「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

救助が任務のはずなのに

2011年06月30日 22時16分45秒 | 東日本大震災
 
 津波の被災地では、 自衛隊や警察などが 直後から人命救助に取り組みましたが、

 懸命に探しても 見つかるのは遺体ばかりという、 かつてない経験でした。

 「生きている人もいるはずだ」

 自ら鼓舞しても、 人命救助の任務は、 無数の遺体の収容に 変わっていました。

 抱き合ったままの 母子の遺体を見て、 自分の家族の姿に重なり、

 辛い思いを抑えられなくなった 隊員も少なくありません。

 「遺体の夢ばかり見る。 自分を見失いそう」

 「食事がのどを通らない」

 隊員からの 悩みの訴えが急増しました。

 「早く救助できていたら」

 「自分は無力だ」

 と 自責の念にとらわれる人もいます。

 そんな隊員に、 安置所に来た僧侶は、

 「あなたのお陰で ご家族は遺体を拝むことができる。

 大切な仕事をしてくれて ありがとう」

 と声をかけました。

 僧侶の読経の声で、 張りつめた空気が緩み、 心が落ち着いたといいます。

 読経は、 亡き人を通して 感謝の心を教わる 時間だということです。

 「個人の頑張りで 何とかなるものではなかった」

 「あなただけが弱いのではない」

 と伝えることが大切です。

 この大きな喪失は、 一人で受け止めきれるものではありません。

 残された者が、 手を取り合って 受け止めていくしかないでしょう。

〔 読売新聞より 〕
 

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