奴隷解放運動家として知られ、アフリカ系アメリカ人で初めて、20ドル紙幣の肖像に採用されることが決まったハリエット・タブマンの伝記ドラマ。
ケイシー・レモンズ監督。
1849年のアメリカ、メリーランド州。
農場の奴隷の子として生まれたミンティは、幼い頃から過酷な労働を強いられていた。
自分が売られる事になり、家族に二度と逢えなくなることを知ったミンティは、脱走を決意する。
奴隷制が廃止されたペンシルバニア州を目指し、夢中で走る。
奴隷狩り用の犬と銃を持って、馬に乗った屈強な男たち何人もに追いかけられながら、川に飛び込み、森を抜け、ボロボロになりながら160㎞の道を逃げ通す。
文盲の彼女は道の標識すら読めないのに、北極星の位置だけを頼りによくフィラデルフィアに辿り着いたものです。
その後、幾多の困難を乗り越えて彼女は奴隷解放活動家となり、生涯で800人以上の奴隷解放を手助けしたとされています。

子どもの頃「アンクル・トムの小屋」を読んで涙してから、こうした類いの小説、映画に色々と接してきました。
ざっと思い出しても、「アミスタッド」「カラーパープル」「ミシシッピー・バーニング」「グローリー」「ヘルプ」「それでも夜は明ける」といったところか。
その中で本作は、捻りもなく直球のストーリーで、19世紀アメリカの奴隷の立場が分かりやすく、奴隷解放問題映画の入門編といった感じです。
残酷な場面はあまりありませんが、ミンティの兄が服を着替える所で黒い裸の背中に、皮膚が見えない程に鞭の跡だらけだったりとか、ミンティが「奴隷の女は初潮を迎える前から雇い主に犯されるのが当たり前」とサラっと語るところに、息を呑みます。

折しも今、ミネアポリスのジョージ・フロイド殺害事件で、世界中で抗議デモが行われています。
「BLACK LIVES MATTER」(黒人のいのちは大事だ)というスローガンを抱えて。
ミンティの時代から150年以上経っても、本質は変わらないのかという気がします。

(ハリエット本人)