北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「絶望読書(頭木弘樹著・河出文庫2018刊/2016版の文庫化)」を読んだ。頭木弘樹(かしらぎひろき1964生れ)氏は、筑波大学卒、文学紹介者を名乗っている。大学3年のとき難病となり、13年の闘病生活を送った。その時、カフカやゲーテ/ドストエフスキーの言葉が救いとなったそうであり、この本「絶望読書」に繋がっている。-------
章立ては次の通り。“絶望したとき一番大切なこと”、“絶望のときをどう過ごすか”、“なぜ絶望の本が必要なのか”、“絶望したときにはまず絶望の本がいい”、“すぐに立直ろうとするのはよくない”、“絶望は人を孤独にする”、“絶望したときに本など読んでいられるのか”、“ネガティブも必要で、それは文学の中にある”、“さまざまな絶望にそれぞれの物語を(小説/詩/落語/映画/テレビドラマ)”------
頑張っている人にさらに“頑張れ”と励ますことは、その人を追い詰めることになり宜しくないと今では云われている。また闘病生活を送っている人に能天気でポジティブな闘病記の本をプレゼントするのは止めた方が良いなどと、具体的なアドバイスの事例が取り上げられて親切に解説してくれている本である。------
大人になって物語を必要としなくなった人も、もう本は読んではいないのだが、自分の出世物語を知らずに意識して生きているのだという。“人生脚本”という言葉が心理学にある。そのように人は自分の生き方の脚本をそれぞれに持っているのだ。絶望に陥った時には、それまでの脚本を書き直さねばならないのだが、これに時間が掛かるということだ。人は身体の食べ物だけでなく、心/精神の食べ物が必要であり、絶望に苛(さいな)まれるときは、それを癒す食べ物として良質の読書(絶望読書)が必要となるのだと解説している。13年間の絶望の淵から生き返った人の箴言(しんげん)であるから一読の価値はあると思った。