平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

幸せの時間

2006年01月12日 | コミック・アニメ・特撮
「幸せの時間」(国友やすゆき・著 アクションコミックス/双葉社)の主人公・浅倉達彦の生活はムチャクチャで凄まじい。

 浅倉は建設会社勤務。
 大型宅地造成のプロジェクトを形にするため、民事党の代議士・片岡平蔵の接待を任される。その宅地予定地であるT市は緑化保全地域として法律で規制されている地域。その規制をなくすために片岡の力を借りようというのだ。

 だが、この片岡は50代前半で一筋縄ではいかない男。
 料亭にやって来るや「今日はどんなふうに楽しませてくれるのかな。忙しいんだ。時間の無駄になるような接待だけはカンベンしてくれたまえよ」と言う。
 浅倉と上司の専務が用意した接待は「売れてるAV女優のお座敷でのストリップ」。
「もしよろしければ、あの娘、お相手の方もセッティングしておいたのですが」という専務に片岡は言う。
「バカにするな!この私に誰と寝たかわからん公衆便所のような女を抱けと言うのか!」
 そして「あの女、君にやるよ。ここで抱いてみろよ」と浅倉に目の前でセックスすることを要求する。
 これも仕事のためと苦渋に耐え洋服を脱ぐ浅倉。
 しかし、今度はこう言われる。
「冗談に決まっているだろうが。誰がきさまの薄汚いケツを見たいなどと思うか」

 代議士の片岡の前ではこうだが、この浅倉、実はかなりのワルである。
 下請けの建設会社に手抜き工事をさせキックバックをもらい、妻・子供がいるにも関わらず高村耀子・望月雅代という愛人がいる。
 そしてこの愛人たちとの関係がすごい。
 耀子は妊娠して頭がおかしくなり、合い鍵を使って留守の浅倉の家に忍び込むと浅倉のベッドの上ではだかになる。そして陶酔して耀子は言う。
「パパのベッドでお昼寝よ、赤ちゃん。やさしいパパの匂いがするわね。ああ、早く3人で一緒に暮らしたい」
 雅代は借金を肩代わりしてもらった代償に浅倉に抱かれたのだが、浅倉とのセックスで次第にマゾに目覚めていく。そして、Mが目覚めていくことで興ざめした浅倉は雅代を捨てる。

 また、この浅倉、家庭はすでに崩壊している。
 妻の智子は高校時代の同級生と情事を重ね、息子は出て行きヒモの様な生活。娘は浅倉の同期の宣伝部長・矢崎に恋している。

 最初の接待が失敗し2度目の機会が与えられた浅倉は片岡をVIP専用の高級娼館へ連れて行く。
 片岡は政治家が接待を要求するわけにはいかないからと建前上固辞するが、娼館側から提供させていただくという形でひとりの娼婦を抱くことになる。
 しかし、この片岡、実はサディスト。
 ネクタイで首を絞め、花瓶を女性器に入れようとする。
 結果、浅倉は商品を台なしにした慰謝料で娼館から1000万を要求され、「払えない」と言うと怖い男にボコボコにされる。
 また、片岡には「こんな不愉快な思いをさせられるとは思わなかったぞ」と言われ、詫び料という名目の選挙資金5000万を求められる。
 浅倉は早速、専務に会社のお金を廻すように頼み込むが、専務は「君がそんなとこへ先生を連れて行くからこんなことになるんだよ。すべて君の責任でケリをつけたまえ!」と突っぱねられる。
 そして、専務は浅倉が帰った後にひとりつぶやく。
「世の中、すべてきれいごとだけで動いているわけじゃないんだ。清濁あわせ飲むような奴でなきゃ上にあがったって勝ち抜けやしない。これは試練なんだよ、どんな手を使ってもやり遂げるという凄さをみせたまえ」

 浅倉はいったん会社を辞めることを考えるが、リストラされて公園にいる男を見てこう決心する。
「あれがまともな人生のなれの果てか。くそくらえだ!こうなったらとことん行くとこまで行ってやる!」

 浅倉は破滅に向かって歩み始める。
 下請けの建設会社から金を集めて娼館に金を返し、片岡には5000万を渡す。同時に自分のかつての愛人であったマゾヒスト雅代をこのサディストの代議士にあてがう。
「この娘はまだまだ未熟者で、できれば先生に教育していただければ嬉しいのですが…。きつくとことんどんなことをなさってもかまいません」
 ためらう雅代には「俺のためなら何でもするって言ったじゃないか。ガタガタ言うんじゃねえ。このエロバカのクサレ女が!オレと別れたくなかったら、あのクソじじいにクサレチンポをしゃぶりまくってくるんだよ!」と言う。

 シロウトのM・雅代を与えられて満足した片岡はT市の開発計画を全面的に
バックアップするという連絡を後日、浅倉に伝える。

★研究ポイント
 権力を握ること、権力を握っていくとはどういうことか。
 政治家と企業の癒着のリアリティと渦巻く欲望の凄まじさ。
 平凡であること、善人であること、幸せとは?
コメント
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