「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「無意識の彷徨」 (17)

2007年05月06日 20時22分11秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47313453.html からの続き)

  
○樹木

  幹にとまった蝉がしきりに鳴いている。
  

○警察署・心理課

  なつみと裕司。
裕司「(顔を伏せて)……自分で自分が恐い
 んです……! 僕は多重人格じゃないんで
 すか……!?」
なつみ「裕司くんに別の人格があるのかはま
 だ分からない。でもね裕司くん、多重人格
 だから犯罪に関わるなんてことはないんで
 すよ。マスコミなんかで誤解されてるけど、
 本当は多重人格の人は優しくて傷つきやす
 い人たちが多いんです」
裕司「……でも、意識がない間に、自分が一
 体どんなことをしてるのか……!?」
なつみ「それを、知りたいと思いますか?」
裕司「………(当惑)」
なつみ「あなたの人生のなかで抜け落ちてい
 る空白、それを埋めることで自分の姿が見
 えてくると思います」
裕司「……どうやってそんなことを……?」
なつみ「催眠によって記憶を呼び起こすとい
 う方法もあります」
裕司「……催眠術をかけられるんですか…
 …?」
なつみ「裕司くんが私を信じてくれるなら
 (裕司の目を見つめる)」
裕司「……でも、また大変な記憶が出てきて
 しまったら……?」
なつみ「もしかすると、そういうことがない
 とは言えません。このままのほうがいいで
 すか?(穏やかに)」
裕司「……いや、このままじゃ……(困惑し
 て)」
なつみ「恐いものは見ないほうがいいか、本
 当のことを知りたいか、裕司くん自身の選
 択なんですよ」
裕司「……でも……(逡巡)」
  裕司の気持ちをありのままに包むなつみ。
裕司「………(葛藤)」
なつみ「………(見守る)」
  裕司、顔を上げてなつみの目をしっかり
  見つめる。
  裕司の意思を見て取り小さく頷くなつみ。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47369496.html
 


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