食文化の継承を図るNPO法人「和光市食文化研究会」と同市の障害者就労支援施設「すまいる工房」の利用者らが、市内の休耕地を活用して小麦の栽培に取り組んでいる。障害者が農業分野で働く「農福連携」の一環だ。今年収穫した小麦は揚げパンなどに加工し、近く市内の2カ所で開かれるイベントで販売する。関係者は「地元産の小麦粉で作った揚げたてのパンを味わって」と来場を呼び掛けている。
和光市新倉の畑で九日、来年に向けた小麦の種まきが行われた。研究会の会員、すまいる工房利用者のほか、活動を支援する地元の農家、不動産会社の社員ら約二十人が参加。種まき機を転がしながら畑を横断し、約二千五百平方メートルにくまなく種をまいた。研究会代表理事の加藤洋子さん(72)は「七カ月後の収穫が楽しみ」と笑顔を見せた。
加藤さんら地元有志が結成した研究会は、長年にわたって伝統食の継承や食育の推進などに取り組んできた。五年前、すまいる工房に呼び掛け、農福連携の活動を始めた。加藤さんは「うどん作りの講習会で、生き生きとした障害者の人たちと出会ったのがきっかけだった」と振り返る。
小麦を栽培する畑は、かつては雑草が生い茂る休耕地だった。会員らが草や石を取り除き、畑として復活させた。小麦の栽培は十一月に種をまき、成長途中で麦踏みや草取りなどを繰り返し、六月に収穫する。すまいる工房の利用者約四十人のうち、約二十人が交代で作業に参加している。
三年前からは小麦の品種を国産の「春よ恋」に一本化。収穫量は年々増え、今年は約八百キロに上った。収穫した小麦を使い、パン作りなどの講習会も開いている。すまいる工房の職業指導員竹花浩輔さん(27)は「いずれはこの小麦を使い、利用者がパンを作って販売する態勢を整えられれば」と語る。
研究会では昨年初めて「和光市民まつり」と「ゆめあい和光まつり」の会場で、この小麦を使った揚げパンなどを販売し、人気を集めた。今年は初めて天日干しにした小麦を使うことにしており、加藤さんは「おいしさはさらにアップするはず」と自信をのぞかせる。
研究会は、十三日に和光市役所周辺で開かれる「和光市民まつり」で揚げパン(一個百円)などを、二十六日に市総合福祉会館で開かれる「ゆめあい和光まつり」で揚げパンや和風味のオリジナル麺「三麺」(一杯三百円)などを販売する。
小麦の種を畑にまく加藤さん(左)ら
2016年11月13日 東京新聞