「九郎、ようがんばったな。
さあ、話してくれ、どのように平家を討ち果たしたのか。
お前の口から聞きたいのだ」
サブタイトルは『帰って来た義経』。
帰って来たのは義経の首だったのか……。
平泉にやって来て、穏やかになった義経(菅田将暉)。
畑仕事に従事して暮らしていくつもりらしい。
コオロギを退治する方法を考案したりして、前回、時政(坂東彌十郎)が諭したように、知恵を使い工夫して、いくさ以外の道を歩み出したようだった。
しかし──
義経は心の炎は消えていなかった。
心の底で燻っていて、義時(小栗旬)にこんなことを言った。
「平泉に手を出したら、その時は鎌倉が灰になるまで戦ってみせる」
そのための戦術まで考えていた。
それは梶原景時(中村獅童)が見たら、この策の見事さが一目でわかるというもの。
いくさの天才・九郎義経は死んでいなかった。
人を信じないで物事を見ることも義経は学んだ。
義時が唐突に持ち出した静御前(石橋静河)の話を疑い、その意図を読み取った。
物事の裏を読む力を身につけた義経は最強だろう。
だが、義経はもはやどうでもよくなっていた。
ドロドロした現実と立ち向かう意思や気力を失っていた。
自らの思いを全うした静御前の生き様・死に様が頭にあったのかもしれない。
里(三浦透子)の告白が追い打ちをかけたのかもしれない。
義経は里に怒りをぶつける。
「お前が呼んだのか!? 兄の策ではなかったのか!?」
いくさの天才・義経は里の手玉に取られていた。
ここでは愚かだった自分を思い知ったことだろう。
同時のショックも。
自分は妻にも騙され、裏切られていた。
すべては虚し。
もしかしたら義時が行き来した隠し通路で義経は逃げられたかもしれない。
しかし、現実に抗うことをしなかった。
義経、最期の策は弁慶の仁王立ち。
最期の打ち上げ花火を大はしゃぎして見る義経。
見事な義経像ですね。
「いくさの天才」「悲劇の貴公子」として描かれるのではなく、
「周囲に騙され裏切られてヘトヘトになった明るい虚無の男」として描かれた。
一方、義時の策を見破った義経だが、頼朝のあくどさ、したたかさには及ばなかったようだ。
「この首で平泉を守れるなら本望だ」
義経は自分が死ねば平泉は安泰と考えていた。
しかし頼朝(大泉洋)は──
「九郎を勝手に殺したことで平泉を攻める大義名分ができる。あくどいか? あくどいよのお!」
義経の死を利用した次の策を考えていた。
義経はこれを読めなかった。
…………………………………
そして義時。
静御前の話で義経の憎しみに火をつけて
「上手く運んだようだ」
ますます謀略に手を染めるようになってしまった。
この謀略は義経に見破られていたが、変わってしまった自分を義時はどう考えているのか?
新しい世を作るためには仕方ないと考えているのか?
さあ、話してくれ、どのように平家を討ち果たしたのか。
お前の口から聞きたいのだ」
サブタイトルは『帰って来た義経』。
帰って来たのは義経の首だったのか……。
平泉にやって来て、穏やかになった義経(菅田将暉)。
畑仕事に従事して暮らしていくつもりらしい。
コオロギを退治する方法を考案したりして、前回、時政(坂東彌十郎)が諭したように、知恵を使い工夫して、いくさ以外の道を歩み出したようだった。
しかし──
義経は心の炎は消えていなかった。
心の底で燻っていて、義時(小栗旬)にこんなことを言った。
「平泉に手を出したら、その時は鎌倉が灰になるまで戦ってみせる」
そのための戦術まで考えていた。
それは梶原景時(中村獅童)が見たら、この策の見事さが一目でわかるというもの。
いくさの天才・九郎義経は死んでいなかった。
人を信じないで物事を見ることも義経は学んだ。
義時が唐突に持ち出した静御前(石橋静河)の話を疑い、その意図を読み取った。
物事の裏を読む力を身につけた義経は最強だろう。
だが、義経はもはやどうでもよくなっていた。
ドロドロした現実と立ち向かう意思や気力を失っていた。
自らの思いを全うした静御前の生き様・死に様が頭にあったのかもしれない。
里(三浦透子)の告白が追い打ちをかけたのかもしれない。
義経は里に怒りをぶつける。
「お前が呼んだのか!? 兄の策ではなかったのか!?」
いくさの天才・義経は里の手玉に取られていた。
ここでは愚かだった自分を思い知ったことだろう。
同時のショックも。
自分は妻にも騙され、裏切られていた。
すべては虚し。
もしかしたら義時が行き来した隠し通路で義経は逃げられたかもしれない。
しかし、現実に抗うことをしなかった。
義経、最期の策は弁慶の仁王立ち。
最期の打ち上げ花火を大はしゃぎして見る義経。
見事な義経像ですね。
「いくさの天才」「悲劇の貴公子」として描かれるのではなく、
「周囲に騙され裏切られてヘトヘトになった明るい虚無の男」として描かれた。
一方、義時の策を見破った義経だが、頼朝のあくどさ、したたかさには及ばなかったようだ。
「この首で平泉を守れるなら本望だ」
義経は自分が死ねば平泉は安泰と考えていた。
しかし頼朝(大泉洋)は──
「九郎を勝手に殺したことで平泉を攻める大義名分ができる。あくどいか? あくどいよのお!」
義経の死を利用した次の策を考えていた。
義経はこれを読めなかった。
…………………………………
そして義時。
静御前の話で義経の憎しみに火をつけて
「上手く運んだようだ」
ますます謀略に手を染めるようになってしまった。
この謀略は義経に見破られていたが、変わってしまった自分を義時はどう考えているのか?
新しい世を作るためには仕方ないと考えているのか?
「銀英伝」のヤンにも生涯に2ヶ月だけ、愛妻フレデリカと共に「退役元帥」として「念願の年金生活」を送る「幸せな」時期がありました。
しかし、実質的には帝国の支配下にあった当時の同盟政府首班レベロは、帝国の高等弁務官レンネンカンプ(背後にオーベルシュタイン)の圧力によりヤンを除こうとしました。
オーベルシュタイン、レンネンカンプ:レベロ:ヤン=頼朝、義時;泰衡:義経
軍事の天才は、たとえ戦う意志がなく、自分は「平和で無害な」存在だと思っていても、自分の陣営にいないというだけで脅威となってしまう、という訳です。
>見事な義経像ですね。
最初私は今作の義経にはまったく共感できなかったのですが、後になるほど「マトモ」(共感できるよう)になってきて、最後にはそれなりに肯定的な、しかもこれまでの義経像とは異なった人物像になりました。
おっしゃるとおり義経は「成長」していたのでしょうが、皮肉なことに「没落」が「成長」をもたらしたように思います。
激情に任せて里を刺殺した直後、「すまぬ、里、すまぬ」と泣きながら里を抱いていた場面がこのことを劇的に象徴してました。
>そして義時。 ますます謀略に手を染めるようになってしまった。
ここまでくると、もはや義時も「善人」ではなくなりました。
今後は「主人公」としての牽引力をいかに確保してゆくのかが課題ですね。
最後に、いよいよ八重さんに「フラグ」が立ってきたようです。
義時にとって彼女の存在は大きかった筈なので、かなり大がかりな退場劇が用意されていることが予想され、恐ろしいような、楽しみなような気分です。
いつもありがとうございます。
やはり政治を考える時は「銀英伝」は良いテキストですよね。
田中芳樹先生は歴史に精通しているから、あれが書ける。
大河ドラマもそうですが、歴史を識ることは現代を見る目を養うことになるんですよね。
>皮肉なことに「没落」が「成長」をもたらしたように思います。
父・時政が「一度負けてみればいいんだ」みたいなことを言っていましたね。
負けて学ぶことがある。
負けて人生の深さを知る。
義経の場合は「明るい虚無・絶望」でしたが……。
だからこそ「武蔵坊いいぞ!」と大はしゃぎする義経に感じるものがあるんですよね。
義時は八重さんの退場が大きな転機になるんでしょうね。
八重さんの退場は義時が謀略に手を染めた報い?
八重さんの退場で、義時は謀略に手を染めることの愚かさを知るのかもしれません。