79才のTさんは、 物忘れが激しくなり、
物忘れ外来を受診しましたが、 はっきりした診断は 付きませんでした。
そのうち症状は進み、 歩幅が狭まって 小刻みにしか歩けなくなってしまいました。
MRI検査をすると、 脳に水が溜まっている 様子が見られます。
医師は 「突発性正常圧水頭症」 を疑いました。
原因不明で、 脳や脊髄の周囲にある 髄液 (脳脊髄液) の流れが悪くなり、
脳内に大量に 溜まる病気です。
脳が圧迫されて、 身体機能に異常をきたし、
歩行障害が表れたあとに、 物忘れや尿失禁症状が 出ることが多いとされます。
ただし 一般的な認知症との 区別は難しく、 専門的な検査や診断が 必要です。
Tさんは 「髄液シャント術」 という手術を受け、
余分な髄液を出すようにしました。
その結果、 以前に比べ 苦労なく歩けるようになり、 物忘れも減りました。
趣味も楽しみ、 海外旅行にも 行けるようになったのです。
認知症とされる高齢者の 5~10%が、
実は突発性正常圧水頭症だという 推計もあります。
何年も寝たきりだった人が、 手術で元気になった例もあります。
歩行障害に物忘れが 重なる場合などは、 この病気の可能性があり、
脳外科や神経内科を 受診することが勧められます。
〔 読売新聞 医療ルネッサンス 「あきらめない認知症」 より 〕
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