父が94歳、母が91歳になった。
いつも私が山に行った話を聞きながら、「そんな高い山にも道があるのか?俺も若ければ行くんだけ―どなぁ・・」と言う父。
一度北アルプスを見せてあげたいと思っていた、ちょうどそんな折、観光バスの日帰りツアーの募集が目についた。
「日本三大曳山祭 秋の高山祭と新穂高ロープウエイ紅葉満喫の旅」
高山祭もなかなか見ることができないし、新穂高のロープウエイに乗れば北アルプスを間近に見ることができるし、
これも最後のチャンスかもしれない。
来年はきっと無理だろう・・・・そんな事を思いながら参加申し込みをした。
秋雨前線と台風19号の間の貴重な快晴の日の事だった。
新穂高ロープウエイの乗り場までは、健康な人なら何でもない距離だが、障碍者や高齢者にはちょっと厳しい距離で、
それでも初めての北アルプスの風景を見る為に二人とも頑張った。
西穂高口駅の屋上にある展望台からは360度の大パノラマが広がっていた。
正面に笠ヶ岳
西釜尾根から槍ヶ岳
西穂高岳と槍ヶ岳
テレビなどの映像で見るだけの北アルプスの絶景を目の前で見ながら、
「あの槍ヶ岳の頂上へ今も誰かが登っておるんだなぁ・・」と独り言を呟く父。
年を重ねながら、好奇心を持って初めての体験をすると言う事は、
本当に大切な事だと両親を見ていてそう思う。
新穂高ロープウエイから約1.5時間、飛騨高山に到着。
高山祭はもう始まっていた。
屋台曳き揃えー国の重要有形民俗文化財である屋台が曳き揃えられている表参道を通り、
櫻山八幡宮境内まで行くと からくり奉納 が行われていた。
精一杯身を乗り出すものの・・なかなか見えず、それでも日本三大曳山祭という貴重な祭典を体で感じ、
屋台引き廻しは、沿道から見学。
一日中歩き回ってくたくたになって帰宅した両親だったが、
「90過ぎて二人で行けて、初めて高山のお祭りと、北アルプスが見れて
こんな幸せな事はないなぁ・・」と帰りのバスの中で話す二人。
2人とも翌日、筋肉痛だという。
「90過ぎて筋肉痛になる人など殆どいないと思うよ」と、私も笑う。