道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

秋山聰先生ご講演「デューラーにおける名声のメカニズム」

2011年01月10日 | 美術道楽
国立西洋美術館のデューラー展の関連行事として,東京大学准教授の秋山聰先生の講演を聴講して参りました。
秋山先生はデューラーの専門家です。

「死後の名声に関して生前から何ら手を打っておかなかった者は,その死後記憶されることなく,その死を悼む鐘の音とともに忘れ去られてしまう。」というのは神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の言葉とのこと。マクシミリアン1世はその点,十分な配慮をしたようですが,マクシミリアン1世の演出を助けたデューラーもかなり入念な準備をしていたようです。
ますは「薔薇冠(ロザリオ)の祝祭」の絵。幼子キリストの産着には大きな蠅の絵が描かれており,否応なしに蠅に目が行きます。絵の中の登場人物もみんな気になって仕方がなさそう。信仰の対象となるような絵なのになんなんだろうと思うと,登場人物の中にデューラーがいます。絵画に感情移入することを妨げ,観客に否応がなしに画家のことを考えさせてしまうという高等テクニックのようです。同じようなことが「12歳のキリスト」や「1万人の殉教」の絵にも見られるとのことです。
また当時の著名な人文学者と親交を結び,その肖像版画を作成し,彼らの業績に比べれば,肖像版画で描写することができることはたいしたものではないというような謙虚な銘文を書きながら,著名な人文学者とともに高い名声を保持するという互恵関係を結んだことなども興味深く聞きました。
ルターの登場によるキリスト教世界の対立関係を反映するといいますか,代理するかのようなデューラーとクラナッハとの対立するかのような肖像画作品の対比もとても面白く思われました。

個々の作品の解説ということに留まらないデューラーの画家,版画家としての「経営」戦略もわかるようで大変興味深いご講演でした。

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2 コメント

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はじめまして (マカヒキマラヒニ)
2011-01-13 16:05:54
はじめまして(^O^)

私も、秋山先生の講演を聴きに行った者です。
大学1年です。
講演、本当におもしろいお話でしたよね!
学校の図書館でデューラーの画集を見たのですが、ロザリオの祝祭、ハエがいなかったんです(:_;)
どうしてでしょう?

あなた(なんと呼んだら良いのか分からないので、英語式に)はたくさん行動されいるそうで、
刺激を受けました!
これから、読ませていただきますo(^-^)o



お時間があれば、私のブログにも遊びに来てくださいp(^^)q


アメーバブログで
「偉人に続くための行動履歴書」というブログをやっています。



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はじめまして (フランツ)
2011-01-14 05:38:41
はじめまして。
当ブログの管理人道楽ねずみことフランツです。私のコード名はフランツですので,名前はフランツとお呼びいただければと思います。
私も27年前には大学1年生だったはずです。

確か秋山先生はロザリオの祝祭,今の絵にはハエはなくなっており(修復のせいなのでしょうか?),描かれた当時のものを模写したものの中にハエが描かれてので,最初の絵にはハエがあったと分かるという話だったように記憶しております。

これからもよろしくお願いします。
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