monologue
夜明けに向けて
 



ダウンタウンの試験場は近いけれど人が多いのでハリウッドに行くことになった。車好きの先輩が手はずを教える。試験場で筆記テスト用紙をもらったらこの車まで来い。この問題集の答えを写せ、でも全問正解せずに二三問間違えておけ。最後に口頭でも試験があるから英語がよくわかるフリすること、すこしぐらい間違えても大丈夫。通すことが試験の目的だから。通ったら実地の運転試験は即日ではなく練習して別の日にすることにしろ、と指示されてみんな試験場に入る。おまえも行けと言われて迷う。なんだか置き去りになったようで決心してみんなのあとについてゆくとやはり全員筆記テストに通った。「これから試験用の車をレンタルしに行こう。試験は慣れている自分の車でも試験場の車でもOKなんだ、オートマチック車だったらゴーカートみたいなものだから借りに行こう…。」という。その頃はシフト車とオート車の違いも知らず なにがなんだかわからなかったけれど近くのレンタカー会社で筆記試験に受かった仲間同士でオートマチック車を借りた。

 昼間は危ないので夜になるのを待って稽古を始めた。人の少ないビバリーヒルズあたりの駐車場で教官然とした先輩の横で初めて自動車のハンドルを握った。生まれて初めてなのでまっすぐ走れない。慣れてくると右折(
ターンライト)左折(ターンレフト)と英語で言ってもらって指示通りに進む。とにかく安全確認、目だけではなく首を大きく動かして試験官に確認していることをアピールすること。教えられるとおりに必死で運転した。「最後のほうで試験場に帰ってくる頃、縦列駐車ができるかどうかみられるから練習しよう」という。たしかに初心者にはむづかしい。コツを教えてもらってもなかなか満足に停車できなかったが信号での左折が課題 として残っているので路上に出ることになった。アメリカは車は右側通行なので左折が問題なのだ。真夜中でまったく車影はない。安全だけど駐車場から出たのがこわかった。大きくまわって車の流れに入れといわれても一台も車はこないので流れに入るという感覚がつかめなかった。とはいえ明日はいよいよ路上運転試験、ハリウッドの町を横に試験官を乗せて走るのだ。
生まれて初めてハンドルを握った次の日に…。
fumio






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« カリフォルニ... 今週のアクセ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
コメントをするにはログインが必要になります

ログイン   新規登録