北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「社長って何だ(丹羽宇一郎著・講談社現代新書2019刊)」を読んだ。丹羽宇一郎(にわういちろう1939生れ)氏は、名大(法学部)卒、伊藤忠商事に入社、1998社長、2004会長に就任した。また2010駐中国大使も務めた。------
章立ては次の通り。“リーダー不信の時代に問う”、“孤独と覚悟/攻めと守りを同時に行う”、“資質と能力/畏れを知るべし”、“報酬と使命/社長で稼ごうとは思わない”、“自戒と犠牲/ビジネスは義理人情で動く”、“信頼と統治/人のつながりが不祥事を防ぐ”、“後継と責任/社員の喜びこそがリーダーの感激”、“社長の器以上に会社は大きくならない”------
日本企業が軒並み勢いを失う中で、丹羽宇一郎氏が社長を務められた伊藤忠商事は、財閥系商社の住友/三井/三菱を追い抜いて近年は年商一位を続けている。大学生の就職人気企業としても常に上位である。-----
社長業を立派に務められた丹羽宇一郎氏は、先達の瀬島龍三(1911~2007)氏を伊藤忠の中興の祖と書いておられるが、一方の丹羽宇一郎氏も、伊藤忠のバブル体質と不良資産を片付けて、今の商社業界1位の成績を齎した逸材であったのである。------
その社長業の内実というか、統率力の磨き方について、これまでも多くの著作に記してこられており、この本「社長って何だ」もその1冊なのだ。だが、読んでみると少々、乱暴な内容となっている気がしないでもない。出版社にとっては出せばトントン以上に売れるだろうから、手放せない著者である。その昔、経営の神様と言われた松下幸之助ほどではないが、その亜型(あけい)ともいえる人物ではある。このような経営者が少なくなって日本は久しい。もっと多くなければ日本経済は沈滞したままになるであろうと、丹羽宇一郎氏は檄を飛ばしているのである。