道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

ターナー展(東京都美術館)

2013年11月06日 | 美術道楽
上野の東京都美術館で開催中のターナー展に行って参りました。

5月には上野の東京藝術大学美術館で夏目漱石の美術世界展では「金枝」を見ましたが、今回は似て非なる作品「チャイルド・ハロルドの巡礼―イタリア」 を見ました。いずれも、漱石の「坊ちゃん」の中で、赤シャツが愛媛県内の島をターナー島と名付けるくだりで、念頭に置かれている絵の候補となっている作品です。

どうでもよい話から始めました。

まずはトビカンのHP記載の企画の趣旨です。
(引用はじめ)西洋美術史に燦然と輝く風景画の傑作を生みだし、今日なお英国最高の画家と称されるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の展覧会を開催します。世界最大のコレクションを誇るロンドンのテート美術館から、油彩画の名品30点以上に加え、水彩画、スケッチブックなど計約110点を紹介。才能きらめく10代の習作から、若くして名声を確立しながらも、批判を恐れず新たな表現を追究し続けた壮年の代表作、70代の到達点に至るまで、栄光の軌跡をたどります。日本でまとめて見る機会が少ない巨匠の待望の大回顧展です。(引用終わり)

ターナーの作品が、1初期、2崇高の追求、3戦時下の牧歌的風景、4イタリア、5英国における新たな平和、6色彩と雰囲気をめぐる実験、7ヨーロッパ大陸への旅行、8ヴェネツィア、9後期の風景画、10晩年の作品に分けて展示されています。

ターナーは理髪店の息子に産まれ、あまり恵まれた境遇でもなかったようですが、幼くしてロイヤル・アカデミー附属美術学校に入学し、異例の若さでロイヤル・アカデミーロイヤル・アカデミー準会員となり、その後も順調な人生を送っていきます。
そんな息子をターナーの父親も誇らしく思っていたようです。ターナーは非常に才能に恵まれる一方で、その絵画を王侯貴族等に気に入ってもらうことにもかなり心を砕いたようです。
英国でおきた船の事故を描いた「ミノタウルス号の難破」は、テオドール・ジェルコーの「メデュース号の筏」に似た構図で描きながらも、その後この作品の取り扱いに困ったというエピソードや、王室に取り入るために描いた絵のことなどターナーの顕示欲の強い人となりが窺われます。その割には、「トラファルガーの海戦」をネルソン提督等の将軍の絵としてではなく、戦場での戦いを終えた後の兵士や船の絵として描き、感動を呼ぶ者ではないと不興を買ってしまったエピソードなど面白く思われました。また、晩年、絵を自分のアトリエで完成させず、多くの人の前でお披露目する際に完成させるようにしていたというのもパフォーマンス好きのターナーの強烈な人柄を感じます。


いい作品と思いましたのはヴェネツィアを描いた作品です。
それとローマの将軍のエピソードを踏まえた「レグルス」という作品です。こちらの方はエピソードの方を聞いてしまうと、ひいてしまうような絵画で、評判が悪かったというのもよくわかります。


興味深かったのは「戦争、流刑者とカサ貝/平和―水葬」というタイトルの対となる2枚の絵です
「戦争-流刑者とカサ貝」はワーテルローで敗れたナポレオンの姿を赤々とした色調で描き、「平和-水葬」はターナーの知人のウィルキーの姿を黒色で描いています。
そして確か「平和ー水葬」に描かれているマガモmallardがターナーの名前であるMallordと韻を踏んでいるのだそうです。
音声ガイドに言及はなかったかもしれませんが、カサ貝はナポレオンが軍の中でいつもかぶっている帽子と同じ形になっていることが一見してわかります。それと、音声ガイドでウィルキーの病気のことを聞いたからでしょうか、私はmallardは他にもmalade(フランス語で病気)とも韻を踏んでいるのかななどとと考えながら聞きました(これは完全に私の勝手な想像)。


この美術展は神戸市美術館にも巡回になるようです。ターナーの絵は神戸市美術館の重厚な建物の方が、より似つかわしいかもしれません。

「林氏墓地」の公開

2013年11月05日 | 風流道楽
文化の日の前後の期間は、毎年、近所にある国指定史跡「林氏墓地」(市谷山伏町1-15)が公開されます。
以前にもブログで紹介しましたが、今年も改めて出かけました。
林家は、方広寺の鐘で有名な林羅山が徳川家康に仕えて以来、代々幕府の儒学に関わってきました。正徳の治の時代には宿敵新井白石の登用により、不遇をかこちますが、徳川吉宗の将軍就任と共にまた復帰しました。
市谷山伏町の墓地ですが、もとは台東区忍岡の方にあり、三世の鳳岡が市谷の地に牛込の地に土地を拝領したことから移ってきたのだそうです。

公開は昨日11/4の15:00まででした。

林羅山の墓




ル・コルビュジエと20世紀美術展(国立西洋美術館)

2013年11月04日 | 美術道楽
国立西洋美術館で開催中のル・コルビュジエと20世紀美術展に行って参りました。
企画展コーナーではミケランジェロ展が開催中ですが、こちらは常設展の会場の中で展示され、常設展の料金で見ることができます。企画展のミケランジェロ展に決して負けないほどの素晴らしい内容です。

まずは企画の趣旨です。
(引用初め)国立西洋美術館の本館を設計したル・コルビュジエ(1887-1965)は、20世紀を代表する建築家であると同時に、絵画、彫刻、版画、タピスリー、映像などの分野にわたって活躍した多才な芸術家でもあります。彼は毎日の朝をアトリエでの絵画制作、午後を設計事務所での仕事にあて、異なる領域のあいだを往復し続けた稀代のクリエイターでした。
今回の展覧会は、パリのル・コルビュジエ財団と、ル・コルビュジエの美術作品に関する世界有数のコレクションをもつ大成建設株式会社の協力のもとで開催されます。本展のもっとも大きな特色は、ル・コルビュジエの絵画や彫刻を、彼自身が設計した美術館の空間の中で鑑賞できるところにあります。彼が後半生に「諸芸術の綜合」を訴えたことは近年あらためて注目されていますが、本展は彼の美術作品と建築空間が実際にどのように響きあうかを確かめることのできる機会となるでしょう。
また、本展には、ル・コルビュジエの美術作品とともに、彼と密接な関わりのあった同時代の芸術家たちの作品も展示されます。彼が「レスプリ・ヌーヴォー(新精神)」を唱えた時代の盟友であったオザンファン、レジェ、リプシッツ、そして彼が強い関心を寄せたキュビスムの芸術家たち(ピカソ、ブラック、グリス、ローランス)、さらに彼がいち早く注目したボーシャン、デュビュッフェ、ルイ・ステールら異色の画家たちの作品を通じて、モダニズムの枠にとらわれず大きな視野のもとで創造の根源を探ろうとしたル・コルビュジエのユニークな芸術観の一端を垣間見ることも、本展のもうひとつの狙いです。(引用終わり)

ル・コルビュジエ(Le Corbusier)がまだ本名のシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ=グリ(Charles-Edouard Jeanneret-Gris)と名乗っていた時代から、ダダの詩人のポール・デルメやピュリスムの画家のアメデ・オザンファンと知り合い、雑誌『レスプリ・ヌーヴォー』(L'esprit Nouveau)を創刊してル・コルビジェとなっていく過程を、作品を通じて知ることができます。建築家としてのル・コルビジェだけではなく、画家としての作品も多く見ることができます。
そして、展示のタイトルからも明らかなように、ル・コルビジェのみならず、オザンファンはもちろんのこと、ジョジュ・ブラック、レジェ、ピカソ、ファン・グリス、アンドレ・ボーシャン、デュビュッフェなどの作品も見ることができます。
デュビュッフェの作品はベルリンのシャルフ・ゲルステンベルク・コレクションでも見ましたが、こちらにも大阪の国立国際美術館から出展されていました。
ル・コルビジェの作品とレジェの作品は似ているように見えますが、やはりレジェの作品の方がよく思われてしまいました。ピカソの作品にもル・コルビジェの作品に似ていると思うものもありましたが、こちらもピカソの方がずっと迫力があります。結局、絵画という面では、上に挙げた他の画家の方が皆コルビジェよりも素晴らしいというのが偽らざる感想ではありました。その意味ではコルビジェが建築家として生きたのは正解だと思いました。

この展覧会本日11/4までです。とてもいい展覧会でしたので3回も足を運んでしましました。最初、企画展ばかりみて、力尽きて常設展に行かないままになったことが数回続いたことが本当に悔やまれるような素晴らしい展覧会でした。

Chez Cima

2013年11月03日 | 食道楽
今更書くのも遅すぎますが、10月31日には、新宿伊勢丹に出店しているChez Cimaでかぼちゃのケーキを買って食べました。
写真にも写っていますが、ケーキの上にはかぼちゃ型のトッピングまで作ってあります。

先週は近所の商店街でもハロウィーンのお祭りがありましたし、日本でもハロウィーンの習慣が定着しつつあるようです。