平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

リンダ リンダ リンダ

2008年09月17日 | 邦画
★普通の青春ドラマだと山あり谷ありドラマチックに盛り上げていくものだが、この作品にはそれがない。
 淡々と軽音楽部の女子高生の日常を描いていく。
 それが妙にリアル。

 物語の発端はこう。
 学園祭前、ギターの萌が指を骨折!ブチ切れたボーカルの凛子と恵がケンカ!
 結果バンドが空中分解!!
 なかなかドラマチック。
 だが、その後がゆるい。
 恵(香椎由宇)は何となく学園祭に出演するか迷い、何となく韓国の留学生・孫(ペ・ドゥナ)にヴォーカルをやってみないかと声をかける。
 ブルーハーツをコピーすることになった経緯も何となくだ。たまたま再生したカセットテープに入っていたから。

★その後、恵たちは練習を始めるが、そこで描かれる友情も淡々としている。
 深夜練習をして学校の屋上で夕食を食べる時に「こういう時間は一生記憶に残るね」と友達と過ごす青春の一瞬を切り取ってみせる。
 そう、記憶に残る青春時代の思い出とはこういう何気ない時間なのだ。
 決して劇的な瞬間ばかりではない。

 留学生の孫は孤独だったが、バンドにいれてもらったことで恵たち友達が出来る。
 その喜びを彼女は洗面所でさりげなく「ありがとう」と語る。
 また自分が文化祭のライブでメンバー紹介をする姿を空想して喜びを感じる。
 仲間に囲まれてステージに立つ自分の姿こそ、孤独でない自分の姿なのだ。

 青春ドラマに必ずある恋愛も淡々としている。
 孫に告白する男の子。
 韓国語を使って告白。男の子の誠実な気持ちが伝わっていい告白シーンだが、孫の返事は
 「嫌いじゃないけど好きでもありません。仲間との練習があるから行ってもいいですか」
 とおよそ劇的とはかけ離れたもの。
 しかし、その中に思いがけなく告白された戸惑いとくすぐったいようなほのかな喜びとが感じられる。

★これら淡々とした中にある繊細さ。
 これを言葉で表すのは難しく実際に作品を見てもらうのが一番だが、ともかく何とも言えぬ雰囲気を醸しだしている。

 そしてラストは文化祭ライブ。
 静から動へ。
 このライブのシーンまでが<静>なので、逆にこの<動>のライブシーンが強いインパクトになる。

 この作品は青春映画の佳作だ。
 淡々とした中に見事に青春を描き出している。


コメント
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