「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「津波が来る」 と 走った高校生

2011年09月20日 22時38分20秒 | 東日本大震災
 
 3月11日の陸前高田市、 激しい揺れに襲われた瞬間、 高校3年生のS君は、

 幼いころから繰り返し聞かされてきた 言い伝えを思い出しました。

 「大きく揺れたら、 高台さ上がれ」

 友人と高台に走りましたが、 逃げてきた人の姿はまばらです。

 S君は 制服の上着を脱いで 友人に渡し、

 危険を知らせるため 坂を駆け下りました。

 人を見つけては 避難を呼びかけましたが、 耳を貸さない人もいます。

 寒い季節なのに ワイシャツ姿のS君が 美容室に飛び込んできて、

 Kさんはびっくりしました。

 「津波が来ます!  逃げて!  お願いします!」

 S君は言い残すと 走り去りました。

 Kさんは半信半疑ながら 客らと高台に上りました。

 その直後、 津波が街を襲ったのです。

 美容室を後にしたS君は、 その後も街を走り回り、

 「高台へ!」 と 声をかけ続けていました。

 息が切れて立ち止まったとき、 堤防の上に 津波のしぶきが見えました。

 S君は 道路脇の建物の飛び込み、 3階まで駆け上がると、 そこには12人の人が。

 屋根裏部屋に上がろうとし、 階段を一人ずつ上がる途中で、

 濁流が一気に入り込み、 S君の下にいた6人が 呑み込まれたのです。

 寒さと恐怖に 振るえる一夜を過ごし、 翌日ヘリコプターで救出されました。

 「自分は助かった。 でも……」

 そんなS君に 前を向く勇気を与えてくれたのは、

 彼の呼びかけで避難した人たちとの 再会でした。

 避難所で、 Kさんが駆け寄ってきて 泣き崩れました。

 「あなたのお陰で、 私も 周りの人も助かったよ」

 現在、 S君は高校で 操船の勉強を続けています。

 「将来は 漁師の父親の後を継ぎたい。

 海に生きて、 この津波を語り継いでいく。

 それが、 生き残った者の 責任だと思う」

〔 読売新聞より 〕
 

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