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愛と幻想のファシズム

2021年04月05日 | 社会、読書

愛と幻想のファシズム 村上龍著 講談社 1990年8月 

「激動する1990年、世界経済は恐慌へ突入。日本は未曾有の危機を迎えた。サバイバリスト鈴原冬二をカリスマとする政治結社「狩猟社」のもとには、日本を代表する学者、官僚、そしてテロリストが集結。人々は彼らをファシストと呼んだが・・・・・。これはかつてない規模で描かれた衝撃の政治経済小説である。」

文庫本で上巻503ページ、下巻536ページの長編小説です。
主人公鈴原冬二はハンターであり、
「強い者が生き残り弱い者は死ぬ」のが自然の掟であるとの強い信念を持っています。
世界はセブンと呼ばれる一握りの超巨大グローバル企業群に支配されつつあり
「狩猟社」には、近い将来日本が搾取される植民地と化すことが見える者たちが集まります。
もはや民主主義という政治体制では、押し寄せる危機には太刀打ちできない。
その中での彼らの戦いが描かれます。

この小説は週刊現代に2年3ヶ月にわたって連載され単行本にまとめられました。
連載は1984年1月1日号から1986年3月29日号で
単行本は1987年8月刊行です。

読み始める前に「1990年8月15日第一刷」は見ていて
ベルリンの壁崩壊(1989年11月)の後で書いたのかな、それとも前かな
と読みながら思っていました。
下巻の最後まで読んで執筆時期を知り衝撃を覚えました。
東西冷戦が続いている中でこのような状況を設定できる構想力の凄まじさ。
本当に驚きました。

この本を読もうと思ったのは
文芸評論家の小川榮太郞氏が絶賛し
産経新聞記者の阿比留瑠比氏も学生時代に2回読んだと
フェイスブックで知ったからです。
私は日本の現代作家の小説はほとんど読んだことがありません。
村上龍氏の著作は「13歳のハローワーク」だけ読みました。
子供たちが将来を考える役に立つのでは無いかと購入したのです。

現在、GAFAと呼ばれる超巨大企業が世界中に大きな影響力を持ち
ツイッターやフェイスブックという「私企業」が
特定の価値観を押しつけ言論統制をしています。
グローバリズムが席巻し、温暖化防止、「弱者」最優先が絶対正義とされる。
何かおかしいと思うことが、新型コロナ騒動を含めてたくさん起きています。

37年前に書かれたこの小説には今の状況に通じるものがあり、
色々と考えさせられました。
きれい事では無く原理原則を踏まえ地に足を付けて
日本と国際社会を見つめ行動する必要があると思います。

ーーーー
本の紹介は久しぶりです。4年ぶり?
読んだら簡単でもいいので書評を書くようにしないと
読んだことすら忘れてしまいますね(汗)。
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