「将軍を殺せ。それがこたびのそなたの役目じゃ」
「将軍を倒し、世を平らげ、大きな国をつくり、帝にひれ伏さず、万乗の主となる」
これが光秀(長谷川博己)の背中を最終的に押した原因になった。
保守的な光秀にとって「将軍」と「帝」は絶対的なもの。
将軍と帝を否定して、自分が「万乗の主」として君臨する。
光秀にとっては堪えがたいことであっただろう。
それと、「わしの背中を押したのは誰だ? そなたがわしを変えたのじゃ」
信長(染谷将太)言ったように、現在の信長をつくってしまった責任。
…………………
本能寺では光秀と信長に具体的なせりふはなかった。
信長が発したせりふは、
「十兵衛、そなたか! そうか十兵衛か……であれば是非もなし」
光秀は何も語らない。
ただ燃え盛る本能寺を見つめるのみ。
脚本の池端俊策さん、せりふに拠る説明を避けましたね。
ふたりの役者さんの芝居に委ねた感じ。
視聴者にも光秀と信長の思いを想像し、考えることを要求して来た。
信長は炎の中で、
光秀は炎を見つめながら、
今までいっしょに歩んできた道を思い出していたのかもしれない。
どこでふたりの道が違ってしまったのかを考えていたのかもしれない。
安寧な世になり、ふたりで穏やかに過ごす日々を夢見ていたのかもしれない。
自分が信長を討ち、光秀に自分が討たれることに必然を感じていたのかもしれない。
信長はこれで子供の頃のように長く眠れると考えたのかもしれない。
光秀は、自分自身でもある信長を失って、自分の死を考えたのかもしれない。
…………………
そんなふたりと対照的に秀吉(佐々木蔵之介)は血気盛ん。
「やればいいのじゃ。明智殿がやれば面白い!」
「明智殿が天下をぐるりと回転してくれたわい!」
こういう感傷や迷いのない人物が天下を取るんだよな。
細川藤孝(眞島秀和)は裏切り。
筒井順慶(駿河太郎)、家康(風間俊介)らはリアクションなし。
菊丸(岡村隆史)、玉(芦田愛菜)は本能寺後、登場せず。
ここは残念だ。
彼らの心にはどんな思いや感情が沸き起こったのか?
自分に呼応しない藤孝らに光秀は何を思ったのか?
ここはひとつのドラマになるのだが、省略されてしまった。
…………………
エピローグは三年後──
三年後であるため、登場人物たちに強い感傷はない。
帝は秀吉のことを語り、
義昭は小早川のことを語り、信長も光秀も世を平らかにする思いを持っていたと客観視していた。
彼らの中で、光秀や信長はすでに死んでいった武将のひとりになりつつある。
何か寂しいね……。
三年の月日とはこういうものなのか?
駒(門脇麦)が見たものは何なのか?
駒は伊呂波太夫から光秀の伝言を聞いたに違いない。
「駒殿に伝えてほしい。麒麟はこの明智十兵衛光秀が必ず呼んでみせると」
秀吉の世になっても、麒麟はまだ来ていない。
だから麒麟が来る世にするために光秀は生きて、まだ戦っている。
駒はこう思ったに違いない。
だから光秀を見た。
光秀が生きているか否か。
これも視聴者に委ねられた。
「将軍を倒し、世を平らげ、大きな国をつくり、帝にひれ伏さず、万乗の主となる」
これが光秀(長谷川博己)の背中を最終的に押した原因になった。
保守的な光秀にとって「将軍」と「帝」は絶対的なもの。
将軍と帝を否定して、自分が「万乗の主」として君臨する。
光秀にとっては堪えがたいことであっただろう。
それと、「わしの背中を押したのは誰だ? そなたがわしを変えたのじゃ」
信長(染谷将太)言ったように、現在の信長をつくってしまった責任。
…………………
本能寺では光秀と信長に具体的なせりふはなかった。
信長が発したせりふは、
「十兵衛、そなたか! そうか十兵衛か……であれば是非もなし」
光秀は何も語らない。
ただ燃え盛る本能寺を見つめるのみ。
脚本の池端俊策さん、せりふに拠る説明を避けましたね。
ふたりの役者さんの芝居に委ねた感じ。
視聴者にも光秀と信長の思いを想像し、考えることを要求して来た。
信長は炎の中で、
光秀は炎を見つめながら、
今までいっしょに歩んできた道を思い出していたのかもしれない。
どこでふたりの道が違ってしまったのかを考えていたのかもしれない。
安寧な世になり、ふたりで穏やかに過ごす日々を夢見ていたのかもしれない。
自分が信長を討ち、光秀に自分が討たれることに必然を感じていたのかもしれない。
信長はこれで子供の頃のように長く眠れると考えたのかもしれない。
光秀は、自分自身でもある信長を失って、自分の死を考えたのかもしれない。
…………………
そんなふたりと対照的に秀吉(佐々木蔵之介)は血気盛ん。
「やればいいのじゃ。明智殿がやれば面白い!」
「明智殿が天下をぐるりと回転してくれたわい!」
こういう感傷や迷いのない人物が天下を取るんだよな。
細川藤孝(眞島秀和)は裏切り。
筒井順慶(駿河太郎)、家康(風間俊介)らはリアクションなし。
菊丸(岡村隆史)、玉(芦田愛菜)は本能寺後、登場せず。
ここは残念だ。
彼らの心にはどんな思いや感情が沸き起こったのか?
自分に呼応しない藤孝らに光秀は何を思ったのか?
ここはひとつのドラマになるのだが、省略されてしまった。
…………………
エピローグは三年後──
三年後であるため、登場人物たちに強い感傷はない。
帝は秀吉のことを語り、
義昭は小早川のことを語り、信長も光秀も世を平らかにする思いを持っていたと客観視していた。
彼らの中で、光秀や信長はすでに死んでいった武将のひとりになりつつある。
何か寂しいね……。
三年の月日とはこういうものなのか?
駒(門脇麦)が見たものは何なのか?
駒は伊呂波太夫から光秀の伝言を聞いたに違いない。
「駒殿に伝えてほしい。麒麟はこの明智十兵衛光秀が必ず呼んでみせると」
秀吉の世になっても、麒麟はまだ来ていない。
だから麒麟が来る世にするために光秀は生きて、まだ戦っている。
駒はこう思ったに違いない。
だから光秀を見た。
光秀が生きているか否か。
これも視聴者に委ねられた。