平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第1回「ふたりの父」~死にたくなければ強くなれ!

2012年01月09日 | 大河ドラマ・時代劇
 平清盛という人物には、さまざまな人格要素がある。
・もののけのような白河法皇(伊東四朗)の血。貴族の血。
・父・忠盛(中井貴一)の武士としての生き方。
 民のために戦う武士としての誉れと貴族にバカにされているという屈辱。
・亡き母・舞子(吹石一恵)から子守歌のように聞かされた「遊びをせむとや生まれけむ。戯れせむとや生まれけむ」という教え。
・貴族の政治に苦しむ民の姿(盗賊・朧月は貧しい民のために盗みを働いていたのだ)の目撃者。

 このように、清盛の中にあるさまざまな人格要素。
 中には<貴族>と<武士>という矛盾したものもある。
 これらが清盛の成長と共に、どのように開花していくか?
 自分の中にある<矛盾>を清盛がどう解決していくか?
 おそらくは白河法皇の血が、権謀術策のうずまく貴族社会の中で清盛を生き存えさせ、清盛も権謀術策を使い、頂点にまで昇りつめさせるのであろうが、実に楽しみである。
 また同時に、清盛という人物の<複雑さ><深さ>も感じる。
 大河ドラマで、久々に本格的な主人公が登場したという感じか。

 父親の忠盛もいい。
 出生の秘密に苦しむ平太(清盛)に忠盛は言う。
 「よいか、平太! 今のおまえは平氏に飼われている犬だ。俺のもとにおらねば生きてはゆけぬ弱い犬だ。死にたくなければ強くなれ!」
 ここには過去5年くらいの大河ドラマで描かれてきた<物わかりのいい、やさしい父親>はいない。
 敢えて息子を突き放して、たくましく育てようとする強い父親がいる。
 何しろ、白河法王や盗賊・朧月のような魑魅魍魎がいる時代ですからね、甘やかして育てれば、たちまち彼らに食われてしまう。父親は「死にたくなければ強くなれ!」としか言えないのかもしれない。

 さて、ふたたび平清盛。
 さまざまな要素を抱えながら、どのような<心の軸>を持った人物に成長していくか実に楽しみです。




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14 コメント

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期待大! (Nolly Chang)
2012-01-09 11:11:53
コウジさんお久しぶりです。
今年の大河ドラマには期待できそうですね。

今回は「ふたりの父」ということでしたが、母は3人? 生みの親の白拍子、家の母の和久井映見、平太の成長を見守る育ての母の松田聖子。
清盛の人物形成を面白くしそうです。

大河は1年かけてやるのだから、しっかり人物の生き方を書いてほしい。
とても楽しみです。
返信する
舞子 (TEPO)
2012-01-09 11:34:07
久しぶりにWikiで調べる気になりました。
史実では清盛の母は「祇園女御の妹?」となっています。また、白河法皇の落胤説もあるようですが「無名の白拍子・舞子」は本作の創作のようです。

しかしこの舞子と忠盛との「出会いと別れ」は無駄を省いた簡潔な描写ながら印象深い悲恋物語でした。

(1)川縁まで這ってきた舞子を当初乞食かと思うが実は身重の女性と知り取りあえず保護する忠盛。
(2)為義との会話から舞子の素性が知れてからの修羅場。
(3)の人間性に触れて心を開きかけ「舞子……と申しまする」と名乗る。
(4)忠盛の身の回りの世話を始める舞子。
(5)狩りで獲った鹿の角を贈る忠盛と舞子との束の間の幸せ。
(6)白河法皇の面前で己の身を顧みず自分を庇おうとする忠盛に赤子を託し、自ら殺されることを選ぶ舞子。

(2)では切羽詰まった舞子の言葉がきっかけで「血に汚れた太刀」「体を売る遊女」と互いの最も痛いところを面罵しあう場面があります。
(3)を転回点に(4)(5)では忠盛と舞子との間にはすでに愛情が成立していると言っていいでしょう。普通の状況ならば-舞子がお尋ね者でなければ-幸福な夫婦・恋人の情景と言えます。
特に(2)が下敷きとなって(4)での「血で汚れた衣服」が効果的な衣服となっています。そしてこれを洗いながら舞子が口ずさむ
>「遊びをせむとや生まれけむ。戯れせむとや生まれけむ」
という唄は、武士としての生き様に悩む忠盛を力づけるものであると同時に、今回限りしか登場しない彼女が本作全体に残す「遺産」だと言えます。
しかし(4)(5)の段階では忠盛の「愛」にはまだ、単に庇護して「情が移った」といった程度のものかもしれない曖昧さがありますが、これを振り払う場面が(6)です。白河法皇に「そちが斬れ」と命じられた忠盛を舞子は見つめます。そして相手が白河法皇であろうとも自分に対する真実の愛を貫く忠盛の心底を見て、彼女も真実の愛で応えたわけです。

舞子母子にとっていわば「行きずりの人間」に過ぎぬ忠盛がなぜ平太(清盛)を自分の子として愛したのかがこれで説得的に描かれています。
忠盛にとって平太を愛することは舞子を愛することだったわけです。

忠盛は平太が出生の秘密を知るまでは実子としての愛情を注いでいたのでしょう。しかし
>出生の秘密に苦しむ平太(清盛)に忠盛は言う。
>「よいか、平太! 今のおまえは平氏に飼われている犬だ。俺のもとにおらねば生きてはゆけぬ弱い犬だ。死にたくなければ強くなれ!」
これは出生の秘密を知った新しいフェイズに対応した新しい愛の形というわけです。

ところで史実でも「幼少期の清盛は祇園女御の庇護の下で成長した」とのことです。清盛の母が祇園女御の妹であるならば、彼女は実の伯母ということになるので当然のことでしょう。
本作での祇園女御は同じ「白拍子出身」ということで舞子を「妹のように」思っている、とのことでしたが、白河法皇、舞子、忠盛の間での経緯をすべて目の当たりにしているがゆえに、実の伯母以上の、母親に近い愛情を清盛に注ぐのではないか、と予想されます。

ともあれ、今回はただ一度だけの登場である吹石一恵さんの舞子に拍手を送りたいと思います。
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私も 舞子 (megumi)
2012-01-09 17:36:27
コウジさん  こんばんは♪

私も TEPOさんと同じく
『舞子と忠盛】に注目でした
詳しくは
TEPOさんが書いてらっしゃるとおりの感想ですので 省略します
1回限りでいなくなるのが惜しいほどの吹石一恵さんでしたね
演技も良かったし 綺麗でした

和久井映見さん演じる義母の言葉と形相に 
平太が何かを悟るところが切なかったです
日頃は分け隔てしないように努力していても
実子に危機が迫れば ああいうふうになるんでしょうね

中井貴一さん 長年の贔屓役者なので楽しみに
見ていくつもりです
「武田信玄」での主役で初登場して以来 大河の常連ですが
中井さんと和久井さんは 「武蔵」でも柳生宗距夫妻でしたね 

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主人公を描く (コウジ)
2012-01-10 08:45:54
Nolly Changさん

久しぶりですね。
コメントありがとうございます。

>大河は1年かけてやるのだから、しっかり人物の生き方を書いてほしい。

おっしゃるとおりですね。
今回の「平清盛」は、作家が清盛という人物と真っ正面から向き合っている感じがします。
なので、清盛がどのように悩み、成長していくかが楽しみです。

メッセージも。
「死にたくなければ強くなれ!」
って、力強い言葉ですよね。
ある意味、現代に生きるわれわれにも向けられた言葉。
ワーキングpoor、格差の時代。
自分を甘やかすのではなく、必要なのはまさに「死にたくなければ強くなれ!」ですよね。
返信する
邪悪と対峙するもの (コウジ)
2012-01-10 09:07:58
TEPOさん

今年もよろしくお願いします。
TEPOさんは、舞子と忠盛の関係に着目されましたか。
僕は、白河法皇の不気味さ。
まさに妖怪変化。
人間は業を突きつめていくと、ここまでになれるんですね。
これに対峙するのが、忠盛であり舞子。
ふたりの愛が胸を打つのも、邪悪な白河法皇という巨大な対立軸があったからなんでしょうね。
また、舞子が矢を受けて死んだのも白河法皇に対する舞子なりの戦い方。
結果、自分の愛も貫き、忠盛や平家一門も守ったわけですから、見事な勝利と言えましょう。

祇園女御の存在は、これから楽しみですね。
忠盛が父親なら、祇園女御は母親?
清盛の成長に彼女がどのように関わるのか、楽しみです。
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父親と母親 (コウジ)
2012-01-10 09:18:03
megumiさん

いつもありがとうございます。

僕は舞子が吹石一恵さんだとは気づきませんでした。
番組予備知識から、「もしかしてこれが松田聖子さん? きれいすぎる」などと思ったりして(笑)

>日頃は分け隔てしないように努力していても
実子に危機が迫れば ああいうふうになるんでしょうね

という義母に関わる感想は女性ならではですね。
僕は「そういうものか」と頭では理解出来ても、感じることは出来ない。

和久井映見さんの母親と清盛の関係も注目ポイントですね。
清盛の青年時代は、父親と母親との関係の物語になりそうです。
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白河法皇の「邪悪」 (TEPO)
2012-01-10 12:25:39
白河法皇についてはいくつか思ったことがあります。

まず、「平家物語」等で形成された従来の清盛像は、伝統的に「人を人と思わぬ暴虐な権力者」というマイナスイメージを担わされ続けてきたと思います。
本作ではそうした「影」のイメージを清盛自身に代わり白河法皇がそのまま一手に引き受けているように思いました。

また、清盛の出生に関して白河法皇の落胤説を明確に採用していることも、清盛から「権力の簒奪者」というマイナスイメージを払拭する効果があるように思います。
清盛は「隠れ皇子」である以上、いかに栄達を極めようと「不当」感はないわけです。光源氏も、母親の身分が低かったので臣籍に降ったものの、もともとは「皇子」でした。

そして、コウジさんが記事でもお書きになっているように、「白河法皇」は清盛という人物の一つの構成要素となってゆくのでしょう。
「妖怪変化の血」-ただしそれは清盛の「すべて」ではない-が清盛の人物像に深みを与えてゆくことになるのだろうと期待します。


P.S.「舞子」に戻りますと、私は吹石一恵さんという女優さんを初めて知りましたが、好感を覚えました。
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実体験(?)です (megumi)
2012-01-10 12:36:53
コウジさん  こんにちは

一言だけ・・・

>義母に関わる感想は女性ならではですね

私の母は弟が2才未満で死にました
ほどなく30代半ばの継母が来てくれましたが
新婚旅行先で 
父は「子供を産むのを諦めて欲しい」と頼んだそうです
父の理不尽な依頼が 長い間 腑に落ちませんでしたが
このドラマを見て 初めて納得しました
それでも 同じ女性として継母には気の毒なことをしたと思っています
返信する
平家物語と源氏物語 (コウジ)
2012-01-10 19:19:24
TEPOさん

おっしゃるとおり本作は、「平家物語」とはまったく違った感じで描かれそうですね。
白河法皇のご落胤ということで、奇しくも「源氏物語」の雰囲気もある。
それに鳥羽上皇でしたっけ、白河法皇の力で無理矢理引退させられた天皇との確執も生まれそうですね。
まさに平安時代という感じ。
まだ、これからですが、平清盛という人物が新しくどのように描かれるか楽しみです。
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難しいですね (コウジ)
2012-01-10 19:43:22
megumiさん

どうお答えしていいかわからないのですが、僕も同じ立場だったら
>継母には気の毒なことをしたと思っています
という感想を持ったと思います。
あるいは、新しいお母様がそれでも心満たされた幸せな結婚生活を送っていてくれたらいいなとも思います。
人が何を幸せに思うかは人それぞれですからね、実子がいなくても幸せな方はいらっしゃると思いますし、ドラマに話を戻せば、舞子は矢に貫かれて死んでも十分に幸せだったと思いますし。
難しいですね。

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