goo blog サービス終了のお知らせ 

平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

それでも、生きていく~満島ひかり、すごい女優さんが現れたものである

2011年07月09日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 双葉役の満島ひかりさんがすごい。
 映画「川の底からこんにちは」で、独特の雰囲気を出せる女優さん(以前はFolder5というエイベックスのアイドルグループのメンバーだった)だなと思っていたが、それがこの作品で上手く活かされている。
 柄本明さんも瑛太さんも見事だったが、彼女の演技に魅入られてしまう。

 双葉というのは難しい役である。
 深見達彦(柄本明)、洋貴(瑛太)の痛み・苦悩も、加害者の兄を持つ人間として理解できる。申し訳ないと思える。
 一方で、自分たちは兄の起こしたことで中傷被害を受けているが、それは兄のしたことで自分たちには関係ないことと、事件を少し引いて見ることも出来る。
 また、兄への憎しみと愛情もある。
 洋貴たちや自分たち家族をどん底に陥れた憎むべき兄だが、兄への愛情も残っている。
 双葉はそんな相反する心の葛藤を抱えている。
 非常に不安定。状況によってどちらにでも傾いてしまう。
 今回のラストは、お葬式で姿を見て、兄への愛情が噴き出してしまった。
 歩道橋で洋貴の足に絡みついて「お兄ちゃん、逃げて!」と叫ぶ。

 洋貴との会話のやりとりも独特の距離感、ズレ方があって、非常に見応えがある。
 洋貴は少し心を病んでいる感じだ。
 箱からアダルトビデオが出て来た時のリアクションは「15年延滞したら(延滞料金は)どれくらいになるんだろう」。普通は死んだ妹のことを思い出したり、双葉に見られて恥ずかしいと思ったりするはず。
 おにぎりのことで双葉が「シャケがいい」と言い出すと、「すみません。シャケに気づかなくて」と返す。
 ファミレスで双葉が「タンドリーチキン」を頼むと、「タンドリーとか好きなんですか?」と尋ね、双葉が同じ系列のファミレスでバイトしていたことを知ると、「その店もここと同じように空いているんですか?」と尋ねる。
 洋貴はリアクションが微妙にずれている。
 そのズレたせりふに双葉はせりふと表情で、独特の距離感をもって返す。
 これを下手な女優さんがやったら、あの雰囲気は生まれない。
 <距離感><雰囲気>。
 非常に抽象的な言葉だが、こういう言葉でしか、あのやりとりを表現できない。

 満島ひかり。すごい女優さんが現れたものである。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仲里依紗さんの魅力~幸せになろうよ

2011年06月02日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 仲里依紗さんを面白い女優さんだな、と思ったのは、桑田佳祐さんの「本当は怖い愛とロマンス」のPVに出演している彼女を見た時。
 桑田さんが、♪ 女って怖~い ♪ と歌うと、メイド服姿の仲さんが、大口開けてカッカッカッと笑うのだ。
 何とも不思議でコワイ映像。

 そして月9「幸せになろうよ」の仲さんが演じる桜木まりか。
 実に人間っぽい。

 春菜(黒木メイサ)の新しいマッチングの相手をまりかは紹介していく。
 まりかにしてみれば、春菜に新しい相手を見つけて、純平(香取慎吾)と春菜がくっつくのを阻止したいのだ。
 だが、その紹介相手に純平(香取慎吾)は悉くイチャモンをつけていく。
 心臓外科医は土日が勤務だからダメ。クラシックが趣味の飲食店経営者は、趣味にお金がかかり過ぎるからダメ。年収一千万の建設会社社員は、浮気癖があるからダメ。
 このダメ出しに対するまりかのリアクションが面白い。
 心臓外科医の時は、愛想笑い。
 飲食店経営者の時は、チッ!と舌を鳴らす。
 建設会社社員の時は、愛想笑いの後にファイルを机に叩きつける。

 純平と春菜が公園でお互いの気持ちを確認し合うと、サングラスをかけて遠くから見ているまりかは「イチャイチャしやがって!」

 こういうコメディ・リリーフ的な役を演じられる役者さんは、男優さんには多いが(例えば、小松原進役の大倉孝二さんとか)、女優さんは少ない。
 多部未華子さんとかはそうだが、多部さんは既に主役級。
 こうなると、仲里依紗さんの出番である。
 多部さん同様、仲さんも整った美人とは言えない。(ファンの方、すみません!)
 どちらかと言えば、ファニーフェイス。でも、見え方によっては美人。
 こういう存在は貴重だ。
 たとえば、まりか役を女芸人さんがやることも可能だと思うが、そうすると純平とのやりとりは完全に漫才になってしまう。
 仲さんがやるから嫉妬する女性の可愛らしさみたいなものが出る。

 というわけで仲里依紗さん、これからも仕事が増えていくでしょうね。
 貴重な個性、キャラクターですから。
 同時にまりかとは全く違った役の彼女も見てみたい。


コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

瑠璃の島~成海璃子さんと緒形拳さん

2011年05月07日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 芝居には相手役が必要である。
 ひとりのシーンでのひとり芝居というものもあるが、基本は相手役がいてせりふのやりとりがあって成立する。

 「瑠璃の島」で、成海璃子さんが緒形拳さんと遭遇したのは女優として幸せなことだっただろう。
 まず、名優・緒形拳なら相手がどんな演技をしてきても受けとめて返せる。
 この安心感があるから相手役は自由に演技が出来る。
 また、緒形さんの演技を受けとめる時は、緒形さんから感情や気持ちの波動が伝わってくる。
 嬉しい気持ち、悲しい気持ち、怒り、とぼけたユーモア、そんなものが伝わってきて、相手役も気持ちで返すことが出来る。
 せりふや演技のやりとりをすることによって、お互いの感情や気持ちがどんどん高まってきて、素晴らしいシーンになる。

 成海璃子さんは緒形拳さんと共演することによって、演技とは何かを実体験したに違いない。
 緒形さんの演技と子役ならでは柔軟な感性で、主人公・藤沢瑠璃になり切ることが出来たに違いない。
 「瑠璃の島」で成海さんと緒形さんのシーンを見ているとそんなことを感じる。

 役者には輝く瞬間がある。
 身も心も役になりきって、生命が燃えてまぶしい光を放つ瞬間。
 われわれはその輝く瞬間を見るために作品を見ている。
 「瑠璃の島」の成海璃子はまさに輝いている。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハリセンボン 近藤春菜さん~登場するだけで番組を熱くする個性

2011年04月24日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 登場するだけで番組が活気づく芸人さんがいる。
 ハリセンボンの近藤春菜さんだ。

 彼女が登場すると、共演者はお馴染みのツッ込み。
 「幸楽にいなくていいの?」「角野卓造じゃねーよ!」
 「映画撮らなくていいの?」「マイケル・ムーア監督じゃねーよ!」
 「今日は顔が緑じゃないの?」「シュレックじゃねーよ!」
 「今日は怒ってないの?」「カンニング竹山じゃねーよ!」
 「国会は休みじゃないの?」「亀井静香じゃねーよ!」

 このパターンでどんどん番組が盛り上がる。
 会場が熱くなる。観客が笑いやすくなる。
 バラエティ制作者にとって、こんな重宝な芸人さんはいないだろう。

 それにしても近藤さんのこのパターンのバリエーションはすごい。
 上記に人以外にも、和泉元彌さんの母・節子さんやスーザン・ボイル、野村監督、船場吉兆のささやき女将、宮崎アニメのポニョなど、たくさんある。
 角野卓造さんだけだったら、これほどブレイクはしない。

 近藤さんの場合、あの容姿が大きな武器になっている。
 あの容姿を憂うのではなく(僕は十分に可愛いと思いますが)、活かすことを考えている。
 人間、自分を掘り下げていけば、社会に受け入れられ、魅力的になっていくんですね。

 そう言えば、少し前の「笑っていいとも!」で、草なぎさんにこんなフリをされていた。
 「幸楽にいなくていいの?」「角野卓造じゃねーよ!」
 「映画撮らなくていいの?」「マイケル・ムーア監督じゃねーよ!」
 「今日は顔が緑じゃないの?」「シュレックじゃねーよ!」
 と、いつものパターンでツッ込まれた後に、草なぎさんがこうフリをする。
 「返しが上手いですね」
 すると、近藤さんは困って、「はい……」。
 そして「何て返せばいいんだよ!」。
 こんな変則パターンもバリエーションになった。

 近藤春菜さん、今後もどんどん番組を熱く盛り上げて下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

可愛い佐々木希さん~笑っていいとも!

2011年04月09日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 佐々木希さんて、やっぱり可愛い!
 何気なく「笑っていいとも!」木曜日を見ていたら、新コーナー<知ってるハイスクール>で教師役をやっていた。眼鏡をかけて。

 コーナーは、あるテーマについて、タモリさんや鶴瓶さん、千原ジュニアさんらがウンチクを述べ、佐々木さんが「よく出来たわね」とほめてあげるというもの。
 これを照れながらやる佐々木さんが可愛い!
 また、ここでは佐々木さんが実質、コーナーをまわす司会。
 だが、その司会っぷりが実にたどたどしい。
 それが逆に新鮮!
 そんな佐々木さんを困らせようとしたのか、タモリさんは「先生、叱って下さい」とヘンタイ発言。

 <照れてたどたどしい佐々木さん>
 でも、これだけで画面に惹きつけてしまう力ってすごい。
 たどたどしい司会をするタレントさんは何人かいる。
 たとえば見たことはないが、スザンヌさんなんかが司会をやれば、そんな感じになるだろう。
 だが、照れて絵になるタレントさんはなかなかいない。
 むしろテレビで照れた顔を見せることはタレントさんにとって禁じ手。
 あるいは、スザンヌさんが司会をやれば、まわりの芸人さんがいろいろツッ込んだりするだろうが、佐々木さんにはツッ込めない。
 せいぜいタモリさんがやったくらいに「先生、叱って下さい」というくらい。
 これが逆に新しい! 
 何と言ってもテレビは新鮮でなくっちゃ!

 このコーナーは明日の増刊号でもオンエアされると思うので、興味のある方はぜひご覧になって下さい。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

国辱・江頭2:50さんのこと~ぷっスマ

2011年04月07日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 テレビから<毒のあるいかがわしい芸人>が消えて久しい。
 そんな中、唯一がんばっているのが、江頭2:50さん。

 有名なエピソードは、トルコでの全裸事件。
 トルコのレスリング大会で全裸になり、警察に逮捕。
 イスラム世界では、人前での全裸は最大のタブーらしい。
 ということで、この事件で江頭さんはオノ・ヨーコさんに次いて、トルコで有名な日本人第2位に、また元フジテレビのキャスター・露木茂さんは「国辱者」と非難。
 まさに伝説である。

 先日の「ぷっスマ」での江頭2:50SP。
 すごいなぁ!
 草なぎ剛さんに出すクイズ問題。
 黒のブリーフの尻の部分にクイズの問題が書いてあるのだが、尻を振ったり回転させたりして、草なぎさんは問題を読めない。
 おまけに最後にはブリーフを脱いで全裸に。
 そして、何と尻に問題が書いてある。
 その問題の書いてある尻を突き出して、草なぎさんに「読め」と迫る。

 体もメチャクチャ張っている。
 バック転をして頭ごと、堅い床に直撃。
 これを何度も繰り返す。
 死んじゃいますよ、こんなことしていたら。

 あるいはリンボーダンス。
 クリアすると、黒のタイツの中に腕を突っ込んで、そそり立つ男性の×××をパフォマンス。

 すごいなぁ、この人は。
 メチャクチャなハイテンション!
 こんな人が街を走りまわっててて、女の子を追いかけまわしていたら、確実に逮捕される。

 しかし、こんな江頭さんが、「エガちゃん」として愛されるのは、実は<無器用でいい人>だから。
 過激なパフォーマンスは完結せず、いつも共演者に逆襲される。
 エガちゃんも実は小心で、謝ってしまう。
 ユースケ・サンタマリアさんに拠ると、普段の江頭さんは、努力家で、番組前には怪我をしないように入念にストレッチをする常識人のようだ。

 まとめます。
 <毒があっていかがわしい芸人・江頭2:50さん>
 遠くから見ている分には、こんな面白い人はいない。
 命ぎりぎり体を張って、<国辱>覚悟で全裸になる。
 すごい生き様! すごい覚悟!
 江頭さんが現れれば、世界は大混乱! 混沌、カオスの世界に変わる。
 まさにわれわれの退屈な日常を活性化させてくれる<トリックスター>だ。

 最後に江頭さんの名言をひとつ。

 『1クールのレギュラーより、ひとつの伝説』

 ぜひ、今後も伝説を作って下さい。


※追記
 「リアルライブ」の配信記事では、こんなことが紹介されていた。
『被災地に名前も伝えずに救援物資を届けるなど、近年異様なほどの男前ぶりを見せているタレントの江頭2:50。
 男前効果もあってか、この自粛ムードの中、江頭ただひとりが順調に仕事数を延ばしている。
 そう。今や江頭2:50は、世間から最も注目されている芸人といっても過言じゃないのだ。
 そんな江頭だが、最近意外なところから大きな仕事が舞い込んだ、と一部業界で噂になっている。
 それはなんと、江頭2:50を追ったドキュメンタリー番組がNHKで作られるという話である。
 NHKが密着するのは、江頭がメインパーソナリティーのインターネット番組『江頭2:50のピーピーピーするぞ!』。
 ドキュメンタリーでは、江頭の真面目な性格とプロ意識を前面に押し出す構成となる予定。またアシスタントを務める早川亜希は、実はかなり江頭に好意を寄せており、その模様まで放送されるという衝撃的展開になるらしい。
 かつて「抱かれたくない男ナンバーワン」の座を独占してきた男だけにこの扱い、そしてこの出世ぶりには驚きである。
 「(江頭は)もともと礼儀正しい常識人として知られ、教養豊かなジェントルマン。NHKからのドキュメンタリー依頼は至極当然」(某芸能マネージャー)
 「江頭が類希なるプロフェッショナル根性の持ち主という事は、すでに芸人ファンの間では常識。これを機に飛躍して欲しい」(某放送作家)
 と、多くの業界人は肯定的な意見を寄せているが、江頭のファンからは「真面目な江頭なんて見たくない!」なんて声もあり、賛否両論である。
 大きく飛躍するか、己の芸人人生を縮ませるか、それはファン次第である』


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

井森美幸さんと保田圭さん~「最強アイドルは誰だ!?」

2011年04月03日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 後半をチラッと見た程度ですが、昨日の「最強アイドルは誰だ?」でイジられていたのは、井森美幸さんと元モー娘。の保田圭さん。

★82年組アイドル、おにゃんこ、モー娘。の往年のアイドルが登場する中、井森さんだけは芸人席。
 アイドル席から井森さんに「何で美幸ちゃんがそっちにいるのよ?」と声が飛ぶと、芸人さん席からはこんな解答。
 「この人(井森さん)は芸人ですから」

★保田圭さんはモー娘。時代の不遇を語る。
 「CDジャケットの写真が自分だけピンボケだった」
 「写真集で他のメンバーが海外で撮影していたのに。自分だけが都内の麻布十番だった」
 そういえば保田さん、昔、自虐芸人ヒロシさんのネタで「保田圭なら何とかなると思うとです」というのがありましたね。

 この様に元アイドルなのにイジられる井森さんと保田さん。
 でも、これがおふたりの個性・キャラクター。
 このキャラクターがあるから、こういう番組に呼んでもらえて、芸能界で生き残っていける。
 逆にきれいなだけの人は消えていく。
 僕はこういう自分の個性で生きている人、好きですね。

 そして、保田さんのようなポジションの人間がいたからこそ、センターのなっちやゴマキが輝いた。
 保田さんは石ころや雑草であったかもしれない。
 だが、どんな石ころや雑草にも意味はある。
 保田さんにはセンターの人間を輝かせるという役割があった。
 人生、誰もが主役になれるわけではない。だが、舞台には脇役が必要。
 そして……

 <自分がどんな人間であるかを認識して、自分の役割を果たしていく>

 これが出来る人って、素晴らしいし、頭がいい人だと思う。

※追記
 番組での告白に拠れば、松本伊代さん、自伝の本はゴーストライターが書いていたらしい。堀ちえみさんが、雑誌のインタビューで「超能力を使える」と言ったのは、編集者と事務所とで創り上げたウソであったらしい。
 まさにアイドルは<偶像>。
 しかし、偶像や幻想がなければ、ありのままの現実ばかりでは息が詰まってしまう。
 アイドルは一瞬の夢を見せてくれる存在なのだ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スタジオジブリ物語~宮崎駿さんの創作姿勢

2011年03月22日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 昨日放送された「スタジオジブリ物語」は、作品を作る上で大切なことを教えてくれた。

★まず、作品は時代へのメッセージであること。
 宮崎駿さんは「環境問題を抜きに作品は作れない」と語った。
 環境問題への言及なしに作られる作品というのは、どこか空しいもの、ただの娯楽であり、現実逃避、あるいは慰め。
 これについては様々な意見があるだろうが、クリエイターの姿勢としてはわかる。
 そして、作られたのが「風の谷のナウシカ」。

★次に語られたのが、作品は自分探求の手段であること。
 「となりのトトロ」は、宮崎さんの心の奥底にある<日本的なるもの>への探求であったという。
 その<日本的なるもの>とは、森や田園風景。豊かな水や気持ちのいい風。
 これらは都会に住んでいる人でも、実は日本人ならDNAにしっかり刻まれている。
 確かに「トトロ」の大ヒットを考えれば、このことはうなずける。
 僕たちは「トトロ」の映像によって、心の奥底に仕舞われていたものがよみがえったのだ。
 宮崎さんはこんなことも言っていた。
 「ファンタジーとは深層心理の扉を開けていくものである」
 「トトロ」だけでなく、僕たちは宮崎駿作品を見ることで、自分の中の無意識の風景を見ることが出来る。
 「千と千尋の神隠し」なんかでも、あのシュールな建物や事物が、どこか懐かしく感じられましたからね。

★宮崎さんの探求は続く。
 「もののけ姫」は、<答えを見つけることが出来ない問題をそのまま描いた作品>だという。
 通常、作品には結論・答えがある。
 <自然を守りましょう>とか<お金に変えられない価値がある>とか<愛って素晴らしい>とか。
 だが、宮崎さんは「もののけ姫」で答えを出すことをしなかった。問題を問題としてそのまま投げ出して描いた。
 「もののけ姫」の提出した問題とは、番組に拠れば<現代人の心の空洞><不条理な差別><人間と自然><憎悪と殺戮><合理主義と神秘主義>。
 どれも実は正解のない問題だ。
 たとえば、<差別をなくしましょう>と言ったって、自分の心の中を正直に見つめれば差別している自分を否定できない。むしろ差別するのが人間の本質の様な気がする。
 <自然を守りましょう>と言ったって、今の便利な生活は捨てられない。ほとんどの人間は地球を汚して生きているし、「明日から地球を汚す仕事は廃止」と言ったら多くの人が失業してしまう。
 クリエイターは、テーマを突きつめて考えれば考えるほど、実は何も発言出来なくなってしまうのだが、宮崎さんは「それでいい」と決めた。
 主義主張を押しつけるのではなく、観る人が何かを感じて考えてくれればいいとした。

★あとは、高畑勲さんとのライバル関係。
 「トトロ」と、高畑さんが監督をした「火垂るの墓」は、二本同時上映の公開だった。
 当然、比較される。負けたくない。
 なので、近藤喜文さんという優秀なアニメーターの取り合いをしたし、「火垂るの墓」の上映時間が80分になったと聞けば、「トトロ」も80分の作品にした。(当初、両作品とも60分の作品として制作されていたらしい)
 そして、80分の作品にするために妹のメイちゃんを登場させた。(当初は、さつきちゃんとトトロの物語であったらしい)
 面白いですね。そんなことで、80分の作品にしてしまうなんて。
 プロデューサー鈴木敏夫さんのご苦労が目に見えるよう。
 でも、クリエイターの原動力として<負けず嫌い>というのは不可欠なんですね。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

M-1グランプリ スリムクラブの衝撃!

2010年12月29日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 今年のM-1グランプリ、やはり<スリムクラブ>は衝撃だった。
 これまでの漫才は限られた時間の中でいかにギャグの数を詰め込んでいくか。
 だがスリムクラブは逆だ。
 沈黙……、長い間……。

 たとえば『勘違いする人』というネタではこんな感じ。

 「すいません。間違いだったら失礼ですけど、あなた、以前に私といっしょに生活していましたよね?」
 「……………………………………………………してません」
 「毎晩、お話してくれたでしょう? この世で一番強いのは放射能だって」
 「……………………………………………………僕じゃないです」
 「お話してくれたでしょう? この世で一番弱いのはうずらだって」
 「……………………………………………………それも僕じゃありません」

 僕の知り合いの噺家さんに拠ると、笑いは間がすべてだそうだが、スリムクラブの間はすごい。
 あの長い間が逆に緊張感を生み、観客に次の言葉を期待させる。
 そして溜めに溜めた間により大爆笑が起きる。
 これは今までの漫才の常識を180度くつがえしたコンセプトだ。
 得点をつける審査員が「これを漫才と言っていいのか」とコメントしたのもうなずける。

 そして思うのは<エンタテインメントには新しさ>が必要だということ。

 正統派漫才の<銀シャリ>。
 面白いのだが、やはり古さは否めない。

 今回優勝した<笑い飯>。
 交互にボケをやるというダブルボケはやはり今までの漫才のコンセプトをぶち壊した。
 こうやって毎年見てしまうと、ダブルボケも当たり前になって色褪せてしまうが、<笑い飯>の個性、スタイルであることには違いない。

 <ハライチ>。
 フリの言葉がどんどんスライドしていき、ボケがそれを身振り手振りでどんどん膨らましていくスタイル。
 たとえば『なりたかったもの』というネタでは

 刑事→ベテラン刑事→インテリ刑事→冷酷な刑事→スケバンの刑事→ほろ酔い刑事→ニコラスの刑事→ぬかみそのケーキ→笹カマのブーム→筆箱にチーズ→ひとりだけビーフ→笹カマのセール→下駄箱にチーズ→毒グモのポーズ→三つ編みの坊主→笹カマの映画→肌荒れにいいの→傷口にいいの→ヘルニアにいいの→

 などど刑事が次々とスライドしていく。
 そしてこれに対するリアクション。

 「ほろ酔いの刑事って、あいつに運転させちゃいけなかったんだよ」
 「ニコラスの刑事って、あいつ、来日してたの?」
 「筆箱にチーズって、誰が詰めたの?」
 「ひとりだけビーフって、みんなフィッシュ頼んだんだ?」
 「毒グモのポーズって、シャーッ!!」

 などなど。
 これも新しい。

 芸人さんに限らず、あらゆることには新しさが必要なんですね。
 それも今までの常識をくつがえすような。
 AKBだってあの人数ですからね。
 モーニング娘。だって多すぎると言われていたのに、それをはるかに越えている。
 だが逆にそれがあの華やかなステージになっている。

 そして、もうひとつ必要なのはスタイル。
 <笑い飯>といえば<ダブルボケ>とすぐ思い浮かぶ。
 <スリムクラブ>も<ハライチ>もそう。
 みんな独特のスタイル。

 もっともどんな衝撃的な新しいスタイルでも、消費されてやがては色褪せてしまうんですけどね。
 それにしても<スリムクラブ>はすごかった。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブラマヨ・小杉さんのツッコミ!

2010年09月23日 | 監督・俳優・歌手・芸人
 ブラックマヨネーズの小杉さんのツッコミ力ってすごいな。
 バラエティで引っ張りだこになるのもわかる。

 「ホンマでっかTV」。
 トークバラエティでは通常司会者がツッコミを入れて盛り上げるものだが、小杉さんも相方の吉田さんを始め、澤口教授ら評論家、マツコ・デラックスさんら出演者にツッコミを入れている。
 司会のさんまさんと共に小杉さんもツッコミを入れるから、番組が二重に盛り上がるというわけだ。
 また、さんまさんはツッコミと共にボケも出来る司会者。
 そして小杉さんは大先輩であるさんまさんのボケを的確に拾えて、ツッコミを入れられる。
 きっとさんまさんは小杉さんを重宝していることだろう。

 21日・火曜日の「ロンドンハーツ・3時間SP」でも小杉さんは存在感を出した。
 小杉さんの左側には相方の吉田さん、右隣にはアンタッチャブルの山崎さんが座っていたが、この座り方は絶妙。スタッフの作戦かもしれないが計算つくされている。
 結果、小杉さんは吉田さんと山崎さん両方のボケを拾えるのだ。
 これでダブルの笑いを期待できる。
 ちなみにアンタッチャブル山崎さんのボケはとても上手いと思うが、的確に拾えないと<騒音>になってしまう。
 この点、小杉さんは上手い。
 山崎さんを的確に活かすことが出来る存在が小杉さんなのだ。

 ということで、ブラマヨ・小杉さんの存在はバラエティにとって貴重でしょうね。
 司会者にとっては大助かりの存在。
 たとえば小杉さんの代わりがオードリーの若林さんだったら、相方の春日さんには出来ても他の出演者にはツッ込めない。
 小杉さんの今後の活躍が楽しみです。

※追記
 相方の吉田さんの屈折した部分も捨てがたい。
 結構下半身ネタが多い。
 「ロンドンハーツ」で芸人の妻が選ぶ抱かれたい芸人ランキングで、品川庄司の庄司さんの妻・藤本美貴さんが吉田さんを最低ランクに選ぶと吉田さんはこう叫ぶ。
 「ミキティのパンティ、よこせや!」
 テレビ朝日の女子アナ・吉田アナがトップランクに選ぶと、「ミキティのパンティはもういらない。吉田さんにもらうから」と叫ぶ。
 こんなことをテレビで発言するなんて……!!

※追記
 ツッコミもボケも出来る司会者ということで言うと、ロンドンブーツの田村淳さんなんかは司会は上手いが自らボケることは出来ない。
 島田紳助さんも「行列」なんかでは浮気ネタなどでボケるが、「ヘキサゴン」なんかではツッコミしかやらない。
 くりーむしちゅーの上田さんなんかも「しゃべくり7」などで時々ツッコミを入れられるけど、自分からはボケない。
 ボケもツッコミも使いこなせる司会者はさんまさんの他には、タモリさんかな。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする