AO入試の前に基礎テスト案 大学生の学力低下対策
(2008年9月22日3時1分 朝日新聞)
推薦入試や人物本位の選抜をする「アドミッション・オフィス(AO)入試」で大学に入る人を対象に、センター試験より基礎的な内容のテスト(高大接続テスト)を実施する――。政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾長)は22日、大学生の学力低下対策として、こうした方針を打ち出す。
文部科学省の調査では、07年春の大学進学者のうち、推薦入試やAO入試での進学者は全体の4割を超える約25万8千人。一部の大学では、全く学力検査なしで受け入れている。
懇談会では、こうした現状が「大学生の学力低下につながっている」と指摘。進学者の学力を担保するため、推薦入試やAO入試で学力検査を課さない場合でも、最低限、新たに設ける高大接続テストを入学者選抜に利用するよう推奨し、一定レベルに達しない場合は入学させないように求める。
問題は入学者のレベルの問題ではなく、卒業者のレベルの問題だと思うのですが。
おそらくAO入試の目的は学力テストだけでは拾いきれない多彩な能力を持った学生を集めることを目的としているのでしょうが、彼らの学力を大学卒業程度に引き上げることは、大学側の教育という本業のはずです。
これはAO入試に限らず、少子化が進む中では大学入学のハードルがだんだん低くなってきている中で大学全般について言える問題です。
逆に言えば、一部の人気高・名門校は入学試験で優秀な学生を選抜しさえすれば教育内容に関わらず一定レベルの学生が育つわけで、結局このへんの構造は塾や予備校の「実績」と同じなんじゃないかという感じもします。
卒業した学生を新卒で採用する企業側も、現在は4年生の春先には内定を出していて、大学の成績は事実上不問にしています。また、大企業でもソニーが始めた「大学名を聞かない」という採用方法も流行しています。
これは
① 企業は大学卒業者であれば一致の学力レベルを期待している
② そもそも企業は新卒の大学生に一定の学力レベルを期待していない
のどちらかだと思うのですが、①であれば、そのうち採用方法も大学4年の後半に成績(と当然大学名)を確認して行うようになると思います。
そしてそのほうが大学も淘汰されないように学力強化に力を入れたり独自性を追求したりするし、就職の青田刈りのために優秀な学生が大学院などへの研究者の道を選択しにくくなる(それは結局日本の基礎研究力の低下につながります)という弊害も解消することにつながります。
AO入試+センター試験より簡単な試験、というのは大学側の教育の努力の向上にもならないし、あまり有効な改善策とは思えません。