。ええ、「東モ」に先週行ってきた私にはよくわかります。

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 最後に「トンチキの極秘訪中で胡錦涛の危うさを再確認」(2005/10/22)で紹介した、インテリ向きとされる『明報』にしては「らしくない」コラム「中国評論」ものぞいておきますか。
「秦勝」というペンネームによる香ばしい署名コラムです。

 元々は「中道というよりはやや反中共」というスタンスだった同紙は、香港の中国返還後に少しずつ媚中路線に転換し、そのために販売部数を落としてしまっています。路線転換を機に腕のいい記者や硬派なコラムニストは『蘋果日報』など他紙やニュース系サイトの主力メンバーなどに転じてしまいました。私からみると、いまの『明報』に寄稿する評論家(議員や学者などは除く)でマトモなのは呉志森氏くらいのものです(『蘋果日報』でも書いていますけど)。この人とは是非一度飲茶を御一緒したいです。

 で、前回言及したときと多少重複することになりますが、この「秦勝」はまだ若いのか歳の割には未熟なのか、文章のレベルは低いです。しかも「糞青」(自称愛国者の反日教徒)的色彩に満ちた実にフレグランスなコラムです。

 冒頭から誰でも書けるような貧弱な内容をつらつらと書き連ねるのですが、最終段落で突如として反日サイトの掲示板レベルな「地」が出てしまうのが特徴。前回(2005/10/23)は日本経団連首脳と胡錦涛・温家宝の極秘会談がテーマでしたが、注目の最終段落は、

 中国は国連安保理の常任理事国である。いまなお発展ぶりにムラがある発展途上国ではあるが、26年来の改革開放政策によって相当な経済的実力と国力を蓄積するに至っており、日本をへこませるカードは政治・経済ともにたくさんある。(胡錦涛は)ここは背筋をピンと伸ばして日本の右翼にはっきりとノーと言うべきだ。さもなくば再び屈辱の目に遭う一方、日本の右翼をいよいよ増長させることとなり、どうにも国民に合わす顔がなくなってしまうだろう。

 ……と、こうなります(笑)。香港各紙が「反日」シフトに走った今回(2005/10/24)はいよいよ激語するだろうと思っていたら、やはり期待通りのまとめ方をしてくれました。

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 ただし、中国人は元来邪というものを信じない。とりわけ日本軍国主義の残滓が天下を取り得るとは思っていない。14年間の抗戦によって、中国人は外敵の侵略を受けて以来初めて民族戦争での偉大なる勝利を勝ち取った。それ以来、中国は世界の諸民族の中において巍然と屹立している。いまやその国力は十分に充実し、急速な経済発展も遂げた。そんな中国人が、日本の右翼勢力の蠢動をどうして恐れることがあろうか。ともあれ小泉首相と町村外相は、中日関係を破壊する言動をとったことについて自らその責を負わなければならない。現在日本の総人口はせいぜい1.2億人前後だ。再び中日戦争が勃発し、中国人のうち1~2億人が死んだとしても、まだ十数億人が残っている。日本人が1~2億人死んだとしたら、一体あと何人残っているだろうか?

 いやいやこれは期待以上ですね。筆致がすでに神韻を帯びています(笑)。

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 この数カ月ばかり私は「秦勝ヲチ」を続けているのですが、その魅力は第一にこの最終段落の「突如っぷり」にあります。陳腐な文章を書いていたと思ったら、文末になると唐突に激して「糞青」(自称愛国者の反日教徒)となってしまう(笑)。ああ原稿料をとっているでしょうから「珍獣」(プロ化した糞青)というべきでしょうか。

 第二にニュースの内容に簡単に「釣られて」しまい、理性をすっ飛ばして感情が丸出しになってしまうことです。要するに情緒不安定。「日本経団連首脳と胡錦涛・温家宝の極秘会談」を受けた文章では、

「(中国は)いまなお発展ぶりにムラのある発展途上国ではあるが」

 と控え目だったものが、今回の「町村発言」という更に強烈な「燃料」に接するとネジが何本か飛んでしまい、「発展途上国」という前日までの現実認識が消えてしまっています。そればかりか「もし日中再戦すれば」とこれまた唐突に極端な話題に飛んで、しかも総人口で勝敗を云々している。どうも毛沢東時代の「人海戦術」の信奉者であるようですね(笑)。それに局地戦という言葉を知らないようです。

 私は、この署名コラムを掲載させている『明報』の意図をつかみかねています。中共への媚態かとも思ったのですが、それにしては度が過ぎますし、質が低すぎるのです。左派系の香港人や親中紙を含む香港の新聞の中でも、このコラムは浮いてしまっている観があります。

 もちろん『明報』の中でも浮きまくりです。ということで私は、インタビューなどを通じて同紙との縁が深い「珍獣」の代表格・童増(中国民間保釣連合会会長)がペンネームで執筆しているのではないか、と勘繰ったりしています。その場合、敢えて実名で書かないのは、自分の立場が中国国内の政治状況に左右されないためということになります。

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 まあ童増でも誰でもいいのですが、私はこの「秦勝」とも一度飲茶をしたいところです(笑)。色々調べてみたのですが、どうやら香港のこの世界では不肖御家人の方がはるかに「前輩」のようですから、もちろん私のおごりということになります。

 まず水をぶっかけて大人しくさせてから(水はもちろん比喩ですけど、香港人を飼い馴らすには最初に腕力を振るうのが最も有効です。もちろん「腕力」も比喩ですが)、小一時間ほど説教することになるでしょう。

 ちなみに今日の「中国評論」(2005/10/25)は作家・巴金の死去がテーマですから反日には流れていません(やろうと思えば巴金から反日への展開は可能ですけど)。一応今回の最終段落を訳出しておきます。

 だが、中国の若者はもはや文化大革命がどういうものだったかを知らないのだ。虚言に満ち満ちた現在の大陸(中共政権)は、文革のころと比べてもいい勝負だ。巴金は天寿を全うしたとはいえ、憾みを全く残さなかった訳ではないだろう。

 童増は結構苦労人ですから、ペンネームであればこのくらいのことは書くと思います。まあ童増は別としても、「中国の若者」という表現、それに中共政権や文革の捉え方からすると「江沢民チルドレン」でないようです。まあ「江沢民チルドレン」と同世代ながら香港から中共を眺めているのでこういう書き方になった、という線もありますけど。中共政権を「大陸」と呼ぶのは香港ではデフォですし。

 それにしても巴金についての文章、前回と前々回の素晴らしいパフォーマンスとは釣り合わないようにも思えます。……てこともないですか。結局今回もニュースの内容に見事に流されて別のネジが何本か飛んでしまっていますから(笑)。


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 【※】本当は香港に続いて上海の話へと飛ぶ筈だったのですが……。orz



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 本来火曜日にする話ではないのですが、私のような完全夜型生活者にとって有り難いのが日曜日です。朝の7時半から「報道2001」「日曜討論」「サンデープロジェクト」と政治系の番組が続きます。

 私にとっては仕事が終わって、仕事をしながら集めた記事を整理しているか、整理した記事に拠って当ブログに取り組んでいる時間帯ですが、なるべく見逃さないようにしていました。

 ところが一昨日(10月23日)は記事が上ネタ満載でした。しかもトンチキの極秘訪中について書くのにあれこれ考えていて、うっかり3本とも逸してしまいました。しまったと思えど時すでに遅しです。来週はちゃんと観ようと思いつつそのまま寝たのですが、翌24日の香港各紙をみてビックリしました。

 町村外相、「サンプロ」で色々話したんですか?……本来火曜日になってから持ち出す話題でもないのですが、ふれておかなければならないものなので、賞味期限切れを承知でいきます。

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 その香港各紙(2005/10/24)のメインタイトルだけ並べてみます。

 ●小泉・胡錦涛会談での激語合戦を暴露――日本外相「もう中国の言いなりにはならない」(蘋果日報)

 ●町村外相、中日関係は不平等だと妄言――専門家「日本の対中路線強硬化を示すもの」(明報)

 ●日本側、小泉首相の靖国参拝は国益に合致するものと表明(星島日報)

 ●靖国参拝を支持、不服従を明言――町村外相、中国に外交面での宣戦布告(太陽報)

 ●「外国には屈服しない」日本外相が見苦しい弁明(香港文匯報)

 香港のマスコミはこと歴史問題となると中共史観で足並みが揃います。新聞も反中共色を帯びた『蘋果日報』から中共の御用新聞である『香港文匯報』まで御覧の通り。

 これは強制ではなく、香港人は底流に反日感情があるためこうなるのです。民度+小中華思想(大香港主義)の発露のようなもので、例えば香港人は中共史観で極彩色に染め上げられた南京何たら事件の映画などを「史実」と捉えているフシがあります。

 表面的には日本文化を積極的に受け入れているのでわかりませんが、何事かあると上のようになるのです。私のみた限りでは、日本のマスコミで香港紙のこの狂態を報じたものはありませんでした。ということで、鮮度落ちに構わず眺めてみましょう。

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 「テレビ朝日の取材を受けた町村外相が」などとなっているので「サンプロ」なんでしょうが、『蘋果日報』によると、

「小泉首相の靖国参拝は日本の国益に合致している」
「外圧に屈することはない」
「日本は今まで中国に従順すぎた。これからは平等な関係を確立していくべきだ」

 と語り、また昨年の小泉・胡錦涛会談では激論が交わされたことを明かし、

「これ(激論)はいいことだ。互いに相手の考え方がわかるのだから」

 と述べたようです。他紙の内容も概ね似たようなものになっています。

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 それにしてもセンセーショナルなタイトルを好む香港紙とはいえ、「もう中国の言いなりにはならない」「宣戦布告」など今回は飛ばしに飛ばしています。『蘋果日報』はメイン記事の後に解説記事が続いて、

「1972年の国交正常化以来、最も深刻な状態」
「原因は日本が歴史問題や台湾との関係を適切に処理しないからだ」

 という武大偉・外務次官(前駐日大使)の発言を紹介した上、
「中国人民に対する重大な挑発だ」という靖国参拝当時に王毅・駐日大使(※1)が出した声明を引用。さらに専門家の声として中国国内メディアによく顔を出しては底の浅い対日論をぶって回っている金熙徳・中国社会科学院日本対外関係研究室主任を登場させています。胡錦涛総書記や温家宝首相らが日本に得点を稼がれる一方なのは、こういう手合いをブレーン扱いしているのも一因だと思うのですが……どうかそのまま重用してやって下さい(笑)。

 解説記事はさらにもう1本。これは地元香港の中文大学・アジア大平洋研究所の王家英・助教授に取材しているのですが、

「日本がかような強硬姿勢である以上、中国側のリアクションも決して弱腰にはならず、やはり強硬的な態度に出るのは確実だ。王毅駐日大使を召還して抗議を示すという可能性すらある」

 と、これまた専門家らしからぬ御発言。時あたかも経団連の極秘訪中が日本で報じられ、それが香港でも比較的大きく取り上げられたばかりです。そこで「大使召還」まで持ち出すとは恐れ入りました。あるいは扇情的な報道において他紙の追随を許さない『蘋果日報』ですから、敢えて「色物芸人」を取り揃えたのかも知れません(笑)。

 他紙の報道も濃さでは『蘋果日報』に一歩譲ったとはいえ、やはり似たり寄ったりでした。

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 じゃあ香港は大騒ぎだろうといえば、そんなことはないんです。騒いだのはマスコミだけで、香港市民はいたって平静。靖国参拝当日もそうでした。日本総領事館へ抗議に訪れた団体がいくつかありましたけど、あれはマスコミへの露出を狙った一種の選挙運動のようなものですから。単なる騒ぎ屋です。

 実例があるのです。香港の民主化で騒ぎ日本の歴史問題でも騒ぎ、天安門事件(1989年)の名誉回復運動でも騒ぐという香港では有名な騒ぎ屋、いや活動家である
梁国雄(通称「長毛」)が、昨年の立法会議員選挙に立候補して見事当選、しかも得票数上位でしたから、それに続こうという思惑があっても不思議はありません。

 でも「長毛」は議員になっても騒ぎ屋のスタイルを変えないところがいいです。先月も胡錦涛政権における香港・マカオ問題担当の曽慶紅・国家副主席(江沢民の大番頭格)が香港を訪問し、立法会議員を招いたパーティーを開催した際、議員なのでやはり招かれていた「長毛」は本領を遺憾なく発揮。曽慶紅が挨拶を始めようとした途端に、

「平反六四!」(天安門事件の名誉回復を!)

 と叫びつつ着ていたGジャンをパッと脱ぐと、これまた
「平反六四」「莫忘六四」(天安門事件を忘れるな)など中国国内でのNGワードが大書されたTシャツ(笑)。即刻警官に四肢を抱え上げられて退場させられましたが、「長毛」は宙を飛びつつもなおスローガンを叫び続けていたそうです。

 他にも曽慶紅の宿泊先だか視察先だかにダンボールで作った手製の棺桶(笑)を仲間の活動家とともに運び入れようとして警官に阻まれたりもしています。最終日は香港ディズニーランドの開業日で曽慶紅はそのセレモニーに出席して香港を離れました。このときも「長毛」は会場に乱入しようとしたものの、またも警官に四肢を抱え上げられて御退場。それでも「長毛」は宙を飛びつつもなお……(以下略)。

 馬鹿だけど変に実があるところが面白い、といいますか、「長毛」はある意味有権者の期待に最も応えている立法会議員といえるでしょう(笑)。

 ……すみません余談に流れてしまいました。orz


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 【※1】王毅がMr.ビーン似という御説にも頷けますが、私はむしろ腹話術の人形に見えてしまうのです。>>hrさん。


「下」に続く)



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