『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の著者が、鳥類の祖先とされる恐竜の生態を、(本人曰く「恐竜ブームに便乗」して」鳥類学の人気を広めるべく)鳥類学の研究成果から類推して解き明かそうという本。
単行本の出版は上の本より前のようだが。
最近の研究で、恐竜は実は羽毛が生えているものもいた、とか実際はもっとカラフルだったのではないかということが明らかになってきている。化石からだけではわからない生態を鳥類の生態から想像力を膨らませて描いている。
「便乗」とおちゃらけていても、話はややもすると愛する鳥類への言及のほうがメインになりがちなところも含め、著者らしくていい。
★3.5
「令状なきGPS捜査は違法」の最高裁判決を勝ち取った話。これ自体読み物としてはとても面白い。
ただ、下の写真のように、本書は通常の講談社現代新書のカバーの上に事件の主人公である著者の写真のカバーがダブルであり、共著者の名前よりも大きく書かれている。(もっとも共著者はライターなので事件の主人公ではないのだが)
なおかつ亀石弁護士は「美人すぎる」弁護士としてテレビのコメンテーターとして活躍中で(知らなかった。確かに美人である)参院選に出馬が予定されていた(購入当時。結果落選した)。
ここまで選挙前の知名度アップのダメ押しキャンペーンを前面に押し出している本も珍しいし、講談社現代新書もそれに乗って売れればいい、という姿勢はどうなんだろう。
いや、本の中身は刑事弁護手続きや弁護士における最高裁の重みや登場する弁護士の背景などが描かれていて面白かったんだけど。
★3
タイトル的には「トンデモ本」の香りがしないでもなかったがとてもまともな本だった。
「いい医者の見分け方」を指南する本でも「既存の医療の間違い」を威勢よく糾弾する本でもなく、「よい患者」になる心得を説いている。
具体的には、きちんと医者とコミュニケーションを取り、自分の健康のために何が必要かを考えながら医者の言うことをきちんと理解しようとする姿勢が大事。
血液検査や画像検査の結果が「正常化」するのは、病気の治療の結果生じる(かもしれない)副産物。けれども、血液検査結果そのもの、画像検査結果そのものは、治療の目的でも何でもありません。
健康診断で「異常」を指摘されても、じつは放っておいてよい人はとても多いのです(そうでない人ももちろんいます)。ですから、もっと気をラクに「検査は検査、大事なのは自分自身の健康で、両者は別物」と考えるのが賢明です。
ただ、実際に「放っておいてよい」か「そうでない」かを適切にアドバイスしてくれるかかりつけ医に巡り合うのはけっこう難しいのだが。
★3.5
「ごく普通の人にもある程度は正しい病気の知識を身につけてほしい」と書かれた本。
細胞の損傷・適応・死、血流の異常のメカニズム、そして後半は今や「病の皇帝」であるがんの発生・増殖の仕組みや抑制・予防について書かれている。
高校の生物・化学知識を引っぱり出しながら概ねは理解できた感じ(いつも通り、もっとちゃんと勉強しておけばよかったという後悔は先に立たず)。
著者の実際の講義もそうらしいが、脱線やたとえ話が多く、それらが面白い(ここが合わないと読んでてつらいかも)。
いくつか面白かった話をメモ
・がんの死亡者数が増えたのは高齢化が原因。死亡率を年齢で補正すると女性は1960年代からずっと、男性も1995年以降は減少している。「日本人の死因の第一位はがん」という保険会社のうりこみを真に受けてはいけない
・タスマニアデビルは伝染性のがんで一時絶滅の危機に瀕したが、わずか20年、4~6世代で抵抗性を獲得しつつある。
・分子標的薬はピンポイントの薬なので、がんも変異すると効かなくなってしまう。薬が細分化するほどコストは高くなるが、日本の健康保険制度はそういう医薬品を前提に設計されていない。「命をお金に換算せざるを得ない時代」がやってきた。
ちなみにアメリカ、イギリスではQOLを維持する年間のコストとして500~600万円が限界と言われている。
★4.5
2019年アカデミー賞で作品賞を逃したスパイク・リーが「いつも誰かが他人を車に乗せる映画に賞を持っていかれる」とコメントしたという話を聞いて、その前回の作品がこれ。
1990年の作品で、この時は『Driving Miss Daisy』が作品賞を取った。
当時の日常と、小さなことの積み重ねが突然大きな暴力に変わるところのリアリティが秀逸。
★4