北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
梅雨の時期の散歩は、“梅雨の干(ひ)ぬ間”を待っていても仕様がない。弱雨であれば意を決して覚悟を固め、出掛けるのが良い。-------
色取り取りの紫陽花(あじさい)が、近鉄奈良線沿線の住宅地の庭に咲き誇っている。新しい小住宅には庭の無い処が多いのだが、古くからの小邸宅には必ずと言ってよいほどに紫陽花が植えられている。白、紫、赤紫の普通の紫陽花と、額紫陽花の青色が目に沁(し)みる。------
旧道や里道を歩くと、農業灌漑のための小さな池に出くわすことがある。池に生息する鯉や亀、野鳥のバンにパンくずを与えると、一頻(ひとしき)り水面が波立つのである。------
今年は少し時期が早まったのか、蓮(はす)の蕾(つぼみ)が膨(ふく)らみ、一輪が既に咲いていた。例年、1か月ほどに亘り、蓮の花を楽しめるので、散歩は欠かせないのだ。そして雨でも花の観賞は楽しいのだ。蓮の大きな葉は、雨粒を蓄えてレンズのように光を転がしている。------
五月の春の花の咲き乱れた時期には、“ヒラドツツジ”や“さつき”、“久留米ツツジ”、“霧島ツツジ”、手裏剣のような白い花の“山法師(ヤマボウシ)”、“箱根空木(はこねうつぎ)”、“薔薇(バラ)”、“ジャスミン(茉莉花)”、“紫蘭(しらん)”と数知れない花々がそれぞれの小住宅の庭に垣間見えた。しかし、6月に入り梅雨になると、何故か花の種類が少なくなり、“紫陽花”の一人勝ちとなるのである。------
木々の緑は、五月よりも深みを増して、濃い緑を演出し、その艶やかな葉影には、“柿”や“夏蜜柑”、“石榴(ざくろ)”が小さな実を結んでいるのだ。-----
勿論、里道沿いの水田では早苗が元気に成長を始め、灌漑水路を流れる農業用水の音が心地よく聞こえる。兼業農家を続けるのも楽ではないと思える昨今、ミニ住宅開発や駐車場に生まれ変わる農地も多いが、それでもお米を生産されていることには頭の下がる思いがするのだ。