ひまわり博士のウンチク

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森田童子~孤立無援

2008年05月25日 | 音楽
 風間完画伯のジャケットがいい。
 しかし、ぼくが持っている森田童子のイメージとはだいぶかけ離れています。
 なぜならこの2枚のベスト盤は1993年発売で、映画とドラマがヒットした『高校教師』の主題歌としてのイメージですから。

Morita_doji

 そもそも、森田童子と『高校教師』はミスマッチな気がします。
 (だいたいあんな高校教師が実際にいたら、フザケルナ! と言いたいです。いや、ウラヤマシイかな?)

 ぼくがこれを買ったのは『高校教師』が目的ではなくて、1に入っている「孤立無援の唄」と2に入っている「球根栽培の唄」。
 ともに70年安保闘争当時話題になった言葉で、「孤立無援の唄」は京大助教授で作家だった高橋和巳のエッセー「孤立無援の思想」から来ています。
 高橋和巳が「孤立無援の思想」を発表したのは1960年代の半ば。同名のエッセー集にある短い評論ですが、これが全共闘を中心に大ヒットしました。
 森田童子のこの唄の中に、友だちが書店で立ち読みしながら『孤立無援の思想』を万引きし、“ぼく”の自転車の後ろにまたがって逃走しながら読んでいるところがあります。
 自転車の後ろで走りながら読めるような簡単な文章じゃないですけどね、あれは。
 そういえば、当時は万引きが犯罪であるという意識に乏しい学生が多かったですね。

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 森田童子が活動を開始したのはそれから約10年後の1975年、西荻窪のロフトなどでライブが行われ、連日の超満員でした。
 つまり、70年安保で挫折した学生運動の残されたろうそくの焔のようなものだったのです。浅川マキ、山崎ハコらとともに、暗めの女性歌手が人気だった時代です。
 近頃の「ヤング(死語)」にはまったく受けません。それどころか、“彼女”に「暗い部屋で~一人でこんなの聞いてると思うと~、きもちわるい~い~」なんて言われて嫌われますからご注意を。

 「球根栽培の唄」というのは地下出版本『球根栽培法』の意味で、チューリップやダリアの球根を栽培することではありません。
 全共闘世代の人なら知っていますが、火炎瓶や時限爆弾や改造拳銃を作ることを、隠語で「球根を栽培する」と言ったのです。
 唄に出てくる「赤ヘルメットのお前」は森田童子本人でしょうか。危険な臭いに似合わない癒し系の声は、青年から中年に向かおうとする、多くの元闘士たちの傷ついた心を癒してくれました。

 ちなみにこの2枚を含め、森田童子のCDはすべて廃盤.今後再発されることはないでしょうから、貴重品になってしまいました。

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