monologue
夜明けに向けて
 



 1996年7月17日アニマルズのベーシストであったチャス・チャンドラー(Bryan James "Chas" Chandler) が心臓疾患で亡くなった。かれはアニマルズのサウンドの縁の下の力持ちだった。体格も性格もそんな支えるタイプの人物だった。

1966年7月、チャンドラーはアニマルズの解散前の最後のアメリカ公演前に他のメンバーより一足先にアメリカに渡った。転進して新たな才能のプロデュースやマネージメントを考えていたのだ。そのとき、ティム・ローズの Hey Joe (You shot your woman down)を気に入ってこれからマネージメント、プロデュースする新バンドでこの曲をレコーディングしようと思った。そしてグリニッチ・ビレッジのクラブ「CAFE WHAP」に入るとジミ・ヘンドリックスが待っていたように出演していてなんと1曲目に「ヘイ・ジョー」をやりだした。その演奏に度肝を抜かれて、イギリスに連れて行きたい、と交渉を持ちかけるとジミは「ジェフ・ベックやエリック・クラプトンに紹介してくれるか」と尋ねる。チャンドラーがなんだそんなことかと胸をはって「もちろん2,3年越しの友人さ。」と応えると「イギリスではどんなアンプを使ってるの。フェンダーアンプはあるよね?」とそれだけをジミは尋ねて英国行きを決める。

 チャンドラーはジミの9月渡英後、オーディションを行い、ノエル・レディング(ベース)、ミッチ・ミッチェル(ドラムス)を選びジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを結成し10月から活動開始。デビューシングルHey Joe は全英4位のヒットとなり、ジミの破天荒ギターサウンドと衝撃的パフォーマンスは世界中の音楽ファン、そしてプロミュージシャンを驚愕させ賛否両論の渦に巻き込んだ。
 
 チャンドラーの下支えの下(もと)ジミのライヴやレコードで繰り出すサウンドは嵐のように世界中を吹き荒れて強烈な印象を与え続けたのだ。かと思うとジミはなんとデビューからわずか4年後の1970年9月18日ロンドンのホテルに滞在中酒とバルビツール酸系睡眠薬の過剰摂取により27才で急逝した。本当にあっという間だった。
 
 そして1996年7月17日に向こうの世界に赴いたチャス・チャンドラーはジミに再会したとき、どんな風に声をかけたのだろうか。「ヘイ・ジョー」は名前を知らない相手を呼ぶ時に使う呼びかけだが「ヘイ、ジミ」よりふたりの間では「ヘイ・ジョー」のほうがお互い通じ合えそうだ。にやっと笑ってベースとギターの掛け合いが始まればたのしいだろうし…とへんなことを思ってしまう。
fumio


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