平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

刑事コロンボ~その見事な人物造形

2011年09月28日 | テレビドラマ(海外)
 AXNミステリーで放映されている「刑事コロンボ」。
 シリーズで全69話あるそうだが、月曜日の夜は毎週これを見ている。

 さてコロンボ。
 その人物造形は実に見事である。
 まず、コロンボというだけで、<レインコートに葉巻、もじゃもじゃ頭のさえないイタリア系の小男>という姿が浮かぶ。
 次に「うちのかみさん」という世間話から入る聞き込み手法。
 これに関しては「うちのかみさん」だけでなく、「かみさんの親戚」「うるさい上司」といった人物も話題にしている。
 そして、ポンコツ寸前の車(←実はフランスの車でアメリカに3台しかない貴重なものらしい)に、怠け者の犬(←最後まで名前がつけられることはなかったらしい)。

 行動のディティルも、しっかり<コロンボ>している。
・聞き込みの際に筆記用具を持っていなくて、他人から借りるが、必ず返すのを忘れて「返して下さい」と言われる。
・パーティで美味しそうなパンがあると、コートのポケットに入れて持ち帰る。
・貧しい人の救護院に聞き込みにいった時は、施しを受けに来た人とシスターに間違われる。
・高い所が苦手、運動が苦手、船が苦手(←必ず船酔いする)
・射撃が苦手。警察官が受けなければならない射撃テストを10年間受けていなかったらしい。

 こんなディティルもある。
・かつては朝鮮戦争に従軍していた。
・ギャング映画が大好きだった。

 このようにコロンボは実に見事に作り込まれている。
 これは日本の刑事ドラマにも影響を与えていて、「古畑任三郎」は「コロンボ」のオマージュであろうし、「踊る大捜査線」の青島のコートはコロンボのそれを思わせる。
 「相棒」の右京さんは、コロンボと正反対の人物像を狙ったのではないか。

 そしてコロンボの捜査手法。
 コロンボは「細かいつじつまの合わないことを突き詰めていくと、大きな真実にぶつかる」と語っているが、これがコロンボ捜査の基本。
 たとえば、<自殺した人間がなぜ大爆笑する楽しい本を読んでいたのか?><非力な男がなぜ240ポンドのバーベルを持ち上げようとしたのか?><コンタクトレンズをはめていたのになぜ眼鏡をかけていたのか?>など。
 そして犯人だと思った人間に徹底的につきまとい、イライラさせてボロを出させる。

 ただし、このコロンボの捜査手法、現在から見ると、犯人を特定する詰めの部分では甘い所がある。
 多くの場合、コロンボは犯人を特定するために<罠>を仕掛ける。
 たとえば、<待ち構えていて、犯人が証拠の品を隠しにきた所を捕まえる>とか<協力者にウソの芝居をさせて犯人に真実を語らせる>とか。
 この罠に犯人が乗らなかった場合、犯罪の立証は難しくなるのだが、コロンボは敢えてそんな詰めを行う。
 名探偵ポワロなどのような論理的鮮やかさはあまりない。

 だが、いずれにしても「刑事コロンボ」は、人物造形や後の刑事ドラマに与えた影響など、偉大な作品であることは間違いない。



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